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MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』特集

「モンスト」に学ぶ、アプリのブランディングを成功させる秘訣

リアルなつながりが乗り換えリスクを減らす

――現在のダウンロード数は世界全体で4,900万を超えているとのことですが、ここまで拡大できた裏にはどういう施策があったのでしょうか。

 もちろん先述の宣伝を通じてバイラルが加速したのは間違いないですが、ゲーム内の「人が人を誘う」というしくみが相乗効果となり、さらに伸長したと考えています。

 友人を誘う時に「ただおもしろい」だけで誘うのは、コミュニケーションとしてのハードルが想像するよりも高い。そこでインセンティブを用意することで「誘われたほうも得をするから」という言いわけをしくみ化していました。この状態でテレビCMを打っているので、会話の中でバイラルが生まれやすくなる。最終的にそれは現実世界の知人関係で作られた大きなリアルソーシャルグラフとなる。

 そうなるとネットワーク外部性が働き、他に乗り換える必要がなくなります。モンストにみんながいるから、ここで一緒にゲームすれば良い、という状態が作れました。これによって、他のアプリへの乗り換えというリスクを減らすことができました。

――現実世界の知人と、モンストを通じてつながる世界を作ったのですね。

 現在は、遠く離れた知人ともマルチプレイができますが、初期は膝をつきあわせて同じ空間でプレイすることに注力していました。

 マルチプレイのユーザー数を増やすだけならば、オンラインで知らない人同士もプレイできるほうが合理的なはずです。しかし、この一見非合理と思われる選択を取るのは、「友人同士で遊びたい」というニーズのほうが強く、広がっていくはずという仮説があったからと考えています。

複雑化するユーザーをデータドリブンで対応

――ダウンロード数が4,900万まで伸びてきた今、モンストは成熟期に入っていると思うのですが、行っている施策に変化はありますか。

 ローンチから5年以上が経過した今とローンチ初期で、特に変化したのはリテンション施策ですね。初期はステージやキャラクターの追加によって、大きな反応が得られました。しかし今はアクティブユーザー層の属性が複雑になっています。

 そこで注力しているのがデータ分析です。具体的には、経年でデータを見てどの時期にどのような層の利用が少なくなりやすいか分析して、その結果をもとに施策を設計・実行しています。

――実際に行っている施策を教えてください。

 たとえば、他IP(IntellectualProperty:知的財産)とのコラボですね。2018年はミッキーマウスともコラボしたのですが、この時は売上だけではなくブランディング、新規層へのアプローチも目的の一つです。

 施策によって良し悪しはありますが、それで終わらずに次につなげることは意識しています。トライ%エラーを重ねながらナレッジを貯めていくことで、マーケティングだけでなくゲームの運営にも活かせる環境を作っていくことが大切だと考えています。

――ローンチ初期は、友人同士など身近な人たちで行われるマルチプレイや友人招待機能の利用数をKPIとしていたとのことですが、現在重要視しているKPIはありますか。またそれを伸ばすために行っている施策で、上手くいっているものはありますか。

 初期とKPIは変わらず一貫しています。「みんなと遊ぶ」価値というのは不変なので、よりみんなが遊んでくれるようなマーケティング活動を続けています。

 その中で最近上手くいっているのは、2018年春から行っている「モンともキャンペーン」です。同キャンペーンはゲーム内のフレンドにアイテム交換券や特別なガチャを引けるチケットを贈り合えるというものです。

競合ゲームともコラボする理由

――モンストIPを活用し、アニメやマーチャンダイジング、映画など多角的に取り組みを進めていますが、その理由について教えてください。

 モンストのIPをしっかりと育てていこうという考えがあるからです。もちろんスタートはゲームですが、アニメを観てもらうだけでもいいと思いますし、タッチポイントを増やすのは、IPを育てる上で肝要だと思っています。

 2015年からYouTubeで放映開始したオリジナルアニメは、モンストのプロモーションの側面が強く、ゲームの世界観をより多くの方に知ってもらうという役割があります。マーチャンダイジングもモンストとのタッチポイントを増やしていき、キャラクターが日常に寄り添っている状態を作ることで、IPに対して愛着を持ってもらおうと考えたのが始まりです。

モンストIP 活用の一例
モンストIP 活用の一例

 少しずつ事業として成立し始めているものも出てきましたが、多少時間をかけて多面的な取り組みを続けるべく、各事業部でPDCAを回しています。

――モンストは、御社にとって非常に重要なブランドだと思いますが、ブランド戦略のようなものはありますか。

 国民的IPになるために、関わる全員がモンストのプロデューサーであれというのを掲げています。先駆者がいないので、各人が考えて誰もやっていないことに取り組んで、様々なチャレンジをしてきました。

 現在はモンストと言われて想起するのはゲームだと思いますが、これからさらにスピンオフやライセンスアウトに力を入れて、接点を増やしていきます。マーチャンダイジングに紐づくライセンスアウトというのは、お菓子メーカーとのタイアップなどが一般的ですが、2017年春からは同じゲーム業界に対してライセンスアウトする試みも行っています。具体的には「実況パワフルプロ野球(パワプロアプリ)」や「白猫プロジェクト」といった人気ゲームアプリの中でモンストのキャラクターを登場させました。

――競合とコラボすると、ユーザーが流れ、機会損失になるのではないでしょうか。

 そう思われるかもしれませんが、そもそも競合はゲームだけではありません。スマホアプリ市場の競争は激しい上に、様々な娯楽との可処分時間の奪い合いも行われています。

 そうした時にゲームというカテゴリの中で人を奪い合っていても仕方ない。それよりは人気のゲームの中でモンストに触れてもらえれば、タッチポイントを増やす意味では成功だと思っています。

 機会損失のリスクもゼロではないかもしれませんが、業界を全体で盛り上げていくことも大事。ゲームとのコラボレーションというのは今後も積極的にできればおもしろいと考えています。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/02/25 13:45 https://markezine.jp/article/detail/30382

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