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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

「ブランドはもっと自由でいい」 テクノロジー×コミュニティで日本のモノづくりを盛り上げる

モノづくりのPDCAを回すという発想

――第一弾の「CRAFT X」がブランドサイトのみでの定期購買モデルなので、D2C支援のビジネスという印象もあったのですが、D2Cにフォーカスしたわけではない?

長谷川:まったくないですね。まず、既存のブランドやビジネスを「第三者的に支援する」立場ではありません。モノづくりに秀でた日本中の会社や人とコラボレーションし、どのブランドも新たに開発してMOON-Xの傘の下で世の中に送り出していきます。日本にはあらゆるカテゴリーに優れたつくり手がいますが、得てしてそういう方はつくることに集中されている。モノづくりはとても奥深い領域なので、それが正しいと思うのですが、なかなか発信まで手が回らないこともあります。そこを僕らが役割分担して、一緒に新しい価値をつくっていく構図です。

 ビジネスモデルがどう呼ばれるかも、特に意識していません。僕らにとって重要なのは、まず日本のモノづくりを体現するようなブランドをつくること。そしてテクノロジーを使って消費者と直接つながり、一緒にブランドを育てていくこと。結果として、日本や世界のお客様の生活が楽しくなったり、アップグレードしたりするブランドを提供したいと思っています。

――ちなみに最初がクラフトビールなのは?

長谷川:僕自身が以前、アメリカで飲んだ香り高いIPA(インディア・ペールエール)に衝撃を受けた経験があり、また起業したタイミングでフクロウのマークでおなじみの「常陸野ネストビール」を手掛ける木内酒造さんとのご縁があって、開発に至りました。消費者からのフィードバックを反映しながらどんどん進化させる、いわば“モノづくりのPDCA”の実践に木内洋一社長も強く共感してくださり、ブリュワリーの職人さん方と「CRAFT X」のための新しいレシピを考案していただきました。

 昨年11月のテスト販売時の評価を踏まえて、2月時点の製品は既にレシピがチューニングされているんです。このスピード感で、モノづくりのPDCAを回せること自体が、とてもワクワクすることだと思っています。

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仮説検証を重ねてどれだけスケールできるか

――木内酒造さんとの取り組みは、とてもいい滑り出しなのですね。日本企業では、他社と協業した新規ビジネス参入や、テクノロジーの積極的な活用に二の足を踏むこともあると思います。特に昔ながらの企業だと、スタートアップとのコラボレーションをすんなり受け入れてもらうのは難しいのでは?

長谷川:いい質問ですね。もちろん、動きづらい企業もあると思います。ただ、木内酒造さんはじめ、僕らが話をさせていただいている企業は驚くほどオープンな印象です。特に経営者が、モバイルによって消費者が常時ネット上にいること、時代が変わってきていること自体を肌で感じておられます。ただ、どこから何をしていいのか、現実的な打ち手がわからない。

 僕がモノづくりの姿勢に惹かれた会社に、お問い合わせフォームから連絡を取ることもよくあるのですが、想像以上に興味を持っていただき、初回から経営者の方と話せることがすごく多いんです。とてもありがたいことですね。

――そうなんですね。こういったイノベーティブな事業を立ち上げるには、やはり経営者の課題感や危機感がカギになるんでしょうか?

長谷川:経営者の方に、日本のモノづくりとテクノロジーを掛け合わせること、僕らと組むことに可能性を感じていただけることは確かに大事です。ただ、それはあくまできっかけで、その上で大事なのは僕らがどれだけデジタルマーケティングで発信しきれるか、なんですね。思想と方向性をしっかり確認して実務の段になったら、田中を中心にどれだけ高速でスケールしながらPDCAを回せるかがクリティカルです。

 田中:もちろん簡単ではないですが、それだけやりがいがあります。どういうプラットフォームで何を発信すれば、多くの方に興味を持って購買いただけるか、またフィードバックをいただけるか。前述のように、つくり手の会社さんには現場に足を運んで丹念にヒアリングしますが、消費者に何が響くかの正解はないので、僕らも仮説を立てて検証しながら進めています。

コミュニティ育成には目的意識が必要

――今、コミュニティ育成には多くの企業が関心を寄せていますが、ただ場所を設ければいいわけではなく、ファンとのつながりをどうつくるかが、真摯に向き合っていくべき課題だと感じています。ブランドにも顧客にもプラスになるコミュニティは、どうしたらつくれるのでしょうか?

長谷川:ずばり答えるのは難しいですが、目的意識やミッションがはっきりしているほうがアクティブで、参加している人が価値を感じて続いていきますね。逆に、なんとなくふわっとしているコミュニティだと、必ずどこかで「何のために参加しているんだっけ?」と皆が立ち止まってしまう。「何のためにあるのか」があって初めて、今の状態は理想なのか、ギャップがあるならどう埋めるべきかが見えてくると思います。

 で、僕らの場合は、日本のモノづくりのつくり手、消費者、ブランドの3者がテクノロジーを通して近い距離感で関わり合う姿を想像しています。プロダクトを提示し、フィードバックを受け、プロダクトがまた進化したり多様化したりしていく。その循環がコミュニティで起こると、消費者はもっとハッピーになれるし、つくり手の方もきっとエキサイティングなはずで、経済的なリターンも当然ついてくる。それが理想なので、その形と現状を常に照らし合わせて進めているところです。

――なるほど。そもそも、消費者の側から活発に意見が上がること自体、貴重ですよね。サイレントユーザーで終わらず、声がしっかり上がるブランドにするヒントはあるのでしょうか?

長谷川:確かにかつては、気に入らなければ無言で去る人が特に日本では多かったと思いますが、個人の情報発信が当たり前の時代になって、ベースがずいぶん変わってきているとは感じます。発言することへの抵抗は薄れていますね。ただ、もちろんそこに頼るだけでは十分な意見は得られないので、フィードバックの仕組みには創意工夫が必要ですし、まだまだ試行錯誤しています。

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意見はすべて提示して「何をすべきか」を議論する

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/05/25 13:00 https://markezine.jp/article/detail/33426

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