KARTEの高い拡張性と自由度がCX創造を支える
顧客体験の向上という課題に対する取り組みがなかなか進まない理由は、「顧客体験」という抽象的なものを具体的にどのように「向上」させればいいのか、その実像を捉えにくい点にある。
プレイドが提供するKARTEは、まさにその難しい課題を解決するためにあるCXプラットフォームだ。プレイドの田中悠氏は、「KARTEではあらゆるデータをリアルタイムに解析して、その結果を『一人の人間』として理解し、顧客目線で体験を創造できます」と説明する。
たとえば、自社サイトを閲覧している顧客の属性に合わせ、売れ筋の人気ランキングをさりげなく表示することや、ユーザーが知りたいこと、疑問に思っていることを、わかりやすく最適なタイミングで表示することが可能だ。
その具体的な仕組みは、大きく2つに分けられる。
まず、顧客の属性情報や、アプリ、Webなどの行動・購買履歴、それに外部データも含めて人軸で集約し、一人ひとりのユーザーを解像度高く「知る」こと。そして、その結果を踏まえてその人に「合わせた」体験を提供すること。
「KARTEにはあらゆるデータを取り込める独自開発のスキーマレスなエンジンがあり、社外にあるサードパーティデータや、顧客・商品・店舗などの社内データを集約して解析できます。これにより、高い自由度でセグメントを実行し、柔軟な施策展開を行えるメリットがあります。
また、SalesforceやMarketoなどのMAツール、TableauなどのBIツールとも連携できるほか、Webデザインや、Webサイト内外のアクション設定も自由に行うことができるのです」(田中氏)
アクションという点でもサイト内外で多彩なコミュニケーションが可能になっている。ポップアップ、埋め込み、アンケートに加えて、スクリプト配信でCSS調整やレイアウト変更などを行うことすら可能なのだ。
あらゆるデータをリアルタイムに解析して「顧客」を見える化
さらに、導入企業の担当者の目を惹きつけるのが、それらのデータをリアルタイムに解析するスピードだ。講演では実際に、そのリアルタイム解析スピードも紹介。
ユーザーがスマートフォンの画面で商品をスワイプすると、その動作がリアルタイムにKARTEの管理画面上に表示され、どのカテゴリーのどんな商品のページを閲覧しているのかが把握できるほか、「同じ商品を2回見る」「商品をカートに入れる」という動作が発生すると、それがリアルタイムに「イベント」として通知される。
リアルタイム解析を行えるのは、自社のWebサイトだけではない。たとえば、自社WebサイトからLINEに飛んだ場合、LINE上の行動をリアルタイムに収集・解析する。LINEのブラウザから自社Webサイトのページに遷移したら、その行動履歴が同じく管理画面に表示される。自社アプリでも同様だ。
「ポイントは、すべての行動データを一人のユーザーに紐付けてその様子をリアルタイム解析していること。チャネルを横断しても、その行動や購買履歴を一人のユーザーとして認識するので、そのユーザーに関する理解を深めることができます」と田中氏は語る。
それらのデータは、SQLクエリを使えば自由に抽出してCSV形式でダウンロードできるため、多様な分析が可能だ。ちなみにKARTEでは、使用頻度が高いクエリのライブラリを用意しているので、SQLの知識がない担当者もデータを自在に操れる。
分析や施策の展開にあたっては、主要MAツールやBIツールとの相互データ連携が可能な上、対応するツールも引き続き拡充されているという。
ユーザーの特性に合わせてデザインや表示を変更可能
また、KARTEを使えばWebデザインや機能を拡充できる点も導入企業から評価されている点の1つだ。よく使われるアクションテンプレートは、150種ほどあらかじめ用意しているので、テキストや画像、色を変更すればそのまま自社サイトに実装できるという。
ポップアップ機能もその1つで、「セールまでの時間をカウントダウンで表示するポップアップ」「FAQを説明するポップアップ」「使い方のチュートリアル向けポップアップ」といったテンプレートが用意されている。
KARTEを通じてサイト内コンテンツのテキストや画像を置き換えたり、挿入したりできる「埋め込み機能」も人気だ。アパレル企業のライトオンでは、この埋め込み機能を活用して、訪問したユーザーの属性に応じて最適なトレンドキーワードをWebサイト上に表示する仕組みを実装した。店舗で人気の商品をすぐにWebに展開することができたため、キーワードからのコンバージョン率がサイト全体の5倍になるという成果が出たという。
顧客のフェーズを分類し、各フェーズで施策を実施
こうしたKARTEを活用して、デジタルだけでなく店舗まで含めた顧客体験向上を目指しているのがアパレル企業のパルグループだ。
