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定期誌『MarkeZine』特集

テレビマーケティングの今を知る

データを活用したテレビCM施策の改善方法

――回答協力:スイッチ・メディア・ラボ テレビデータ事業部 プロダクト企画部 プロダクトオーナー 加藤 隆志氏

テレビでPDCAを回す3ステップ

 日本においても多様なテレビデータが手に入るようになり、まさにデータドリブンなテレビCM施策の実現へ向けた過渡期に差し掛かっています。

 通常、テレビCMの予算は数億円規模にのぼることも珍しくないので、数%改善するだけでも大きな費用対効果が見込めることから、データに投資する価値は理解しやすいでしょう。ただ、その価値を認識していても、実際にどうやって自社の施策に活かせるのか、具体的なイメージがわかない方も一定数いらっしゃるかと思います。

 現状、テレビCM施策で広告代理店の協力を得ながらPDCAが回せている企業はありますが、そのPDCAが十分であると感じている企業は多くありません。プランニングに比重が偏り、放映後の効果検証まで精緻に追っている企業は一部でしょう。また通常2~3ヵ月というキャンペーンサイクルの長さも、PDCAが回しにくい原因の一つです。前の施策が終わった頃には次の施策のプランニングが始まり、そちらに比重が置かれて過去の施策の検証へ時間・労力を割けないという現状もあるでしょう。

 そんな中、テレビCM施策でもPDCAを回している企業は、(1)現状認識(2)これまでの慣習に疑問を持つ(3)仮説を立て、その検証に必要なデータを導き出す、といった3ステップを経てデータ活用の入り口に立っています。

3ステップ

(1)現状認識
(2)慣習に疑問を持つ
(3)仮説検証に必要なデータを導き出す

(1)現状認識

 これまでテレビCM施策におけるデータと言えば、取引指標である視聴率に限られていました。従来はデータ提供サイクルが1?3ヵ月程と長く、データも不足していたため、データに基づき、正しい現状把握ができる環境になかったとも言えます。まずは自社や競合他社の出稿状況を正しく認識することで、自社の課題を発見します。

(2)慣習に疑問を持つ

 業界の慣習を鵜のみにするのではなく、これまでの前提条件が明確でない事柄やしきたりに疑問を呈する姿勢が重要です。「これはこういうものだから」という慣習は、データでも正しいと証明されているのか。デジタルでは当たり前のことが、なぜテレビではできないのか。そういった客観的な視点で感じた疑問を周囲に投げかけることが、データドリブンな宣伝部への変革の第一歩につながります。

(3)仮説検証に必要なデータを導き出す

 目の前の事実から目をそらさず、疑問を常に持ち、得られた示唆などをヒントに、仮説を立てます。その仮説を検証するためには、どんなデータが必要なのかを、因数分解していきます。

 そもそも、自社のテレビCM施策はもっと効率化できるのではないかと疑問を持ち、現状の課題に気づくにはどうすればいいのでしょうか。そのためには、全体のマーケティング戦略においてテレビ施策が担う役割を再定義し、KGI・KPIを設定するといいでしょう。KGIを達成するために、そもそも現状のKPIが適切なのか、指標を分解していくことで、具体的な課題が見えてきます。

 データ活用を進めていく際には、様々な課題にぶつかると思いますが、「高速でPDCAを回したい」「悪い結果を新たな発見として受け入れる」という強い意志と姿勢が重要です。このような課題意識を持っていれば、自社にとってなぜそのテレビデータの活用が必要なのか、社内をうまく説得することができるでしょう。

データを活用しテレビCMを運用する

 スイッチ・メディア・ラボでは、テレビ視聴データ分析サービス「SMART」を通じて多彩なテレビデータを提供しています。番組視聴率、テレビCMのアクチュアルやリーチ、フリークエンシーなどを提供しており、自社・競合他社に限らず自由に分析ができます。また詳細なプロフィールで個人視聴率を分析可能です。たとえば「月に5,000円以上美容にお金をかけている人(化粧品)」「3年以内に転職を検討している人(人材)」「ゲーム/アプリに課金をしている人(ゲーム)」といったターゲット条件を設定し、自社のターゲットカテゴリーに合わせて分析していくことができます。

 デジタルとテレビのデータの大きな違いは、全数データ(ある特定の集団のすべてを対象とするデータ)であるか、サンプルデータ(ある特定の集団から確率的に抽出した標本データ)であるかです。たとえば、同じ視聴率を調査しているデータでも、サンプルが違うと結果も違ってくることがあります。全数データに慣れている方は、サンプルデータに不確かな印象を持つかもしれません。

 デジタルと比べると、テレビデータはまだまだ不足しているため、先んじて活用に挑む企業とそうでない企業の二極化が進んでいます。昨今登場している様々な新しいテレビデータを活用する先駆的な企業の方々は「テレビCMを運用していく」という考え方のもと、データを効果検証からプランニングまで活用しています。

 かつてテレビCM施策は、プランニング時点のGRPや到達リーチがいくらだったかで評価されるケースが多く、逆に言えば、それ以上は語られないことも多いということです。施策前後での認知率や好感度のアンケート調査などで、最終的なKPIは定点的に測られてはいましたが、中間KPIは細かく見られてはいませんでした。

 しかし、テレビデータの活用が一般的になってきた今は、それらを組み合わせて活用することで、テレビCMのアクチュアルや到達リーチ、その後に実際に注視されたのかまで、より的確なリーチ量と質を計測することが可能になっています。

 テレビのデータを活用するには、特別なスキルが必要なわけではありません。小手先のスキルよりも、宣伝部員やマーケターの方が自ら仮説を持ち、それを証明・検証するために必要なデータを収集していく姿勢が最も重要です。逆に言えば、仮説がないままデータを見ても何もわかりません。

 データアナリストでなくても、仮説や課題を持っていれば、データを読み解くことができます。ですから、まずは自社にとっての「テレビの役割は何か?」に立ち戻り、仮説をもとに必要な手段を検討し、データを集めていくことで、テレビデータ活用の道筋が見えてくるでしょう。

※ アクチュアル実際に放送されたときのテレビCMの視聴率。スポットCMのセールスで使用されるGRP(延べ視聴率)は、ある算定期間(通常、販売時の前4週の平均)の実績値を使用するが、実際にCMが放映されたときの視聴率をアクチュアルと呼ぶ。

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MarkeZine(マーケジン)
2019/05/24 13:15 https://markezine.jp/article/detail/31036

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