※本記事は、2020年5月25日刊行の定期誌『MarkeZine』53号に掲載したものです。
Eコマースの台頭などを理由に苦戦を強いられてる店舗リテール。米国では大手百貨店やラグジュアリーブランドの店舗閉鎖ニュースが相次いでいる。
CoreSight Researchのデータ(2019年12月13日)によると、2019年米国における小売店舗の閉鎖件数は9,302件と前年の5,844件を大きく上回ったことが判明。2010年頃から続く一連の店舗リテール閉鎖トレンドには「Retail Apocalypse(リテールの終焉)」という名称が付けられ、連日リテールメディアやニュースメディアで話題となっている。
このようなデータを見ると、本当に「リテールの終焉」がやって来るのではないかと不安になり、店舗リテールの未来を悲観してしまうかもしれない。
しかしこのような状況下でも、好調の店舗リテールが存在するのも事実だ。なぜこのような差異が生まれるのか。好調の店舗リテールに見られる傾向の1つが消費者の環境意識の高まりを理解し、「サステナブル(持続可能)」や「エシカル(倫理的)」といったキーワードを軸にした取り組みを実施していることだ。
今回は英国の事例を中心に、消費者意識の変化とそれに呼応する店舗リテールの取り組みの最新動向をお伝えしたい。
エシカル支出が過去最高に
2019年12月末、英Co-opが発表したレポート「Twenty Years of Ethical Consumerism」では、1999〜2018年の同国におけるエシカル支出を比較・分析している。
同レポートで明らかになったのは、英国におけるエシカル支出は1999年の112億ポンド(約1兆6,000億円)から411億ポンド(約5兆8,700億円)と4倍近く伸び、過去最高になったということだ。
「エシカル支出」とは、「エシカル食品・飲料」「グリーンホーム」「エコトラベル」「エシカル・パーソナルケア製品」「コミュニティ&慈善活動」に対して行われた支出のこと。この中で最大だったのはエシカル食品・飲料で、その金額は119億ポンド(約1兆7,000億円)に上った。
それぞれのカテゴリはさらに細かいサブカテゴリに分けられる。たとえばエシカル食品・飲料を構成するサブカテゴリには「オーガニック」「フェアトレード」「レインフォレスト・アライアンス認証製品」などがある。
その中で一番支出が多いのは、レインフォレスト・アライアンス認証製品に対するもの。2018年時点における支出額は32億4,300万ポンド(約4,634億円)で、2017年の29億5,500万ポンド(約4,222億円)からおよそ10%増加した。
レインフォレスト・アライアンスとはニューヨークとオランダを本拠地とし、世界60ヵ国以上で活動する環境NGO。農産物や木材の生産において、持続可能な方法が用いられているかどうかをチェックし、一定の基準を満たす製品に認証シールを与えている。