プロダクトを使うコンテンツデリバリー
マーケティングの3つのエッセンスのうち、最後のデリバリーに相当する施策の代表例が、Sansanの画面を使った告知である。既存顧客に何かを伝える際は、メールよりも毎日のようにログインする自社プロダクトの画面のほうが確実に見てもらえると考えたのだ。普段使っているセールスフォース・ドットコムのプラクティスからヒントを得て、ログインページの横に自社にまつわる告知を表示するようにした。
適材適所も考えなくてはならない。山田氏は「マーケティングメッセージはプロダクトで、プロダクトメッセージはマーケティングサイトからの発信が適しているのではないかと考え始めた」と話す。その理由として挙げるのが「プロダクトは利用ユーザーが最も高頻度で接触するため、マーケティングメッセージの発信に向いている。一方、購入を検討している人に安心感を与えるためにも、プロダクトメッセージはマーケティングサイトへの発信が向いている」ということだ。
Sansanの例ではないが、弥生はKARTEを使って追加開発なしでMacユーザーだけにキャンペーンメッセージを送る施策を展開している。また、シナジーマーケティングは既存顧客のデータを使って特定のユーザーだけに送る「アドレサブル広告」を提供している。SaaSの場合、新しい機能が次々にリリースされる。その存在に気づかないまま使い続け、利用方法が固定してしまうことも少なくない。便利な使い方があるのに気づいてもらえないのではもったいない。「広告で既存顧客に新機能の存在を認知させ、継続率が向上するのであれば費用対効果が高いと言えるのではないか」と山田氏は述べ、今後実験をしてみたいと意欲を示した。
マーケティングとの連携が重要に
SaaSビジネスあるいはサブスクリプションビジネスを行う企業にとって、既存顧客からの売り上げは無視できないものだ。カスタマーサクセスの成熟度が高くなれば、やがて既存顧客からの売り上げが新規顧客からのものを上回る時期が来る。山田氏は「ビジネスが成長すればするほど、既存顧客を理解し、彼らとの適切なコミュニケーション方法を考えなければならない」と訴える。その要になるのがカスタマーサクセスだ。
「サブスクリプションの時代には、ビジネスが成長するに従い、カスタマーサクセスの重要性が高まる。これからの企業活動では、マーケティングとカスタマーサクセスの役割は融合することになるだろう」と山田氏は予測し、講演を締め括った。
