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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

「ブランドはもっと自由でいい」 テクノロジー×コミュニティで日本のモノづくりを盛り上げる

意見はすべて提示して「何をすべきか」を議論する

――具体的に、どのような工夫をしているのですか? 様々な意見がある中で、誰のどんな意見を掘り下げるかも一様にはいかないと思いますが、意見を咀嚼するときに気を付けること、本当に伝えるべきことを見つける方法はあるのでしょうか。

田中:まず、今は皆さん多くの時間をスマホ上で過ごしているので、スマホでとても簡単にフィードバックできるインターフェースを整備しています。同時に、待つだけではなくたとえば試飲会に来ていただいた方、買っていただいた方に僕らから積極的に話しかけて、ご意見を寄せてもらえるようお願いしています。

 誰のどんな意見を、という点はおっしゃる通りで、たとえば「CRAFT X」なら元々クラフトビール好きの方の意見と、これまでほとんど飲んだことがなかった方の意見は違って当然です。意見を掘り下げていく際、まず僕が心がけているのは自分なりの仮説を持つことです。その上でお客様と対話していくと、相手の言葉の背景がより深くわかったり、自分の感じていたことも「実はこういうことだったのか」と気づいたりする。そこからまたお客様の意見と自分が気づいたことを行き来していくと、何を最もお客様が気にしているのか、プロダクトをよりよいものにしていけるヒントの核心に近づけるのではないかと思っています。

――では、そうして得た意見を、つくり手の方々にはどのように返すとうまく運ぶのでしょうか?

長谷川:開発へのフィードバックで、僕らが大切にしているのは2つです。1つは、挙がってきた意見をこちらで取捨選択しないこと。極めてオープンに、透明性を保ってお伝えします。その上でもう1つ、最終的に何を取り入れるかは、つくり手の思い、消費者の意見、そしてブランドの世界観がしっかり合致することを選ぶべきだと思っています。

 「CRAFT X」の場合、XはNextのXで、次のクラフトビールの魅力を幅広い人に伝えていくためのブランドなんです。なので、あまりマニアックな意見ばかり反映すると、ブランドの意義がブレてくる。当然、こういう方向ならこの香りだとか、にごるべきだとか、職人さんの思いとこだわりも欠かせません。意見をすべてテーブルに出したところから、何をすべきかの議論を通して策をすり合わせ、一緒に決めていっています。

つくり手の思いやこだわりをストーリーとして語りきる

――日本にも素敵なブランドはたくさんありますが、確かに自分たちの信念を伝えきれているブランドは多くはない印象があります。そこを超えられると、強いブランドになれるのではと思うのですが、テレビCMで一斉に伝播できた頃と違って、メディアも分散化してメッセージ訴求がますます難しくなっていますよね。

田中:そうですね。実際、日本ではテレビCMでのメッセージ訴求に知見がある人は多いと思いますが、消費者のメディア接触や行動の変化に比べて、広告の打ち出し方はあまり変えられていないのかなと感じます。デジタルが当たり前になった世の中で、効果的で洗練された伝え方がなかなか確立しにくく、進化が速いのでベストプラクティスもどんどん移り変わり、事例をマネしても二番煎じになってしまう。強い信念のある会社やブランドは多いと思うので、意思決定を早くしながら、新しい伝え方を模索することが大事だと思います。

 僕らもベストプラクティスは把握しつつ、どんどん新しい方法を試していきたい。今後はたとえばリアルタイムで感想を吸い上げるとか、それがプロダクトにどう活かされたかを効果的に伝えて、「関わってよかった」と思ってもらえる仕組みづくりなどにも取り組みたいです。

――では、信念のあるブランドが健全に発展していくためのアドバイスをいただけますか?

長谷川:僕らもまだ第一弾を立ち上げたばかりで、どういう道があるかを証明していく段階なので、偉そうなことは言えません。ただ個人的には、そもそも「ブランドとは何だ?」という部分から、もっと自由でいいと思っています。

 ブランドは、マーケティング活動を通して消費者が感じたことや行動したことの蓄積でつくられます。それを、どんな意図をもって積み上げたいのかというところに戦略がある。思い通りにいったりいかなかったり、それを経てまたチューニングして、対話しながらできあがるものだと考えると、必ずしも信念や哲学が全面に出ているブランドがよいブランドというわけではないと思います。ブランドのちょっと頼りない部分を、皆でわいわい関与してつくりあげていくのも素敵だし、言語化された思想がなくても愚直に極めた品質にファンがつくのも素敵です。

 ただ僕らとしては、モノづくりをされている方の思いやこだわりをストーリーとして語りきって、その上で支持してもらうことを大事にしたい。それが僕らが発信するブランドの決めごとであり、目指す世界観なので、僕らならではのやり方でそれを確立し、日本から世界に打ち出していきたいと思っています。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/05/25 13:00 https://markezine.jp/article/detail/33426

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