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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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定期誌『MarkeZine』特集

BtoBマーケティングを取り巻くテクノロジー 変化とトレンド

カオスマップの基本的な3つの使い方

 次に、カオスマップの使い方をご紹介します。カオスマップには、大きく3つの使い方があると考えています。

(1)製品選定の指針として使う

 様々なマーケティングツールがある中で、どの分野でどのような製品があるのかをリスト化する時に活用することができます。ツール選定者のなかには、「検索しても広告しか表示されない」と悩む方も少なくありませんが、そうした時にこのマップを使い、目的のテクノロジーカテゴリーにどのような製品があるかを確認するだけでも、選定プロセスが効率化できるはずです。

(2)カテゴリーを超えて見る

 これは少々マニアックな使い方ですが、カテゴリーで製品を選定するのではなく、あくまで「自社のやりたいこと」に従って見るという使い方もできます。たとえば、「ABMをやりたい」といっても、現在国内で使えるテクノロジーのなかでABMそのものをズバリ実現できるソリューションはありません。しかし、カテゴリーを超えて製品同士を組み合わせることで、やりたいことを実現できます。ABMであれば、まずは「企業データ」の提供ベンダー、そしてCDPとして顧客データを管理するCRMや、顧客の動向からニーズを捉えるMAツールを組み合わせることで、ABMを支援する基盤を構築することが可能です(図表4)。

図表4 カオスマップ活用法(2)カテゴリーを超えて見る(タップで拡大)
図表4 カオスマップ活用法(2)カテゴリーを超えて見る(タップで拡大)

 また、昨今は様々なテクノロジーが絡み合っているため、「このカテゴリーを導入すれば確実だ」とはいえなくなってきました。たとえばSEO対策にしても、表示順を押し上げるには、「コンテンツの表示速度」や「モバイルサイトの対応」などの要件が絡み合うようになっています。そうすると、コンテンツを高速表示するWebサーバーの選定や、CDN(Contents Delivery Network)などを導入したりなど、インフラ部分の対策が必要になります。やりたいことを実現するために、カテゴリーを超えて製品を検討する時にもカオスマップは役立ちます。

(3)現在導入しているソリューションの把握やスタックの検討に活用

 昨今は、IT担当部門を通さず、事業部門が独自にマーケティングツールを導入するケースが増えています。そのため、同じ会社ではあるものの、分野を重複して異なるソリューションを導入しているケースも珍しくありません。カオスマップを使えば、現在どの分野でどんな製品が使われているか確認することが容易になります。IT部門は、インフラリソースのログを確認し、ソリューションの使用頻度を見ることも可能なので、あまり使われていないようなら使用契約を停止することもできますし、バラバラのソリューションは1つの製品に統合するなど、ツール乱立状態を解消できるので、全社一体となって1つのマーケティングテクノロジーを活用する土台も作れます。

 なおツール選定に関しては、ツールありきではなく「目的」に沿って選ぶことがポイントです。私たちもツール選定を支援することがありますが、当初は目的志向でツール選定に入っても、ステークホルダーが増えたり、要件が増えたりすると、「みんながいいと言っているツールにしよう」「有名なものを選べばいい」となってしまいがちです。

 当たり前のことではありますが、当初の目的に沿って、最適な製品を選ぶための参考としてカオスマップを活用してください。要件が増えるとそれだけやることも複雑になるので、まずは特定領域に絞り、導入後3ヵ月から半年で成果を出すことを考えて進めていく(Quick Win)やり方をお勧めしています。

今後は「インテントデータ」「リアルの顧客接点」に注目

 最後に、2019年のマーケティングテクノロジーの傾向も見ていきましょう。この原稿を書いている時点(2019年7月)ではまだ作成中ですが、2018年と比べ、次のような変化があります。

インテントデータの活用

 先ほどの「企業データ」のなかで、「インテントデータ」という新たな概念が注目されています。帝国データバンクのようなスタティック(静的)データ、FORCASのようにIR情報をチェックしてトレンドデータを提供する企業がありますが、企業のWeb活動を分析し、自社の商品・サービスへの関心(インテント)が高い企業のデータを提供するベンダーが登場するようになりました。実際、PoC(Proof of Concept/概念実証)でインテントデータを活用している企業が増えつつあります。

リアルの顧客接点

 海外のイベントやセミナーでは、IoTと組み合わせて、誰がいつイベント会場に来場し、どこにいるかをデータ化してマーケティングや営業活動に活かす取り組みが大きく進んでいると感じます。これまでデータが取れなかったところからデータを取得することを「データフィケーション」と呼ぶようになってきているようですが、リアルの接点をデータ化することで、マーケティングや営業活動に活かすという取り組みは、今後ますます増えていくでしょう。すなわち、コールセンターからのアウトバウンドコールやダイレクトメールなどの取り組みにもデジタル化を検討していくことができる、ということだと思います。

 また、今はBtoCが中心のスマートスピーカーなども、今後ビジネス利用なども進んでいくと考えます。今は会議室予約をスマートスピーカーで行うなど、業務効率化のために使われているケースが多いのですが、将来的には顧客データや分析システムと連携し、マーケターが必要なデータを尋ねれば、即座に答えるという未来も期待できます。

2018年から2019年における変化

・「インテントデータ」を提供するベンダーが登場
・リアルの接点からデータを取得する動きが活発に
・「スマートスピーカー」のビジネス利用が促進

 そのほか2019年版では、掲載製品が4桁近くまで増え、カテゴリーもより細分化する予定です。具体的には、「CDP」「オンライン商談/インサイドセールス」といった形でカテゴリーを切り出すほか、統合プラットフォームの「スイート」カテゴリーがより複雑になる可能性があります。

 本書がお手元に届くころには、新しい「カオスマップ2019年版」もリリースされているはずですので、ぜひ自社のデジタルマーケティング戦略にお役立てください。

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この記事の著者

田島 学(タジマ マナブ)

アンダーワークス株式会社 代表取締役
アンダーセンコンサルティング(現・アクセンチュア)などを経て、2006年アンダーワークスを創業。大手企業のデジタルマーケティング戦略、マーケティングツール/プラットフォーム構築支援、マーケティングオートメーション利活用、グローバルサイトのWebガバナンスなどを専門とする。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:39 https://markezine.jp/article/detail/32004

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