ライフスタイルと“テレビの構造”がフィットしなくなっている
テレビは広告媒体としての効果が高く、インフラとしての強さがあることは疑いようがない事実ではありますが、昨今の生活者のライフスタイルと“テレビという枠の構造”そのものが、ますますフィットしなくなっているように思います。
まず生活者が、テレビの前で決まった時間に視聴するという体験自体がどんどん古くなってきており、可処分時間のほとんどをスマホで過ごす方が増えています。ネットでは好きな時間に好きな場所で、情報やコンテンツ、動画配信などに接触することができますし、ネットのコンテンツには、テレビにはない多様性があり、居心地の良さすらあります。
今後のメディアプランニングについては、テレビとデジタルでの投資目的も異なりますし、投資対効果についても短中長期視点で捉え方が異なるため、この結果をもって今後のプランニング指針が変化することはありません。引き続きシンプルに、最も多様性を認めるブランドとして、広く深く生活者視点を捉えた広告投資を検討していきたいと思います。

株式会社LIFULL 執行役員
Chief Creative Officer 川嵜鋼平(かわさきこうへい)氏
2017年LIFULL入社。執行役員CCOとして、ブランド戦略、ブランドデザイン、プロダクトデザイン、マーケティング、コミュニケーションデザイン、新規事業、研究開発など、グループ全体のクリエイティブを統括。またクリエイティブ組織の戦略策定・育成・採用など、組織づくりも全体も担う。
テレビの伝播力×インターネットの情報到達力の掛け合わせに期待
インターネット広告は、今回最大の広告メディアとなりましたが、デジタルマーケティングの世界において「効果を数値化し、それをもとに次のアクションを考えられるようになる」という、私が24年前に思い描いていた進化の姿から考えると、まだ道半ばであると思っています。
また現在、この2兆円市場は、インターネット上で事業を行っているいわゆるネット企業が広告主の大半を占めていますが、消費財メーカーなど、オフライン中心に事業を行っている企業でのデジタルマーケティングはまだまだ緒についたばかりで、さらなる拡大が見込まれます。
今回の調査で「物販系ECプラットフォーム広告費」の領域が新たに追加されたのは特筆すべき点です。「物販系ECプラットフォーム広告費」は、今回の定義では楽天の広告事業における「楽天市場」の出店店舗向け広告などが該当します。
独自の試算では、この「物販系ECプラットフォーム広告費」全体の約60%を楽天が占めていると考えています。今後もこの領域における責任あるプレイヤーとして、業界全体のさらなる発展に貢献していきたいと思います。
これらの市場環境や、また技術の発展、オンラインとオフラインを融合させたオムニコマースといった新たな取り組みなどにより、インターネット広告市場は、今後もより一層成長していくものと思います。その中で、テレビの持つマスへの伝播力と、インターネットの情報到達の深さを掛け合わせ、テレビ広告の新たなプランニング手法を確立するなど、業界全体、また楽天としてできることも多くあると考えています。

楽天株式会社 副社長執行役員 CRO 有馬誠(ありままこと)氏
インターネット黎明期の1996年、ヤフーに第一号社員として入社し、その後グーグルの代表取締役を務めるなど日本のインターネット広告の発展を支えた。2017年7月、楽天の副社長執行役員CROに就任。
テレビの媒体としての強さはいまだ揺るがない
ターゲットを絞りやすく、効果の可視化が容易で、PDCAを回しやすい。マスでできなかったことを3拍子揃えて叶えてしまうデジタルの領域に企業が予算を多く投じるようになっていったのは必然の流れだと思います。予算がかかる割に効果が見えにくく、一度出稿してしまうとクリエイティブもなかなか変えられないテレビCMや新聞広告にはいまや踏み切るのに勇気が要る。そう思っている担当者は多いと思いますし、立場に関わらずそうあるべきだと思っています。
しかし、効果が見えないことと効果がないことはイコールではありません。効果が見えなかったとしても、効いていると感じられる施策があります。それはどの現場の方も経験があるのではないでしょうか。たとえマスでも、むしろマスだからこそ、「このコミュニケーションが刺さるはずだ」というマーケターとしての勘とか自信とか覚悟というものが大切だというのは、これまでもこれからも変わらないのではないか、というのが短いキャリアなりに出した考えです。
それにテレビもインターネット結線機器の普及が進み、効果の可視化はだいぶしやすくなってきました。リーチの効率を考えたとき、テレビの媒体としての強さはいまだ揺るがないと思っています。テレビ局に勤めている分甘くなってしまっているのかもしれませんが、もう少し可視化や分析が進めば「やっぱりテレビCM大事だね」とテレビ広告費がデジタル広告費をまた上回る日が来る気がしています。

株式会社WOWOW マーケティング局宣伝部
リーダー 黒澤優介(くろさわゆうすけ)氏
2013年に新卒でWOWOWへ入社。制作局スポーツ部で3年間番組制作に携わったのち、マーケティング局で営業部、宣伝部、デジタルマーケティング部を経て現在は再び宣伝部。デジタル広告を担当。