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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』特集

「マーケティングは経営そのもの」これからの時代を生き抜くために必要なマーケターの素養

経営者と同じ目線で語れているか

――最終的に関東・関西圏への投資を実現するにはどうすべきか、ストーリーがあったのですね。……とはいえ、売上額の50%を超える金額をテレビCMに投じるのは、やはり大きな決断だと改めて驚きます。

 そうですよね。実現できたのは、私自身が経営者だったからだと思います。経営者が見ているのは売上高であり成長率であり、企業価値が上がっているかどうかなので、勝ち筋があって投資回収が計算できていれば、その判断はそう難しくないはずです。僕がもし、単に「テレビCMを打てば認知が上がるんです」とか「ブランディングが大事です」と言い張っていたら、決して実現しなかったと思います。

 もちろん、プレッシャーはありました。ただ、一方で僕自身、1年で結果を出さなければクビという前提で入っていたので、大きく勝てる戦略を立てて実行するしかなかった。その中で「検証しながらやる」という当たり前のことをやっただけですが、結果的にあのタイミングでテレビCMに大きく投資できたからこそ指名検索数と新規注文者数が爆増し、今の当社につながったとも思います。

――その経験を基に、今度はテレビCMの制作・放映・分析までを一気通貫で支援する事業に注力されているのですね。次に「マーケティングは経営そのもの」というお考えについてうかがっていきたいのですが、先ほどの「マーケターが経営者と同じ目線になる」ことなどからも、一貫した考え方があるのではと感じました。どの時点から、マーケティングは経営そのものだと思うようになったのですか?

 T&G社のときですね。大幅な赤字を出し時価総額が約10分の1程度に急落し、社内が騒然とした時期がありました。当時、会社の2大コストは、営業なども含めたマーケティング費と人件費の2種類でしたが、そんな状況だとマーケティングに費用を割くのは切実です。若いウェディングプランナーが現場で必死に稼いできたお金を使って、企業価値を向上させるのはマーケティング責任者の宿命ですし、改善できないなら使わないほうがいい。

 そのとき、マーケティング費は“自分の財布だ”と、お金を使うことについて一気に自分ごと化しました。1円の価値をわからずによくわからないものに投資していいわけはない、と。考えてみれば、売上5億円の会社が1億円を広告宣伝費に使うのは、年収500万円の人が100万円を投資するのと同じです。自分のお金だったら、よくわからないものに投資しますか? めちゃくちゃ検討しますよね。

自分の財布だったら投資回収の計算は当然

――そうですね、めちゃくちゃ考えます……それだけの価値があるのか、回収できるのか。

 だから、投資回収を考えるのは当たり前のはずなんです。自分の財布や、家計だと思えば当然なのに、なぜか会社になるとこの視点を持てない。自分のお金、あるいは現場が稼いできた貴重なお金だと考えられないマーケターや、それを助長する人が少なくないとも感じています。それはぜひ、やめて欲しいなと思いますね。誰のお金を使っているのかを常に考えることは、商売の原点だと思います。それが投資回収を重視することにつながりますし、経営者と同じ目線にもなっていきます。

 経営者は会社のお金のすべての収支を見ているわけで、マーケティング費は会社の2大コストのひとつなのだから、当然マーケティングは経営に大きなプラスインパクトを与えなければならないんです。もっと言うと企業価値を上げなければならない。「マーケティングは経営そのものだ」という言葉には、そういう意味を込めています。

――なるほど。経験が浅かったり、目の前の細かい指標の達成に追われていたりすると、なかなかPLを意識するのが難しいこともあると思います。経営の視点を備えたマーケターになるための土台があるとするなら、どんなことだと思われますか?

 大前提であり絶対的な条件は、「勝ち」を考えられることだと思います。結果を出すとかインパクトを与えるとか、言葉は様々ですが、自分の会社が3年後や5年後にどうなったら「勝ち」なのかを定義して、そのためにどうするかを突き詰める。これは商売の基本でもあると思っています。

 僕が参画した当時のラクスルなら、爆発的な成長をさせること。T&G社にいた時なら、V字回復を遂げて経営を安定させて売上利益を伸ばすことが「勝ち」でした。それを見据え、何年で達成すると決めるところが経営視点を持つ出発点になります。

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経営視点を備えたマーケターになるために

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:46 https://markezine.jp/article/detail/33036

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