タッチポイントを拡大し、自分たちらしいコンテンツを制作
二つ目のテーマは、タッチポイントとコンテンツだ。今まで同社のパイプライン創出に大きく貢献していたのは、自社セミナーだった。ノウハウは溜まってきており、実施すれば結果が出るものの、数をこなすことはマーケティングチームにとって大きな負担。セミナーのネタも無くなりつつあるため、開催回数を抑えたい。開催回数の削減を補うためにも、インバウンドの件数を増やしたいと考えていた。
井田氏がまず着手したのが、タッチポイントの拡大だ。自社Webサイト内に事例ダウンロードページや問い合わせフォームは既にあったが、eBookなどの資料をダウンロードできるページも新たに設けた。またSNSアカウントを開設し、メディア掲載から自社Webサイトに流入する動線づくりも実施した。
タッチポイントを増やしたら、そこで発信するコンテンツが必要となる。とはいえ、事例集を短期間でいくつも制作するのは、クライアントとの調整なども考慮すると難しい。井田氏が着目したのが過去にセミナーで使用した資料であった。セミナーに興味があっても参加できなかった潜在層はこれまで埋もれていたが、セミナー資料をダウンロードできるようにすれば、彼らのニーズが明らかになる。
営業担当が作成した提案資料も、eBook制作に役立てた。ゼロから企画する場合よりも大幅に手間を削減できたほか、「eBookで訴求する内容と、実際に営業が提案する内容にずれが生じ、顧客に『期待していた提案と違う』と言われてしまうことも減らせた」という。
「一生懸命に実施してきた自社セミナーは、まさに宝の山。有効に活用することで、施策を広げることが可能になりました」(井田氏)
反応は多いのに案件化につながらない理由とは?
インバウンドがきっかけとなって案件化した件数は、前年比1.63倍にまで増えた。だが「実は成功ばかりでなく、失敗もしています」と井田氏は打ち明ける。
失敗事例として井田氏が紹介したのは、ターゲットを絞り込んでメールを送付し、資料をダウンロードしてくれたユーザーにはステップメールを送る。ステップメールに反応してダウンロードしてくれたユーザーにはインサイドセールスでフォロー、ニーズがある場合は営業に引き渡す、というシナリオの施策だった。
同施策を実施したところ、2回のメールに反応したユーザーは少なくないのに、ニーズのある人がほとんどいなかったという。アポイントにも、もちろん案件化にもつながらないという状況に陥り、「ターゲティングがずれていたのか、あるいはコンテンツのミスマッチか」と悩みながら、原因を探したという。
その答えは、「そもそも、資料をダウンロードしたことを覚えていない人が多いんですよね」という、インサイドセールス担当者からのフィードバックにあった。送付したメールを見てみると、何気なくURLをクリックしただけでダウンロードが開始され、それがニーズ有りと判断されてしまう仕組みになっていたのだ。
そこでダウンロード用のリンクであることをメール本文に明示したほか、クリック後は個人情報の入力フォームが表示されるよう、ワンステップを追加。すると、次回以降のキャンペーンではアポイント獲得率を改善できたという。
「施策の結果を分析し、改善すべきポイントを洗い出して次回に反映することの大切さをあらためて感じました」と井田氏は振り返る。「日々様々な施策を実施していると、目の前のタスクに追われがちです。それでもメンバーと振り返る時間を持ち、PDCAを回すことが成果につながることを実感しています」(井田氏)