パルは2016年からEC強化、自社サイト運営の内製化を開始し、同時にデジタル/店舗含めたオムニチャネルの体制作りに着手した。2018年6月からはオムニチャネル体制を本格始動させ、今年は他社サイトを含めた売上200億円、EC化率は20%を目指しているという。
同社のオムニチャネル戦略は、テクノロジーと店舗スタッフの力を掛け合わせ、「会員」から「アクティブユーザー/ファン」に育てていくシナリオを構築している点が特徴といえる。
パルでは顧客をセグメントするにあたり、「会員登録前」「会員登録済み」「初回購入」「成長期」「ファン」という5つのフェーズに加え、「休眠」「休眠予備軍」という2つのフェーズを設定。「アクティブユーザーを増やす」「ファンを作っていく」という2点に焦点を当てて各フェーズで施策を展開している。
同社はWebサイトやアプリの行動・購買データのほか、商品マスタや在庫マスタ、スタッフが持っているコーディネートのデータや店舗のPOSデータ、それにLINEの行動ログをKARTEに取り込んでいる。これらのデータを基に顧客をセグメントし、スコアリングも行う。
KARTEを活用する軸は「顧客体験向上での活用」と「社内業務での活用」の2つだというが、具体的にどのような施策を展開しているのだろうか。
購入検討度合いをスコアリングしてクーポンを通知
まず、「顧客体験向上での活用」から見ていこう。
会員登録前のユーザーの場合、購入検討期間を1週間に定め、その期間内で行った行動を点数付けしていく。一定以上のスコアに到達したユーザーに対しては、KARTEを使って会員登録時に発行するクーポンを通知し、購入を促す。会員登録して購入が完了すると、これもKARTEで会員のマイページにクーポンを提示する仕組みだ。
また、メルマガやLINE、アプリ、Webサイトすべてのチャネルにおいてポップアップ機能や埋め込み機能を活用し、人気アイテムのランキングやユーザーに最適なレコメンドを行うことで、購買を促している。
アパレルECの最大の課題といわれるサイズ問題もKARTEを使って対処している。ユーザーごとに、過去に購入した商品のサイズを表示して、購入しようとしている服の着心地を比較する機能を設けることで、「サイズが合わなかったらどうしよう」というユーザーの不安を払拭した。
さらに、在庫数の減少や値下げ、販売開始、再入荷といった情報をKARTEの「変動通知機能」を使ってユーザーに通知。田中氏によると、変動通知メールの開封率は、通常のメルマガと比べて開封率が約2.5倍という効果が出ているという。
「社内業務での活用」についてはどうか。ブランド担当者自身はKARTEの管理画面を使わず、Google データポータルにKARTEのデータを集約し、ユーザーやブランドごとに売れ筋や予約商品購入数をビジュアライズして確認できるようにしている。これにより、商品の仕入れや企画、在庫の配分やプロモーションなど社内業務に活用しているそうだ。
KARTEがオンライン/オフライン融合のハブになる
今後の取り組みの一つが、ユーザーに購入した商品のコーディネート例を送信するサービスだ。
「現在はECで購入した翌日にコーディネート例を通知しているのですが、今後は店舗で購入した顧客に対しても、コーディネート通知を行う予定です。特徴は、当日接客を担当したスタッフから通知を届けるという点で、これによりオンラインとオフラインを融合し、店舗をきっかけにデジタルに誘導しつつ、『またあのスタッフに会いたい』ということで店舗に戻るというサイクルが確立できます」と田中氏は期待をにじませる。
また、現在進めているのは、店舗スタッフがKARTEを使ってメッセージを届けられるようにする仕組みの実装だ。「これまでは店舗スタッフがメッセージを届ける場合、DMしか手段がありませんでした。しかしKARTEを経由してメッセージを届けるようにすれば、DMだけでなく、自社アプリを通じてリアルタイムに温かいコミュニケーションを交わすことができるので、新たな顧客体験を実現できます」と田中氏はいう。
もちろん、メッセージを通知するチャネルやタイミングもKARTEで最適化する。ユーザーがメッセージを開封する時間帯を分析し、最もアクティブな時間帯を狙って通知することで、より快適なコミュニケーションを実現する狙いだ。
以上のように、KARTEはデジタルプラットフォームだが、使う「人」を通じ、店舗も含めたオムニチャネルでの体験、購買サイクルを改善することができる。
田中氏は最後に、パルの事例を元にオムニチャネルでの顧客体験向上を進めるための3つのポイントを紹介した。
- 顧客エンゲージメントでフェーズを分け、そのフェーズ内の施策を顧客視点で考えること
- オフライン、オンラインの体験をシームレスなものとし、顧客とのつながりを創り出すこと
- 企業全体、場合によっては業界全体をあげて顧客体験向上に取り組むこと
これらに取り組む企業こそ今後伸びていく企業・業界だとし、プレイドとしても成長をアシストしていきたいと述べ講演を締めくくった。