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「溜めるため」から「みんなが使うため」へ―― ライオンがマクロミルと進めるデータ活用プロジェクト

 自社が保有する様々な生活者データ、ECサイトやアプリなどから集積されるログデータなど、企業には膨大な量のデータが集まっている一方で、十分に活用できていない、何から着手すれば良いかわからないと悩む声も聞こえてくる。このような課題に応えるべく、マクロミルではデータ活用コンサルティングサービス「Market data Analytics Guide(略称:MAG/マグ)」を開始し、企業のデータ活用推進を支援している。本記事では、サービス誕生の背景や、クライアントに対してどのようなサポートを提供しているのかについて、現在共にDMP開発に取り組む、ライオンの比留間氏とマクロミルの瀬川氏に話をうかがった。

企業とデータの間に入り、データ活用を支援

――はじめに自己紹介をお願いします。

比留間:ライオンの比留間です。私の業務領域としては大きく2つ。ライオンのオウンドメディア「Lidea(リディア)」の運営と、データマネジメントプラットフォーム(以下、DMP)の開発を行っています。得られたデータから生活者の生活様式やインサイトをどう抽出するか、どのようにマーケティングアクティビティに活用していくのかを考え、データを“生きた状態”にするまでが担当です。

瀬川:私はクライアント様のデータ活用支援として、データの取得から蓄積、その後の活用・分析、運用までを統合的に支援する新事業「Market data Analytics Guide(略称:MAG/マグ)」を統括しています。現在はメンバーと共に、ライオンさんや複数のクライアント様のプロジェクトに入らせてもらっています。

――では早速、ライオンさんのデータ活用推進の背景をお聞かせください。

比留間:お客様が、何を、どのような目的で購入するのか、そしてその人はどんな属性をもっているのか、アンケートでは出てこない深いインサイトについてデータを通じて把握し、商品やコミュニケーションに活かすことを目指してきました。一人ひとりの生活スタイルを深く知ることで、我々のプロダクトがどう寄与できるのかが見えてくると考えています。

 こうした考え方に基づき、弊社は2014年に「Lidea」を開発し、同時期にDMPを導入しています。カスタマージャーニーやインサイトをデータから導き出すことを構想していたものの、当時のプラットフォームでは難しいこともあったようです。私が入社した2018年には、DMPの再開発プロジェクトが立ち上がっており、同時に「Lidea」の大幅リニューアルも行われました。

ライオン株式会社 ビジネス開発センター エクスペリエンスデザイン デジタルコミュニケーション開発チーム ディレクター 比留間 徹氏
ライオン株式会社 ビジネス開発センター
エクスペリエンスデザイン デジタルコミュニケーション開発チーム ディレクター 比留間 徹氏

――再開発はどのように進んでいったのでしょうか。

比留間:DMP基盤の再構築を進め、良いものができたと感じたのですが、実際にデータを入れたり、活用の下準備を始めた段階で、思うようなパフォーマンスを出せない部分が見つかりました。データを“使うため”のDMP開発になっていなかったのだと思います。

 現場で起こったある課題を解決するために、マクロミルさんにトラブルシューティング的に入ってもらったのが、取り組みを共にするきっかけでした。その後プロジェクトリードとして加わってもらうことになり、データ分析の手法や分析するためのアイデアなど、クリエイティブな部分もお願いするようになりました。

データを溜めるだけではなく「使う」ための改善を提案

――マクロミルさんが「MAG」を開始された背景についても教えてください。

瀬川:データ分析やデータ活用といったサービスはこれまでも提供してまいりましたが、“データを販売するまで”が弊社の主力事業でした。しかし、多くの企業において昨今、保有するデータが増え、データ活用について課題などを抱えるようになり、弊社のクライアント様からも「データの効果的な使い方を教えてほしい」「マクロミルが培ってきた分析・活用のノウハウを知りたい」という声を多くいただくようになりました。そこでデータコンサルティング領域のケイパビリティを強化すべく、「MAG」として正式にサービス化することを決意しました。

「MAG」のサービスイメージ図
「MAG」のサービスイメージ図

瀬川:はじめにライオンさんからお声がけいただいたときも、データを「溜める」だけでなく、「使う」という側面で見ると、もっとできることがあると感じました。さらに言えば、プラットフォームの設計がユーザーフレンドリーになり切っていない部分も見えてきたため、ぜひ改善のお手伝いをさせていただきたいとお伝えしたのです。

株式会社マクロミル 統合データ事業本部 データマネジメントプラットフォーム部長 瀬川順弘氏
株式会社マクロミル 統合データ事業本部
データマネジメントプラットフォーム部長 瀬川順弘氏

比留間:「企業」とその中にある「データ」の中間に入っていただいているイメージなのですが、それを事業としてやっている会社はあまり見かけない気がします。特殊な立ち位置ですよね。

瀬川:確かにマーケティングデータとなると、テクノロジー側からアプローチするか、コンサルティングのような上流側からいくかのどちらかで、中間のポジションは空いているかもしれません。さらに、実際にデータを使った現場の業務を一緒に進めるとなると、請け負うノウハウをもっている企業はもっと少なくなる。アカデミックな領域での議論は深まっている一方で、ビジネスの実情にあわせてデータをハンドリングできる人材があまり増えていないように感じます。

