ブランド価値向上だけでなく、事業に貢献するコーポレートサイトへ
「デジタルマーケにできること」をテーマに開催されたMarkeZine Day 2019 Autumn。9月13日のセッション「コーポレートサイトが、デジタル活用で事業に貢献するコンシェルジュに変わる」では、2019年6月にリリースされた日立製作所のコーポレートサイトリニューアルに関する取り組みが紹介された。
同社のコーポレートサイトリニューアルにおいて目指した姿は、UIやルック&フィールの改善だけでなく、Webサイトを訪問したユーザーに対して、知りたいことや問い合わせの窓口などが掲載されているページにスムーズにつながるようにするだけでなく、日立製作所が伝えたい情報もお伝えする、いわば訪問したユーザーが心地よさを感じることができるような「コンシェルジュ」になること。これにより、多くのコーポレートサイトが担っているブランド価値向上だけではなく、事業に貢献することも目指しているという。
以前の同社コーポレートサイトは、改訂した2014年にWebグランプリを受賞するなど一般的に評判が高いものだった。そのWebサイトがなぜ、リニューアルに乗り出すことになったのか。講演した日立製作所 ブランド・コミュニケーション本部 デジタルコミュニケーション部 部長代理の米山卓美氏は次のように語る。
「デザイン自体は定評があるものでしたが、私を含め事業部門にいた立場からコーポレートサイトに来てみると、探そうにも探せないし使いづらいと感じていたんです。そう思っていたら、2018年4月に、現在の部署に異動することになり、ちょうど、コーポレートサイトを改訂しようか、という話が出ていました。その準備として、前年に外部のコンサルタントに依頼し、コーポレートサイトを検証したところ、様々な課題があると突きつけられました。それならばと、『お客様にとって快適なWebサイトを提供する』ことを実現したいと考えたのです」(米山氏)
必要な情報にたどり着けない構造が課題に
ひとくちに日立製作所といっても、事業領域は非常に幅広い。一般ユーザーには白物家電でお馴染みだが、街中を見渡すとビルのエレベーターや電車が日立製であったり、企業や金融機関、自治体の情報システム、さらには発電所などの重要なインフラ設備を担っている。昨今は、これまで培った制御・運用技術(OT)と情報技術(IT)、そして高信頼なプロダクトを組み合わせて、お客さまとの協創で、さまざまな課題を解決する社会イノベーション事業に注力している。
だからこそ、同社のコーポレートサイトを訪れる人の目的は様々だ。一般ユーザーに馴染みの深い家電分野といっても、同社のビジネス領域からいったら一部でしかない。だが、家電の情報を探したり、家電のマニュアルを探すために同社のコーポレートサイトトップページに訪れるユーザーがかなり多かったという。原因は、家電専用サイトではなく、「日立」と検索してコーポレートサイトに来てしまう方が多かったほか、価格比較サービスを提供しているサイトのそれぞれの製品情報ページに、日立のコーポレートサイトトップページのURLが掲載されてといったことだった。しかし、トップページに来ても、ユーザーが自分の欲しい情報にスムーズに行き着けないことから、そのまま離脱していまうケースも多々あったそうだ。
「それ以外にも、日立が取り組んでいる社会イノベーション事業の情報や、自分たちの強みであるキーワードが反映されていないなど、伝えたいことを伝えきれていないという問題がありました。また、当時のWebサイトでは、トップページにタイムラプスの動画を挿入していたのですが、このために読み込みに時間がかかるという課題も指摘されました。そのほか、サイト内検索の精度が悪かったり、そもそもサイトデザインが陳腐化して、最新のデバイスの解像度で閲覧すると、幅が狭いという見た目の課題もありました」(米山氏)
こうした課題が明らかになり、2018年から本格的にコーポレートサイトの改訂プロジェクトがスタート。今回のコーポレートサイトの改定におけるビジョンとして「コーポレートサイトは顧客課題に応えるために、デジタルを活用した日立グループのコンシェルジュになる」ことを掲げ、ミッションを「ブランド価値向上だけでなく、事業にも貢献する」と定義。「事業に貢献する」とは、ブランドや製品を知ってもらって満足するだけでなく、「訪問してくれたユーザーを促して、ビジネスに貢献するWebサイトにする」ことを目指すものだ。
これを実現するゴールとして、(1)欲しい情報へ容易にたどり着ける、(2)日立の認知を上げ、興味をもってもらう、(3)さらに日立が伝えたい情報をしっかり届ける、の3つを設定。この実現に向け、プロジェクトがスタートした。