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BtoBマーケ虎の巻

やることが山積みのBtoBマーケ、「やらないこと」をどう決めるか


「空いた時間で」優秀なマーケターがしていることとは

 では、「しないこと」によって空いた時間で、優秀なマーケターは何をしているのだろうか。答えは、「顧客に会う」ことだ。顧客への解像度が高ければ高いほど、質の良いマーケティングコミュニケーションが設計できる。

 下のイメージ図を見てほしい。左(=解像度が低い状態)で顧客を捉えているマーケターと、右(=解像度が高い状態)で顧客を捉えているマーケターでは、出せる企画やアイデア、意思決定の質は当然のように変わってくるだろう。

 「優秀なマーケターになるにはどうすれば良いか」という問いに対して、「自分でビジネスを立ち上げてみること」と言われる理由はここにある。経営者は、死ぬ気で顧客への理解を高め、売れる商品を作り、広める方法を考え「ざるを得ない」状況に置かれている。顧客への解像度が低いと、文字通りビジネスが死んでしまうからだ。

 マーケターも経営者と同様、顧客への解像度を上げることで、企画できる施策や意思決定の質が変わってくる。私の知る優秀なマーケターたちは、ことごとく、自ら顧客に会いに行き、日々のマーケティング活動を実行している。BtoBマーケターは、これから紹介する4つの手法を日常業務に組み込んでいけると良いだろう。

1. 顧客を最も理解している人たちにインタビューする

 ベンチャーやスタートアップ企業の経営者は、多くの顧客と会っており、顧客を深く理解していることが多い。同様に、中堅・大手企業でトップセールスと言われる人たちも、社内でもっとも顧客の課題やニーズ、響くメッセージを理解しているからこそ、売れている。

 彼らに時間をもらい、彼らの知見を共有してもらうことは、マーケティングコミュニケーションの精度を上げる上で大きなヒントになる。具体的には、「私が見込み顧客だと思って、営業してみてくださいと彼らに依頼してみよう。初めて訪問する際のロールプレイングをしてもらうことで、彼らの営業トークと質疑応答を通して、顧客の課題やニーズ、懸念点・不安箇所を把握できる。

2. 商談に同行する

 次に、見込み顧客との商談に同席させてもらえるよう、営業チームに掛け合うことをお勧めする。商談に同席し、営業と顧客のやり取りを横で観察することで、顧客が「自社の製品/サービスのどのようなところを魅力に思っているのか」 「導入検討にあたり、どのようなことを気にしているのか」「疑問や不安に思っていることはないか」などを把握できる。

3.実際に、営業してみる

 さらに、マーケター自身で自社の製品/サービスを営業してみるのも有効だ。自分で製品/サービスを説明することで、顧客の反応がダイレクトにわかる。「自社製品/サービスの強みや弱み」「どういうメッセージが伝わり、どういうメッセージは伝わらないか」「顧客の頭の中では、どのような競合製品・代替手段と比較検討しているのか」などを把握するのに、これ以上の手はないだろう。

4.ユーザーインタビュー

 最後にお勧めなのが、ペルソナに近いインタビューイーを募り、下記のような項目についてヒアリングすることだ。

・課題を感じたきっかけ
・なぜ、課題を解決しようと思ったのか
・自社の製品/サービスを知ったきっかけ
・自社の製品/サービスを選んだ理由
・社内稟議にあたり、必要だった情報や上長から質問された点
・普段、どのように当該領域の情報収集をしているか

 「ビザスク」のようなユーザーインタビュー/リサーチサービスや、「bosyu」のようなSNSを活用した募集サービスの登場で、BtoBの被験者も格段に集めやすくなっている。ユーザーインタビューにかかる費用は1件1~2万円程度。顧客の購買プロセスへの解像度を上げ、集客チャネルの選定やメッセージ、コンテンツ企画に活かせれば、極めて費用対効果の高い投資になるだろう。

 他にも顧客への解像度を上げるには次のような方法がある。

 詩人の寺山修司は「書を捨てよ、町に出よう」と言ったが、マーケターも「PCを捨てよ、町に出よう」を合い言葉にしても良いかもしれない。

 今回は、「しないこと」という切り口から、BtoBマーケティングで成果を上げるためのコツを紹介した。世の中には、ツールベンダーやサービス提供者が提唱する「したほうが良いこと」「成功事例」はあふれている。一方、「しないほうが良いこと」「失敗事例」はそれを発信するインセンティブを持つ人が少ないため、ほとんど世の中に出てこない。

 しかし、「しないほうが良いこと」を知り、それを避けることができれば、「成果が出ることに時間を使い、成果が出ないことに時間を使わない」という基本が手に入る。空いた時間で、顧客に会い、顧客への解像度を上げることができれば、自社のマーケティング戦略・施策の質は飛躍的に高まっていくだろう。

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この記事の著者

栗原 康太(クリハラ コウタ)

1988年生まれ、東京大学文学部行動文化学科社会心理学専修課程卒業。 2011年にIT系上場企業に入社し、BtoBマーケティング支援事業を立ち上げ。事業部長、経営会議メンバーを歴任。2016年に「才能を流通させる」をミッションに掲げ、経営者・事業責任者の想いの実現を加速させる株式会社才流を設立し、代表取締役に就任。 アドテック東京などのカンファレンスでの登壇、宣伝会議・広報会議など主要業界紙での執筆、取材実績多数。 Twitterアカウント(https://twitter.com/kotakurihara) | Facebookアカウント(https://www.facebook.com/kota.kurihara)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/06/05 15:25 https://markezine.jp/article/detail/31007

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