全体を把握した提案の中でデジタル広告の有効性を追求
――その一方で、設立当初から取り組み、御社の強みでもあるテクノロジーの領域において、近年一層ソリューション関連のリリースなどが相次ぎ、事業の幅を広げています。
そうですね。そこにはやはり、デジタルトランスフォーメーションという世の中の流れに合わせ、一歩先へ進んで業界を牽引するという考えが根底にあります。
かつては特定の領域だったデジタルが、今ではすっかり当たり前のものになり、もはや環境やインフラとも呼べるものになっています。その前提で、我々は積極的に新しい提案の形を推進していく必要があります。
デジタル広告ありきではなく、全体感を持った提案の中にデジタル広告も有効だと、そういう文脈が大事になってきていると思います。当然、解決策はデジタル広告だけでなく、データ活用からコンテンツやクリエイティブ、メディアの選択・開発まで多岐にわたるので、それらに精通することも重要です。
――なるほど。他に、両社の統合によるメリットは?
最終的にはすべて、広告主企業や様々なパートナー企業、その先にいる顧客や生活者への還元ということになりますが、やはり統合によって人材の数と多様性が増した点は大きなことだと思っています。これから、様々な業務がAIなどによって自動化される中で、それに置き換わらない知見と発想力がデジタル領域でもますます求められていきます。広告主企業、広告会社、メディアでも、その意味でデジタルに強みを持つ人材はとても重要です。
デジタル領域の守備範囲を広げられれば、当然ながら人材と能力の層が厚くなります。またそれ自体が、DACに入社したいという魅力につながって、さらなる人材の増強につながるとも思っています。そこは今後、期待しているところですし、人材育成は改めて最重点項目として仕組みづくりを急ぎ進めています。
新生DACが後押しするマーケティングとイノベーションの実現
――博報堂DYデジタルとDACは以前から連携されていたということですが、いざ同じ会社になり、双方の人材の交流をどう生み出したいとお考えですか?

中長期的には、人材のシフトをかけていくべきだと思っています。両社の統合によって、広告主企業、広告会社、メディアへの貢献の幅を広げるのは当然ですが、それは裏を返すとこちら側の人材がつながることで価値を生み出すということです。社員一人ひとりからすれば、キャリアの可能性が大きく広がっているという見方ができます。
今、新卒の方も中途の方も積極的に採用していますが、日進月歩の世界で、たとえ軸足を置く領域の縮小や機械化が起こったとしても、必ず次に能力を生かせる場、キャリアを築ける場が見つかるはずです。そのくらい、幅広い領域をカバーしていますし、その範囲も拡大していると思っています。
――では、新生DACとして目指す姿をうかがえますか?
今では毎日のように、様々な領域のプレーヤーによる新たなソリューションや、プレーヤー間での連携などが発表されています。各社が次に何に打って出るべきか、日々模索しています。そうした状況下で我々は改めて、メディアや広告会社、その先にいる広告主企業に対しても、マーケティングとイノベーションを後押しできる企業を目指していきます。
従来、子会社化によるグループ拡大を続けてきましたが、今後は今回の統合のように、さらなる強みを発揮するための体制の変化もありうると思います。各領域でも、テクノロジーの発展によって様々な効率化がなされていますが、それに即して最適化を進め、知見を持った優れた人材にしかできない領域に強く、大きな基盤を持つ会社を目指していきたいと考えています。
「広告の最適化」には人の気持ちの理解が必要
――先ほどおっしゃった、人材育成が最重点項目というお話につながりますね。
まさに、そうですね。これまでデジタル領域は細分化が進み、各分野に特化したスペシャリストが求められてもきましたが、その急速な進化が進む中では昨日役立ったことも今日は必要なくなるかもしれません。一方で、どこまでいっても我々は生活者とコミュニケーションを図っていく仕事をしているので、多様化し続ける生活者の環境や気持ちを推し量ることは今後ますます大切になります。
個々人への「広告の最適化」「パーソナライズ」が大事だといわれますが、それはかみ砕くと「その人のそのときの気持ちに合った広告をどう見せられるか」ということです。すると、最終的に“人間力”が大事になってくると思います。その点も含めた人材育成に注力し、各ステークホルダーに貢献できればと考えています。
常にチャレンジを続ける当社の人材一人ひとりの今後の活躍に是非ご期待ください。