「みんな」が使えないと意味がない。オープン化にこだわる

――具体的にはどのような取り組みをしているのでしょうか。

比留間:重要視してきたのは「オープン化」です。データから何を読み解くかは個人に依存する部分が大きいため、専門知識をもった一部の社員だけが分析できれば良いのではなく、プロダクトやお客様に向き合っている一人ひとりが、データに触れ、解釈できるような環境づくりを進めています。まさに「使うため」の開発ですね

瀬川:比留間さんが「みんなが使えないとだめだ」ということを、繰り返し話されていたのが印象的でした。それを目指したくても諦めてしまっているケースも多いと思います。本気で全社でデータ活用できるよう取り組んでいるのは、ライオンさんの特長であり、すごいところだと思います。

比留間:汎用化されたデータで可能な限り柔軟な分析ができるよう進めている一方で、社内からは、たとえば「洗濯用の粉末洗剤を使っている人が、液体洗剤にスイッチするきっかけを突き止めたい」のような、高度な分析のオーダーがくることもあります。そのような場合についても、マクロミルさんに要件定義から入ってもらっています。

データ活用の壁を乗り越えてきた経験が、支援に活きている

――取り組みを開始してから約半年とのことですが、日々の業務はどのように進めているのでしょうか。

瀬川:週次でプロジェクトごとに分科会をして、進捗の報告や議論をしながら進めています。新型コロナウィルスの影響によって在宅ワークになったときはどうなることかと思いましたが、オンライン会議なども活用してスムーズに連携させてもらっています。

比留間:こちらが考えていることをきちんと理解いただいているからこそ、コミュニケーション齟齬が少なくストレスがなく進められているのでしょうね。戦略立案に強いだけでなく、実務にも強く、そのバランスが良いので、展開スピードを上げられていると考えています。

瀬川:これまでに多数データに関する案件を扱ってきた経験や、社内でクライアントの皆さんと同じような問題を抱え、苦しみを味わったことがあるからこそ、意図をくみ取れるところがあるのかもしれません。長年データと向き合い、どう使っていくかを仕事としてやってきたことが、活きているのだと思います。

比留間:DMPについては今年7月に、プロジェクトメンバー以外にもオープン化しました。それに先んじてアドホックな分析はいくつか手掛けていたのですが、データを軸に、今までは調査をしてみないとわからなかった事柄や、推理的なクラスタリングとその市場のボリュームが把握できるようになったのは大きな変化だったと思います。

 定性調査のようなインタラクティブ性がない代わりに、ボリュームやスピード感があるのがデータの良い点だと思うので、これからさらに大きな変化が起きてくることに期待しています。社内に展開後、社員から多くの反響や質問がきているので、今後はそれに対応しながら、次のフェーズへと進めていく予定です。

組織にデータ分析を浸透させるためのポイントは?

――最後に、DMP開発、そしてデータ活用に関する今後の展望をお話いただけますか。また、ここまでの経験を踏まえて、データ活用を推進していくためのポイントについても教えてください。

比留間:今は製品Aを買っている人、製品Bを買っている人の支出傾向や趣味嗜好、価値観の違いなど、製品ごとの差を見ていく仕様になっているのですが、より深く分析できる機能をアドオンしていきたいと思っています。

 たとえば、“ずっとA製品のみ買っている人”と、“最近買い始めた人”、“まったく買っていない人”、それぞれのインサイトにどのような違いがあるかがわかってくると、購入傾向が見えてきて、ブランドスイッチしてもらうために、どんな機能をどんなトンマナで訴求すべきかが見えてきますよね。最終的には誰を優先してコミュニケーションを取っていくべきか、ターゲット戦略に行き着くと考えています。こういった分析を誰でも簡単にできるようにすることが改めて大事ですね。

瀬川:何を実現したいのかを明確にしつつ、実現していくための方法について、引き続きお話しさせていただいているところです。

 データ会社やシステム会社は、つい「なんでもできます」と言ってしまいがちですが、ときには機能を制限してでも、ニーズに沿った使いやすいものを作り込むことが大切だと考えています。万人に受けるものを作ろうとして、結局誰にも使われないというのは、避けなければなりません。

比留間:そうですね。使い勝手が良く、有用性が高いものを検討しているのですが、そのあたりの兼ね合いは非常に難しいと思います。

 これまでの経験から言えることは、何に困っているのか課題を明確化しておくことが成功のポイントだということです。それが開発のオブジェクトになるので、ブレてはいけません。また、課題感を社内で共有しておいて、実際に使ってもらったときに「解決できている」と感じてもらえるようにすることが必要だと実感しています。

瀬川:弊社のサービス「MAG」では顧客データ、購買データ、行動ログはもちろん、IoTの実績も増えています。マーケティング業務に携わられていらっしゃる方々も、日々業務の中で取り扱うデータの種類は拡大しているのではないでしょうか。漠然とデータを活用したいと考えている企業様、何から手をつければわからないという企業様の相談も受け付けておりますので、その際はご連絡いただければと思います。

――本日はありがとうございました。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/09/07 10:00 https://markezine.jp/article/detail/34065