見たいものは自分で探す!能動的なInstagramユーザー
誤解その3:Instagramを見ている人は、フォローしているアカウントの投稿のみを楽しんでいる
――Instagramの使い方に関する誤解も、耳にすることがあります。自分の好きな世界観の投稿が次々と流れてくるのを楽しむ以外に、Instagramはどのように活用されているのでしょうか。
中村:Instagram上で「検索」が盛んに行われていることは、押さえておく必要があります。日本国内ユーザーのハッシュタグ検索回数は、グローバル平均の3倍というデータも存在しているほどです。
天野:Instagramの興味深い点は、能動的にシェアする、受動的に他の人の投稿を見るという二分法におさまらない、「自分の見たいものを探す」という意味での能動性がとても高いことです。
2017年に上梓した『シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~』では、「ググるからタグるへ」というキーワードを提唱しました。検索エンジンによって与えられた結果を受け取るのではなく、ハッシュタグを使い、その都度更新されていくシェアの海の中から、自分に適した情報を手繰りよせるさまを説明したものです。ユーザー間の投稿を互いに参照しあう行動様式が根付いているのです。
Instagramに対してユーザーが求めているのは、自分たちと属性の近い人々が発信する情報に触れられることと、それにともなう安心感だと思っています。Instagramには、検索結果がビジュアルで一覧できるため、雰囲気をつかみやすいという特性もあります。
本を執筆した時点でも、若年層では既に、情報のジャンルによっては検索エンジンよりもSNS検索を用いる傾向が見え始めていました。
中村:日本にこれほどハッシュタグが根付いているのは、言語的な要因が影響しているのでは、と推測しています。漢字は象形文字なので、画像に近い要素がありますよね。だから日本語のハッシュタグは、並んでいてもすぐに意味を捉えられるのです。英語だと、なかなかこのようにはいきません。
検索回数そのものに関しては、ランキングを重視する日本の文化が背景にあるのではないかと思います。ハッシュタグの人気投稿をたどっていけば、トレンドがある程度把握できますからね。
「ユーザーをしっかり見る」ことに成功への鍵がある
――これまでのお話を踏まえた上で、Instagramをマーケティングに活用する際にチャンスとなる点や注意すべき点はどこでしょうか。
天野:まず、投稿ジャンルが多様化していることは把握しておくべきです。ジャンルの広がりは、そのままビジネスチャンスの拡大につながります。先にお話したように、ユーザーが自分の好きなものを自由にシェアできる場になってきている、というのがカギだと思います。
また、Instagramに限らず、SNSを企業として活用するのであれば、ただ発信するだけでなくユーザーをしっかり見ることも大事です。上手くいった広告プロモーション施策の多くは、ユーザー間で発生したトレンドをつかみ、それに乗っかることで、コミュニケーションのボリュームを増幅できていますね。
中村:世界的にも、日本におけるInstagramの盛り上がりは注目されています。今年の夏、日本にInstagramのプロダクトチームが設置されるのですが、本社以外にInstagramのプロダクトチームを置くのは初めてのことで、異例の措置だと言われています。
Instagramのトップであるアダム・モッセーリは「プロダクトチームを新設するなら、日本以外には考えられない」と話していました。盛んに、かつ工夫して使っている日本の利用者から学ぶことは多く、よりよいプロダクトへと進化していくと思います。
天野:プロモーションを実施するにあたって注意するべきは、計測に関することです。Instagramは興味の起点となるケースが多く、最終コンバージョンのアシストのような役割が多い。そのためラストクリックだけを換算していると、Instagramでの効果を正確に測れない場合もあります。
現代の生活者の情報行動はとても複雑なので、統合的なコミュニケーション戦略を設計しなければならないことは当然ですが、Instagramはその中でも欠かせないタッチポイントの一つとして重要性を増していると思います。
中村:インタビューで触れた利用者行動に関する調査結果は、弊社のブログで紹介しています。Instagramの利用者数は拡大を続けており、新たな使い方も次々と生み出されているため、最新の情報を把握した上で、コミュニケーション手段として有効活用してほしいですね。
――Instagramのユーザーインサイトに関して、様々な角度から理解することができました。今日はありがとうございました。