実は成長している音楽産業
MarkeZine編集部(以下、MZ):まず、栗田さんがワーナーミュージック・ジャパンでどのような役割を担っているのか教えてください。
栗田:私は邦楽デジタルマーケティンググループという部門でダイレクターをしています。ワーナーミュージックは三大メジャーと呼ばれるグローバルレーベルですが(他2社は、ユニバーサル ミュージック、ソニー・ミュージックエンタテインメント)、あいみょんやTHE YELLOW MONKEYなど邦楽のアーティストもたくさん所属しています。
そうした邦楽アーティストのダウンロード(iTunesなどでの購入)やストリーミング(Spotifyなどの定額課金サービス)といったデジタル上での音楽の流通、売り上げを最大化していくためのマーケティングを行っています。また、会社のデジタル全体の責任者として、デジタル事業全般も見ています。
MZ:昔と比べてCDが売れなくなったと言われているのを耳にするのですが、現在の音楽産業の市場規模はどのような状況にあるのでしょうか。
栗田:1999年が世界の音楽産業が一番栄えていた時期で、そこからCDが売れなくなり、斜陽産業と言われる時代に突入しました。しかし、2010年代前半に定額音楽ストリーミングサービスが登場して以来、デジタルで音楽を消費するという動きが一気に加速して、2010年代半ばから市場規模が復調しています。三大メジャーレーベルでは、ここ数年最高益を更新し続けています。実は世界的には、今音楽産業はとても盛り上がっているんです。
MZ:世界的に見ると音楽産業は盛り上がっているとはビックリしました。日本だと、まだ音楽のデジタルシフトというのは本格的に進んでいない印象があるのですが、どうでしょうか。
栗田:日本は世界的に見てもかなり特殊なマーケットで、いまだにデジタルよりもCDの売り上げ規模のほうがはるかに大きいです。ただ、CDは売れないと言われながらも、2018年も横ばいに近くそれほど減っていません。
デジタルに関しては、着うたがものすごく盛り上がっていた頃ほどは回復していませんが、ここ数年で復活しつつあります。現在は約650億円の市場規模となっています。また、2018年にはストリーミングがダウンロードを抜いて、売り上げの構成比で60%近くを占めるようになりました。
MZ:日本でもようやくデジタルが盛り上がりつつあるという状況なのですね。現状では、邦楽のマーケティングにおいて課題となるのは、どのような点なのでしょうか。