マルチチャネル展開につながったペルソナ設定
次に「2.ペルソナ設定」について、「あまり細かいものは不要ですが、関係者全員で意思統一して全体の軸を決め、その上でチャネル別のコンセプトを定めるのに役立ちます」と前田氏は振り返る。
『Woman.CHINTAI』で取り込みたい顧客像として設定した、年齢や収入、好きな芸能人など8つほどの項目のうち、前田氏がポイントとして挙げるのは「年齢」「月収」「性格」の3つだ。コンテンツのタイトルや構成を練る際、少なくともこの3つは外さないことを共有しておくと、担当編集者やライター、イラストレーターによる内容のブレや表現の差が出にくくなる。前出の「【図解】8畳の広さはこんな感じ……」のコンテンツも、あまり見られない“こんな感じ”というラフなタイトルづけは、このペルソナがあってこそだという。
全体の軸が決まったら、チャネル別にコンセプトを定めることもできる。『Woman.CHINTAI』では、SEOは「役に立つこと」を主題に実用的なコンテンツを、SNSでは「楽しんでもらうこと」を主題にインフルエンサーによるコラムやイラストを活用したコンテンツを重点的に制作・配信した結果、各チャネルのユーザーニーズにも合致して多くのアクセスや反響を得ることができた。イラスト中心の記事はInstagramと相性がよく、自然検索からのリピーターも着実に増加していった。
ユーザーのフェーズを考慮したコンバージョン設計
最後に「3.コンバージョン設計」については、認知から成約までのユーザー状況を整理し、各フェーズに合わせたコンテンツをバランスよく配置できたことが大きいという。部屋を探し始めたばかりの人は、今の住まいに不満があると仮定し、住居トラブル解決のコンテンツを。部屋を決める直前の人には、敷金や前家賃など関心が高いお金関係のコンテンツを、といった具合だ。
「さらに、直接コンバージョンに寄与するコンテンツも用意しています。これらはSEOやSNSからの流入は多く見込めませんが、部屋を決める直前の人向けのコンテンツからも誘導をかけていて、コンバージョンを継続的に生んでいます」(前田氏)
また、スムーズなコンテンツ遷移のためにはCTA(Call to Action)も重要だ。コンテンツの文脈に合わせてCTAバナーの文言やデザインを熟考し、自然な誘導を心がけた。リンク先のページもユーザーの期待を汲んで吟味するなど、工夫を凝らしていった。
以上の改善の結果、『Woman.CHINTAI』は流入7倍、コンバージョン4倍という大きな成果が得られた。『Woman.CHINTAI』編集部のご担当者からは、「ユーザーと向き合い寄り添うことで、オウンドメディアを成功へ導くことができました。ぜひ皆さまも自社のユーザーを見直してみては」とコメントが寄せられた。編集部員は現在、社内でマーケターとして評価されているそうで、「支援をした当社としても誇りに感じています」と前田氏。
「ミエルカ」という強力な分析ツールだけでなく、企業とともにユーザーに寄り添ってくれるカスタマーサクセスの存在も、成功の要因だろう。これからの時代に欠かせないオウンドメディア強化に悩みがある企業は、まずはFaber Companyが開催している各種無料セミナーを受講してみてはいかがだろうか。