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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

デジタル広告の可能性を追求 DACと博報堂DYデジタルの統合で切り開く道

次々と登場する“場”が広告媒体になるのかどうか

――DACに移られてからずっと、島田さんはインターネット業界がかくも拡大する変遷を見てこられたと思います。この業界の潮目が変わったのは、どのタイミングだとお考えでしょうか?

 いくつかありますが、大きくは3つあると思います。1つ目は先ほど少し触れた、ブロードバンド接続機器の無料配布が展開された2000年代前半です。ごく一般の方々が“インターネット”を理解し実際に使用する、大きな礎を築いたと思いますね。同時に、その劇的に広がりつつある場に「次々と新しい広告を出せるのかどうか」は、我々としては大きな関心事でした。

 「Yahoo! JAPAN」以外にもポータルと言われるサイトも発展しましたし、広告の技術としても“リッチ化”が進みました。今では考えられないかもしれませんが、ただの静止画が、ちょっとしたGIFで動くような、そんな変化ですね。

 2つ目としては、2000年代中ごろから後半にかけて、サーチやアドネットワークなどの新しい商材が入ってくる時期が挙げられます。まだ、「ガラケー」といわれた、フィーチャーフォンが主流の時期です。

 3つ目が、2007年のiPhone登場を皮切りに現在まで続いている、スマートフォンベースの広告プロモーションが一般的になった段階です。インターネット広告市場もこれにともなって、2014年に1兆円だったのが、2018年には1.7兆円になっています。テレビCMにほぼ匹敵するほどの規模となりました。

 このあとがどうなるかは、まだわからない部分も多いですが、少なくともインターネットというものが生活者のインフラになったことは間違いないと思います。社会基盤、といってもいいくらいなので、広告に携わる者にもその前提で、このデジタル環境をどう使いこなすかという視点が求められていると思っています。

時代の変遷に合わせて柔軟にグループを拡大

――たしかに、広告業界においてデジタルは、ほんの10年前は「新たに登場した手法の一つ」だったのが、あっという間に生活者の基盤となり、それにともなって出稿側も当たり前のものとして向き合わないといけない領域になっていると思います。そうした変化の中で、御社が担う役割はどのように変わってきたとお考えですか?

 DACに所属して約20年になりますが、その間に当社はまさに、時代の変化や生活者の要請に合わせて体制や提供サービスを広げ、一方では集約してきたと思います。

 たとえば2001年に株式公開した以降は、ちょうど発展中だった「ガラケー」の広告を扱っていたスパイアに出資し、スマートフォンが出てきたころにはモーションビート(旧:ngi group)に出資しました。両社は2012年に合併し、ユナイテッドとして事業を展開しています。検索領域ではアイレップに出資しその後連結子会社化、DSPやSSPのプラットフォームが台頭してきた際にはプラットフォーム・ワン、SNSの領域ではトーチライトを立ち上げました。

――時流に合わせて、グループ化して拡大してきた?

 そうですね。この10年ほどは、個別の企業として専門特化する意義や効率は大きいという考えの下、総合力を発揮していくために各分野に強いプレーヤーにグループに入ってもらったり、社内の機能を分社化したりしつつグループ経営を展開してきました。

 ただ、時代の流れによって、市場の“核”も変わってきます。近年では、メディアにおいても、広告主企業に対してプラットフォーム上の運用という領域の存在感が非常に増していると思います。そのような市場環境下、対応のリソースが、グループ内で分散していると非効率なので、もう少し集約してフレキシブルな活用ができるように、との考えから2016年にDACとアイレップは経営統合しました。これ以降、出資によるグループ拡大に加えて、統合による効率化や高度化という歴史も生まれてきたと思います。

両社の強みを持ち寄りプラスの相乗効果を生む

――まさにその流れの上に、平成最後の業界の話題となった博報堂DYデジタルとDACとの統合があるのですね。統合の背景や狙いをうかがえますか?

 以前から、博報堂DYデジタルとDACは現場ではかなり連携をとってきました。博報堂DYデジタルは広告主企業向き合いの事業会社であり、広告主企業とデジタルの現場の間を連結してつないでいます。一方でDACはメディアに向き合い、サービスを開発したりメディアプランを策定したり、運用したりといったことに携わってきていました。

 これらは一連の流れの中にあるのですが、会社が分かれていると、ときとして連絡にタイムラグが生まれたり、作業が効率的に進まなかったりということが発生しがちです。これをシームレスにつなげられれば、マイナスをゼロに、さらにプラスの相乗効果をもたらすことができるはずだという考えで、統合に至りました。

 業務の円滑化に加えて、もう一つ統合の理由があります。それは、両社のもっている強みが若干違うことです。博報堂DYデジタルはクリエイティブやプロモーションに長けています。DACはメディアサービスを軸足に、テクノロジーやソリューション、データ、グローバルなどへ領域を広げてきました。ここを統合すれば、お互いにカバーできていなかった領域を補完して、事業の領域が広がります。これも大きな狙いでした。

――統合によってシームレス化し、業務を円滑化することと、サービスの拡大を促進することが大きな意図だったのですね。そんな中で、会社のありようとして大切にしていることはありますか?

 やはりDACの根幹はメディアサイドに寄り添うメディアレップの側面にあります。これを大事にしながら、博報堂DYデジタルが持つさまざまな強みが加わることで、統合後はより強力になる。メディアと広告会社・広告主企業の間に立って広告を基盤とした事業を推進することは、私たちDACの揺るがない軸だと考えています。

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全体を把握した提案の中でデジタル広告の有効性を追求

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

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MarkeZine(マーケジン)
2019/07/25 13:00 https://markezine.jp/article/detail/31571

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