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定期誌『MarkeZine』特集

BtoBマーケティングを取り巻くテクノロジー 変化とトレンド

2018年はコンプライアンス、MA、企業データ分野が大きく伸長

 実は、最初にリリースしたカオスマップ2017年版は、「まずは現在進めているプロジェクトや案件のなかで聞いたことのある、有名製品を分類していこう」と作成したものでした。リリース後はありがたいことに大変な反響をいただき、「なぜこの製品が掲載されている(いない)のか」等の問い合わせも相次いだため、2018年版は、最新リリースされた製品も含め、幅広く製品を網羅することを目指しました(図表1)。

図表1 マーケティングテクノロジーカオスマップJAPAN2018(タップで拡大)
図表1 マーケティングテクノロジーカオスマップJAPAN2018(タップで拡大)

 そのため2017年版と比べると、2018年版で掲載したツール数は272製品から485製品と1.8倍になっています。ただし、我々が単純に掲載するツール数を増やしただけではなく、冒頭に説明したように、「そもそもマーケティングテクノロジー分野全体で年々製品が増えている」という状態であることは確かです。

 では、2017年版と2018年版ではどのような違いがあるのでしょうか。両者を比較してみたところ、まず「MA」「接客/チャット」「企業データ」に関するテクノロジーが増えていることが見えてきました。

 また2018年は、マーケティングテクノロジー全体の大まかなトレンドでいえば、プライバシーおよびコンプライアンス対策のテクノロジー領域が増加傾向にありました。背景には、昨年5月に施行されたEU一般データ保護規則(General Data Protection Regu lation、略称「GDPR」)や、2020年から米カリフォルニア州で施行されるカリフォルニア州消費者プライバシー法(The California Con sumer Privacy Act、略称「CCPA」)などの法整備があり、これにより個人情報管理対策のニーズが増えたと見られます。それも一般的な住所氏名だけではなく、IPアドレスやWebブラウザのCookieまで含めてどのように管理するかが焦点になっています。

 2018年版に新たに加えた分野としては、「アドベリフィケーション」などもあります。ちょうど、デジタル広告の透明性に関する事件などもあったことから、広告取引の透明性や公正な配信などに関するテクノロジーが注目されました。また、今後はスマートスピーカーやスマートデバイスなどの新たな顧客接点となるテクノロジー分野や、AIなども活発化していくと見ています。

2017年から2018年における変化

・掲載数1.8倍(272→485)
・サービス終了3%(7/272)
・名称変更9%(25/272)
・ロゴ変更26%(70/272)
・MA1.7倍(15→25)
・接客/チャット1.8倍(8→14)
・企業データ2.7倍(3→8)

BtoBマーケティング分野で注目の「ABM」「CDP」

 次に、BtoBマーケティングにおける傾向を見ていきましょう。2018年でいうと、急激に注目度が上がっているのは「ABM」(Account Based Marketing)です。ABMとは文字どおり企業(アカウント)を中心としたマーケティング/営業手法であり、自社全体でターゲティングする層を決め、戦略的にマーケティング施策や営業をかけていくやり方です。ABMへの取り組みには、施策・KPI・データなどを広くマーケティングと営業の間で共有していくことが求められるため、それらを担うテクノロジーが注目されています。実はABM分野に関していえば、国内で利用できる製品の中で、総合的な機能を提供しているテクノロジーはいまだ多くの選択肢がありません。一方で、ABMの取り組みに重要な「企業データ」「外部データ」の分野は国内でも選択肢が増えつつあります(図表2)。

図表2 BtoBでは「ABM」領域のテクノロジーが増加(タップで拡大)
図表2 BtoBでは「ABM」領域のテクノロジーが増加(タップで拡大)

 「企業データ」のカテゴリーは、2017年から2018年にかけて、そのテクノロジーの数は2.7倍に伸びています。企業データといえば、一般的には帝国データバンクや東京商工リサーチなどが有名ですが、証券アナリストが四半期ごとに企業IR情報をチェックしてトレンドデータを提供するFORCAS、事業所単位で企業データを提供しているuSonar(ランドスケイプ社)などがあり、非常に注目されている分野です。

 これと同時に注目されているテクノロジーに「CDP」(Customer Data Platform)があります。CDPとは、分野名そのままに「顧客データを統合するプラットフォーム」という意味のソリューションです。BtoB/BtoCにかかわらず、多くの企業が「散在している顧客データを統合したい」というニーズを抱えていますが、特にBtoB企業の場合、アカウント(ターゲットとする企業)に紐付いて統合的データを管理する基盤は、セールスの分野におけるCRMが重要な役割を担ってきており、マーケティング分野のデータとの断絶が課題となってきました。一般的なDMPやDWHは、市場の傾向を分析したり、BtoC分野で類似するユーザー属性の行動傾向を洗い出したりするために使われていますが、企業ユースで、個々のアカウントの傾向を把握するためのテクノロジーは、やや遅れているのが現状です。しかし、ここ1〜2年で、ABMとともにCDPも注目されるようになり、この分野の芽が急速に伸びつつあります(図表3)。

図表3 「ABM」とともに「CDP」への注目も集まっている(タップで拡大)
図表3 「ABM」とともに「CDP」への注目も集まっている(タップで拡大)

 我々は、将来的にはABMとCDPは融合していくと見ています。なぜなら現在、BtoBマーケティングにおいても「顧客体験の向上」という号令の下、企業情報と、各社で保有しているファーストパーティデータやセカンドパーティデータ、そしてサードパーティデータを統合するニーズが高まっているからです。膨大なデータを統合し、分析する基盤は、BtoC分野で進化してきたところが大きいのですが、今後BtoB分野のCDPはABMという分野と密接な関係をもっていくと思います。

 ちなみに米国では、Demand baseやTerminusなどのABMソリューション、Lattice EngineやLeadSpaceなどのBtoB専業のCDPプラットフォームが知名度を得ていますが、2019年7月現在、日本にはまだ正式に参入してきていません。

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カオスマップの基本的な3つの使い方

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この記事の著者

田島 学(タジマ マナブ)

アンダーワークス株式会社 代表取締役
アンダーセンコンサルティング(現・アクセンチュア)などを経て、2006年アンダーワークスを創業。大手企業のデジタルマーケティング戦略、マーケティングツール/プラットフォーム構築支援、マーケティングオートメーション利活用、グローバルサイトのWebガバナンスなどを専門とする。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:39 https://markezine.jp/article/detail/32004

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