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「SDGs」がキーワードに 識者4名が2020年のマーケティングを語る

鎌倉市のスマートシティ化とAIによる業務省略化

 続いて紹介されたのは、テクノロジーによる社会課題の解決に取り組んでいる加治慶光氏の話。

 官民における様々なプロジェクトをリードした豊富な経験を持ち、前職のアクセンチュアではSDGs統合プログラムなどを推進していた加治氏は現在、グロービス経営大学院教授、鎌倉市参与、AIベンチャー企業・シナモンの会長という三役の立場から社会課題に向き合っている。

株式会社シナモン 執行役員会長/鎌倉市参与 加治慶光氏
株式会社シナモン 執行役員会長/グロービス経営大学院教授/鎌倉市参与 加治慶光氏

 加治氏は社会課題のひとつとして、まず労働力不足を上げる。人口減少に伴い、日本では2030年には約1,100万人の労働力が減る試算が出ている。対して機械化による労働力不足の解消が必要とされているが、そこに新たに、人間だけの活動とマシンだけの活動の中間に存在する「ミッシング・ミドル(見過ごされている中心地)」という領域が登場し、その仕事を増やして人間とマシンを共存させようという動きが出ている

 シナモンでは、AIで仕事の省略化をするサービスを提供していて、人がよりクリエイティブ領域に時間を使えるようサポートしている。日本に300人ほどしかいないAIリサーチャーを、100人ほどベトナムで育成・採用していて、主に米国と日本でどんどん業務の省略化を進めている。

 また、加治氏が参与を務める鎌倉市では、テクノロジーでより便利で住みやすくするスマートシティ化を目指した取り組みを行っている。現在は第三世代のスマートシティが世界中で注目を集めており、日本の中でも色々な政策が実行されているが、そこには、GAFAやアリババなどのプラットフォーマーの台頭や、日本の社会課題の解決などが背景にある。

 鎌倉市で課題となっているのは、「気候変動と災害激甚化」、「オーバーツーリズム」、「超少子高齢化」の3点で、これに対し、次の3つの方針を立てて取り組みをしている。

1. マルチステークホルダーとの連携(産官学民との連携)
2. 市民との合意形成(デジタルデバイド対策)
3. グリーンフィールドとブラウンフィールドによる立体的組み立て

 「鎌倉のスマートシティ化を実現することで、社会課題との向き合い方を国・企業と共有していきたいと考えています。これにより、課題先進国と言われている日本が、課題解決先進国になって世界に輸出していける可能性が出てくるでしょう」(加治氏)

 また、このような社会貢献活動にプロモーションとして関わりたいという企業は増えているが、加治氏は、「社会課題をビジネス化し、会社が持続可能になるような指針を作っていくことが重要」と話す。

 さらに、「SDGsやESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)を推進していく企業でないと、社会的に評価されなくなりつつある」と述べ、「企業はこれらにどう向き合っていくかが重要で、それは世界的な動きになっている」と主張した。

LIFULL「THE MOST DIVERSE」

 そして、モデレーターの江端氏が先進的な事例としてあげたのが、LIFULLの広告コミュニケーションだ。話してくれたのは、CCO(チーフクリエイティブオフィサー)として、同社のブランド戦略、マーケティング、ブランドデザインなど広域の管理監修をしている川嵜鋼平氏だ。

 同氏は、以前ユニクロやナイキなどのクリエイティブディレクションを手がけ、「ストーリーテリング×テクノロジー」を融合した新しい価値づくりに取り組んできた。

株式会社LIFULL 執行役員 CCO 川嵜鋼平氏
株式会社LIFULL 執行役員 CCO 川嵜鋼平氏

 同社は「あらゆるLIFEを、FULLに。」をコーポレートメッセージに掲げ、2017年4月にネクストからLIFULLに社名を変更して新たなスタートを切った。

 社名変更した当初は、社名リーチを図ったコミュニケーションを取っていたが、どんな価値のある企業かわからないとの声が多く聞こえたことから、創業以来の企業理念である「利他主義」の意味も込め、世の中に必要不可欠な企業であることを、経営層やあらゆるステークホルダーとディスカッションし、ブランドパーパスを策定

 そして生まれたのが、「しなきゃ、なんてない。」というテレビCM。ここで描いているのが、「THE MOST DIVERSE」で、「既成概念の枠を超え、多様な人の、多様な生き方をサポートする」という想いを込めて制作された

 「会社の宣伝はしていなくて、最も多様な視点を認める企業であるスタンスを表現するため、包み込むようなCMを作ることを考えました。それがブランド価値向上につながるだろうと計算してのことです。ブランド認知をKPIとしていましたが、予想をかなり上回る結果が出ました」(川嵜氏)

 またテレビCMの放映とあわせて、Twitterの投稿キャンペーンも実施。そこからの多様な声を拾い、新事業を作る試みも進めている最中だという。

 これらを制作する上で、「一貫性」は重要なポイントだったと川嵜氏は話す。

 「各コミュニケーションによってメッセージやスタンスが違うように見えてしまうと、消費者に選んでもらえない時代がきているので、一貫性は非常に重要です。弊社には、ブランド・戦略・クリエイティブ・PRと、それぞれ社中に強いチームがあるので、コア部分は必ず社内で作り、一貫性を生み出しています」(川嵜氏)

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4者が考える、2020年のキーワード

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/01/17 07:00 https://markezine.jp/article/detail/32725

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