ロイヤル顧客の心理を起点にしたVANSの施策
――MarkeZineもまさに「マーケティングを経営ごとに」と掲げて、マーケティングやマーケターの地位向上を目指していますが、そのためには経営が求める指標でマーケティング成果を示していかないといけないですよね。
白井:その通りですね。
――LTVの重要性が増していることを背景に、御社では今後ロイヤル顧客の理解とそれに基づく顧客層拡大を支援していくとのことですが、そもそもロイヤル顧客の定義自体が企業やブランドによって異なるかと思います。経済と行動以外に、心理という観点でロイヤルティを把握することからもうかがえますが、一概に、購買額や頻度で決めるものでもない、と。
加藤:確かに、購買額や頻度だけでは決められませんが、重要な要素です。理想を言えば、ロイヤル顧客は経済と行動、そして心理的なロイヤルティのすべてを合わせ持っている必要があると思います。ただ、購買額や頻度は低い一般顧客の中にも、ブランドに強く好感を抱いている人はいるはず。その方々の心理を深く知ることも大事です。

――心理に注目した顧客分析も重要、ということですか?
加藤:そうですね。たとえばシューズブランドのVANSは「VANS Family」というロイヤルティプログラムを設けていますが、元々彼らもロイヤル顧客の定義やその理解に課題がありました。調査やインタビューを重ねたところ、心理的なつながりが高い人の特徴として「最初に買ったVANSのシューズに強い思い入れがある」という点がわかったそうです。そこで「はじめてのVANSのストーリーを教えて」と募ったら、写真付きで何万件も集まりました。同社はそれを基に、離反顧客やまだ購入したことがない顧客へもアプローチし、成果を上げたのです。
ポストCookie時代におけるゼロパーティデータ
――そうやって、ロイヤル顧客を心理的にも理解して、現状ではブランドから遠い人へのアプローチに適用していくのが、加藤さんが冒頭でおっしゃった「ロイヤル顧客の理解を通した事業成長」なのですね。
加藤:そうですね。CRMと分断して、新規だけを見てリードを最大化するのではなく、ロイヤル顧客から未認知顧客までのファネル全体を捉えて、ロイヤル顧客の理解を資産として事業成長につなげるのが我々の考え方です。

――1月17日のイベントでは“ゼロパーティデータ”と3つのロイヤルティが解説されました。来場された方の反応や、事後の反響はいかがでしたか?
白井:予想以上に手応えを感じましたね。メディア露出も複数件ありましたし、来場されていない方からも「ゼロパーティデータについて聞きたい」といった声がありました。
――MarkeZineの読者には、Cookie利用が難しくなる将来に備えて、いかにして顧客を理解するべきかを課題に感じている方が多い状況です。その解決策のひとつが、御社が提唱するゼロパーティデータの活用なのだろうと思いました。
白井:チーターデジタルの根幹には、「マーケターを支援する」という思想があります。今回のイベントで発表した、新規獲得からロイヤル化まで一気通貫でできるソリューションも、クリエイターや営業ではなくあくまでマーケターの力になるという観点で開発されています。