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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

“顧客体験の創造”から次のステージへ ポルシェが挑むブランドの継続と強化

年齢も国籍も幅広く多様性を兼ね備えたチームに

――クリエイターとポルシェですか。一見結びつかないですが、アートや音楽を切り口に世界観を共有してもらったわけですね。

 そうですね。前段でお話しした日本でのクラブイベント「THRILLING. driven by Porsche」も、車そのものよりもブランドの世界観に触れてもらうことを重視して展開しました。とても好評で、手応えがありましたね。他にも、たとえばInstagramでポルシェの名前を一切出さず、ポルシェの美しい車の写真を紹介するアカウント“type7”を運営したりもしています。

 我々は、商品には絶対の自信があります。ただ、どうしてもポルシェ自体に興味がある若年層は限られますし、そもそも車自体への関心が昔ほどあるわけではないので、音楽やアートといった切り口で我々のメッセージを表現して、そこから徐々にブランドに近づいてもらえたら、と。どこかのタイミングで「あ、ポルシェがやっているんだ、クールだね」と気づいてもらい、我々の存在が顕在化してからブランドの魅力を知ってもらえたらと考えています。

――ポルシェのマーケティングというと、現オーナーの年齢層から考えるとあまり若手が携わっているイメージがないのですが、今のお話だとマーケティングチームに若い方がいらっしゃるのでしょうか?

 まさに、ポルシェジャパンのマーケティングのチームでいちばんの若手は23歳です。本当に、ミレニアル世代の代表として意見をもらっていますね(笑)。若い人の感覚だけでなく、グローバルの観点も兼ね備えているメンバーなので、新しい視点をチームに持ち込んでくれます。逆に、最も社歴が長いメンバーは59歳で、ポルシェへの造詣が本当に深く、心強いです。年齢も国籍も、そういう幅広い人材構成になるようにと意識しています。

 同時に、先ほども挙がったように多様化の時代なので、各人がなるべくたくさんの引き出しを持つことが大事だとも思っています。一人のマーケターとして、どんなことにも柔軟に対応できるのが理想ですね。

従来のブランドイメージと新たな魅力を共存させる

――SNSも活用されている一方で、アナログな接点の重要性はなくならないというお話もありました。マスとデジタルの使い分けはどうされているのですか?

 マス広告は今も実施してはいますが、私が参画して4年の間に大きくシフトした部分もあります。たとえば、雑誌の純広告はほぼやめました。手間もお金もかかりますが、我々の伝えたいストーリーを丁寧に届けられる記事広告を中心にする指針をチームに出しています。

 デジタルは、やはり効果を数字で追えるのは大きな利点です。特に今は、デジタルからリアルへの動線の計測にすごく力を入れています。デジタルで接触した人が、実際に販売店へ足を運んだのか、といった点ですね。ただ、データ分析も重要ですが、ゴールを見据えてから進める必要があります。

 ツールも入れているものの、特にリアルへの接続では販売店でのマニュアルな努力も不可欠なので、その支援はこちら側も人力で丁寧に進めています。簡単ではないですが、きめ細かなフォローはラグジュアリーブランドならではですし、我々の販売規模ならできて然るべきだとも思います。肝心なのは、デジタルでもリアルでも、全ての顧客接点において「ポルシェらしさ」を追求すること。そのためには右脳と左脳をバランスよく働かせることが大事と、よくチームで話しています。

――マーケティングの考え方から人材構成にまで、ブランドの根幹にある姿勢が体現されていることがよくわかりました。最後に、今後の展望をうかがえますか?

 オーナーの方には“離れ難い恋人”と言っていただくこともあり、乗っていただければ良さを実感いただける自負があるのですが、そもそも乗る機会がない方が大半なので、その機会作りに注力します。

 今年は欧州で初の電気自動車を発売し、2020年には日本でもリリース予定です。さらに2021年には千葉県木更津市に、ポルシェのドライビングを存分に体感できる世界で8番目の施設「ポルシェエクスペリエンスセンター」を設立することが決まり、ニュースが相次ぎます。このすべてにおいて、従来のポルシェのイメージを損なわず越えていけるかは大きなチャレンジなので、これからも「夢」を共有できるブランドとして邁進していきます。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/04/25 13:00 https://markezine.jp/article/detail/30862

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