SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第107号(2024年11月号)
特集「進むAI活用、その影響とは?」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

ダイバーシティから考える、新しいマーケティング・コミュニケーションの視点

生活者の琴線に触れ、バイアスを解放するコミュニケーションメッセージのヒント

 SNSの発達と共に、世の中には情報があふれ、生活者自身がものすごいスピードで意見や思いを発信できるようになっている。マーケターとしては、生活者の共感を狙いSNSを有効活用してバズを生みたいと考える一方で、良かれと思って発したメッセージが炎上した事例も多発している。それらと生活者の琴線に触れ評価を得たメッセージの境には、何があるのか? ダイバーシティをテーマにマーケティング支援をしている白石氏を聞き手に、認知心理学、行動心理学など様々な分野で研究がされている「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」の観点からコンサルティングを行う一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所 代表理事 守屋氏に、そのヒントについて聞いた。

『リアルビューティー スケッチ』が世界中の人々の琴線に触れた理由

白石:少し前のキャンペーンになりますが、2013年のDove『リアルビューティー スケッチ』は1億8,000再生近くを記録し、世界中の多くの生活者の間で話題になりました。2013年のカンヌ広告祭 チタニウム部門でグランプリも獲得しています。なぜこれほど話題になり、生活者の心をとらえたのでしょうか。

 

守屋:この映像は、自分のことを否定的にとらえてしまったり、自分のことを過小評価してしまうといった「アンコンシャス・バイアス」を解放したことで、多くの人の心をとらえた事例だと考えています。そして、そこには重要な3つのポイントが含まれています。

 まず一つ目は、映像の登場人物が直接、視聴者に対してメッセージを投げかけてはいないということ。視聴者はあくまでも第三者として「スケッチしている人・されている人」とのやり取りを見ています。

 二つ目のポイントは、メッセージを押し付けていないことです。この映像を見ている途中に、企業からのメッセージが流れることはありません。また、「こう解釈してほしい」といった説明も流れることはありません。視聴者は感情移入し、感じるままに、思うままに映像を見ることができる。押し付けのない姿勢がみてとれます。

 そして三つ目のポイントは、「私は、こう思う」という「Iメッセージ」(「私」を主語として、話者自身の思いを伝えるメッセージの発信方法。相手に何かを強制することなく、物ごとを効果的に伝える手法の一つ)が入っていることです。

 この映像では、似顔絵を見たある人は、「自分の、ありのままの美しさに気づくべきですね」と感想を伝え、ある人は「自分の短所ばかりを気にして、良くしようとしてきたけど、もっと自分の長所を認めてあげるべきですよね」と言葉にしています。企業からのメッセージを発信するのではなく、登場人物一人ひとりが、それぞれの言葉で語っていることから、ステレオタイプなメッセージには陥らず、共感を呼んだのではないかと思います。

白石:つまり、(1)客観的にストーリーを見られるつくりであること、(2)企業の考え方を押し付けず、判断を生活者に委ねていること、(3)「私はこう思う」という「Iメッセージ」の形で発信していること、この3つのポイントが重要だということですね。

一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所 代表理事 守屋智敬氏

「SNS時代は共感が大事」は本当か?

白石:「SNS時代は共感が大事」と言われる一方で、共感のあり方も変化してきているように思います。企業としては悪気はなく、共感を得ようと行った施策なのに、“炎上”してしまう事例が多発しています。炎上するたびに様々なメディアで原因の検証がなされているのに、どうして繰り返されてしまうのでしょうか。

守屋:これまでの広告コミュニケーションで良しとされてきた価値観が通用しなくなっているからではないでしょうか。今の時代、強いインパクトで驚きたい、誰かに何かを言い切って欲しいというインサイトはそれほど強くない。

 多くの企業内コミュニケーションのコンサルティングでも感じますが、「これまで無意識に常識」とされてきたけれども、実は人々が疑問を感じているテーマについて問いかけたり、様々な意見を引き出して対話を促すコミュニケーションのほうが求められているのだと思います。

白石:なるほど。一過性のバズやインパクトで話題性を作るタイプのコミュニケーションは過去のもので、これからは時代背景や社会背景などを加味した新しい価値観を提案するような、生活者と長期的に関係性を築いていくコミュニケーションが重要性を増してくるのですね。

守屋:そうですね。メッセージを発信する企業側自体が、「作り手の価値観を押し付けたり、決めつけたりしていないだろうか?」ということについて問い直す必要があるように思います。

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
多様性の時代、属性でひとくくりにする危険

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
ダイバーシティから考える、新しいマーケティング・コミュニケーションの視点連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

白石 愛美(シライシ エミ)

コーポレートコミュニケーション コンサルタント
株式会社Amplify Asia 代表取締役

WPPグループにて、リサーチャーとして主にマーケティングおよびPR関連プロジェクトに従事。 その後、人事コンサルティング会社、電通アイソバーの広報を経て、ダイバーシティを起点に企業のマーケティングをサポートする株式会社Amplify Asiaを立ち上げる。

株式会社Amplify Asia https://www.amplify-asia.com/

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2019/12/16 08:00 https://markezine.jp/article/detail/32414

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング