データを利活用するためのプラットフォーム
DNPはこうしたデータ統合などの悩みを抱える企業の課題を解決すべく、2019年にオンライン・オフラインのデータを統合し、利活用するためのプラットフォーム「DNPマーケティングクラウド®」の提供を開始した。
データをオンライン・オフライン問わず「ためる」環境。それらを統合し、活用できるようにデータの精度を上げる「強化する」環境。さらにそれらを「活用する」環境の3つをパッケージ化した点が特長のクラウド型サービスだ。
「『DNPマーケティングクラウド®』は、企業で元々使ってるシステムに大きな手を加えることなく、オンライン・オフラインの施策を実行できるデータ利活用プラットフォームです。オンライン・オフラインのさまざまなデータを統合する際に、通常はフォーマットを合わせる必要が出てきますが、『データレイク』という機能により、基本的にどのようなフォーマットのデータでも受け取ることが可能となりました」(小路氏)
たとえば、同じ会社について「株式会社○○○」「(株)○○○」といった社名の表記揺れがある場合も、きちんと同じ会社として認識し、統合される。
「強化する」フェーズでは、「データプレパレーション」という、AIによってさまざまなデータを収集・整形し、分析・利活用するためのデータを新たに生成する機能がある。つまり事前にデータ処理フローを設定することで、次回以降は自動でデータクレンジングが行われ、精度の高いデータが生成されるというわけだ。
「活用する」フェーズでは、オンライン施策はもちろんのこと、パーソナライズドDMやカタログの作成など、オフラインでの施策もシームレスに行うことができる。印刷所に発注するという手続きを要することなく、このクラウドから直接DNPの印刷工場にデータを流し込み、DMなどの作成・発送が可能になる。DMのリストを生成してから発送まで48時間以内※で対応できる(※DMの種類によって対応時間は異なる)。
顧客の体験価値を高め、作業効率もアップする
実際に、「DNPマーケティングクラウド®」を導入している小売企業では、実店舗と親和性の高い顧客にはオフラインのDMを、アプリと親和性の高い顧客にはアプリのプッシュ配信をというように、オンライン・オフラインの垣根を越えて、顧客ごとにマッチした方法で情報発信している。
また、DNP社内でも同プラットフォームを活用している。データプレパレーション機能を活用することによって、それまでは36時間を要していた1ヵ月の集計データの作成を、30分で行えるようになった。
ここまでの内容を総括すると、顧客体験価値を高めるために必要なことは2つ。1つ目は、オンライン・オフラインを横断した生活者の購買行動をデータ起点で分析して、顧客の体験価値を高めるための現状課題を可視化すること。これについては、DNPが提供する「エモーショナルカスタマージャーニーマップ」と「価値観カスタマージャーニーマップ」のようなソリューションを駆使しながら、勘や経験のみに頼らない描き方が求められる。
2つ目は、オンライン・オフライン横断でデータを利活用・活性化するための環境を作ること。こちらは、「DNPマーケティングクラウド®」のようなプラットフォームを最大限に有効活用することで実現することができる。
小路氏は、最後に今後の展望を語り、セッションを締めくくった。
「今後もさまざまな新しいテクノロジーやマーケティング手法が登場すると思いますが、DNPでは皆さまとともに課題を考え、オンライン・オフラインを融合した形でのマーケティング活動を支援させていただきたいと考えています」(小路氏)