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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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「ただのデジタル化」が受けないワケ ウエディングパーク、LIFULLの実践に見る消費者インサイト


DX化が起きても根本的なアプローチは変わらない

助川:ウエディングパークの助川です。当社は、「21世紀を代表するブライダル会社を創る」というビジョンで、国内外の結婚式場やウエディングドレスなど、5つのテーマで口コミメディアを運営しています。今日は、国内結婚式場の口コミサイト「ウエディングパーク」について紹介したいと思います。

ウエディングパーク メディア開発本部 マーケティングリード 助川健太郎氏
ウエディングパーク メディア開発本部 マーケティングリード 助川健太郎氏
(写真:助川氏提供)

助川:当メディアは、全国で5,000以上の結婚式場の検索データベースと検索機能を有する、カップルと式場のマッチングサービスで、式場から掲載料をいただくビジネスモデルです。サイト内にコンバージョンポイントは存在せず、最終的には式場の公式ホームページに誘導。式場の自社マーケティング強化につなげる特徴をもっています。

 結婚式というライフイベントに関しては、

  • レガシーな構造で専門性が高く、式場とカップルで情報の非対称があるなど、閉鎖的な側面がある
  • リードタイムが長く、非リピートのビジネスモデルである

 という特性があり、なかなか変化が起きづらい業界構造でした。ところがコロナ禍で、変容が求められたんです。そこで私たちはまず、(1)結婚式に関する悩みを持つカップルに向けた応援コンテンツの作成、(2)各式場のコロナの対策状況がわかる情報発信を行いました。

 (1)の応援コンテンツは、事業上のKPIとは直結せず、メディアとして結婚式をどのように考えているかを示し、悩むカップルの後押しをするための取り組みと考えて進めました。(2)は、綺麗なイメージで売る式場ビジネスに対し、コロナという言葉をページ上部に持ってくることに対する懸念もありましたが、実際に「結婚式 コロナ」の検索数は一定数あるのと、ヒートマップでも「式場のコロナ対策を気にしているカップルが多い」ことがわかりました。

 式場向けには、オンラインで接客できるツールを開発中で、デジタルシフトを後押ししています。これまでは、当社のサービスや式場の公式サイト、SNS等から実際に来館し打ち合わせに進むプロセスが一般的でしたが、オンライン相談を要所要所に入れることで、非対面ニーズに応えられるようにしたのです。ユーザーアンケートでもオンラインサービスの利用意向は9割を超えており、この流れは当分続くと思われます。

タップで拡大
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助川:そのほか、双方に向けたマッチング施策として、オンライン相談を行っている式場の特集ページ開設や、Instagramのオンラインイベントを試験的に行うなど、従来のサービス以外でのタッチポイントを作り、モチベーションを高める仕組みを模索していきました。

 これまでの取り組みを通して得た結論は、今回のコロナで、確かに形式の変化やDX化は起きているが、まったく新しい価値観が生まれているとは考えにくいということです。つまりインサイトが変化することがあっても、根本的なアプローチは変わらない。ただ、経験や知見を生かしながら時代の変化に合わせ、手法をアップデートすることは必要、という認識です。

大松:インサイトはどのように捉えていましたか?

助川:当社では、インサイトの変化を捉えやすいように定点観測を実施し、ダッシュボードで見える化を進めています。例を挙げると、お客様のページ閲覧行動から式場の好みや予算など、重視するポイントを捉えやすくする仕組み作りを行い、インサイトの発見に努めています。具体的には、志向性ごとにグルーピングして施策を分けたり、調査サービスを併用したり、ソーシャルリスニングなども活用しながら、検証しているイメージです。検証に当たっては、必ず仮説を立てることが必要なのですが、逆に検証結果を基にインサイトを把握するアプローチもありだと考えています。

今、消費者が本当に望んでいること

大松:ありがとうございます。樋口さん、ウエディングパークさんの取り組みに対して、疑問や共感する部分はございますか?

樋口:当社でもインサイトの発掘に向け、調査を展開しているのですが、この結果をそのままマーケティングコミュニケーションに使っても上手くいかないこともあります。ダッシュボードで見えたことを、どのように落とし込んでいるのかお聞きしたいです。

助川:ダッシュボード化できるのは、あくまでこちら側で定義した行動パターンなので、そもそも背後にあるインサイトまでたどり着かないこともあります。当社では、たとえば新しい「式場に対するこだわり軸」が見えてきたら、そのクリエイティブを作って誘導を強化し、結果を検証したりしています。お客様の本音をあぶり出すようなところへは、中々アプローチできていないのが正直なところです。

大松:インサイトの参考として、当社のニューノーマルプラネットをご紹介します。

 今市場には「ソーシャルエクスキューズ消費」という、ちょっとおもしろい傾向が見えてきています。これは、社会的な責任=感染対策を果たすことによって、「ちょっとわがままに自分の欲求を満たしたい」という欲求のこと。全国の15~79歳の男女600名のうち、これに共感したのは41.5%でした。

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大松:具体例を挙げると、「仲間とウォーキングをする時、コースを変えて歩く」というものがあります。本当は、仲間と話しながらウォーキングしたいけどそれができないので、マナーを守る「盾」を作りながら、「仲間とウォーキングする」という欲求を満たしている。この「ソーシャルエクスキューズ消費」は、助川さんのウエディング業界に関わってくるところだと思います。

 もう1つご紹介したいのが、「ハードルを超えたらノーマル消費」。これは「今まで経験したことがないけれど、一歩踏み出して経験したら意外と楽しかった」というもので、具体例としては「面倒だと思っていたフィットネスを、自粛期間中にオンラインでやってみたらハマってしまい、今はオンラインフィットネスに夢中」といったニーズが考えられます。

 このように、「責任を果たすので、ちょっとわがままだけど自分の欲望を満たしたい」「経験したら意外と楽しかった」というインサイトを満たすことで、様々な取り組みができるのではないかと思います。

樋口:「ソーシャルエクスキューズ消費」は住まい探しにおいても社会的制約があるけれど、ここは楽しめる、といったメッセージを打ち出せると、「LIFULLはわかってくれている」という評価につながりそうです。また「ハードルを超えたらノーマル消費」は、本日ご紹介した住まいの窓口のオンライン相談がまさにこのインサイトなので、最初のハードルを越えられるようにインサイトを捉えながら推進していきたいです。

助川:本当にそうですね。変化がどういう風に推移しているか、インサイトを詳細に見る必要がありますね。今日いただいた情報を基に、さらに深く、変化とインサイトをみていきたいと思います。

大松:ありがとうございました。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/10/30 12:05 https://markezine.jp/article/detail/34308

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