大きなフィールドで、戦う武器を授かった
――大企業で実績を積み重ねる中、なぜオプトデジタルの代表取締役に就任されたのでしょうか。
約2,000万人のお客様を相手に、損保ジャパンで自由にチャレンジをさせていただけたことは大変ありがたかったのですが、もっと広いフィールドで仕事をしたい気持ちが募っていたときに、お話がありました。考えてみると、損保ジャパンで新しいサービスを打ち出せたのは、デジタルホールディングスのメンバーの協力があったから。ちょうど、一企業でのデジタルシフトだけではなく、世の中の企業の顧客接点を自身の力で変革していきたいと考えていたところだったので、オプトデジタルという戦う武器を授けられたような感覚でした。
オプトの子会社として設立されたオプトデジタルは、企業のデジタルシフトをシステム開発と独自のSaaSサービスから支援する企業です。デジタルシフトはあらゆる企業の経営テーマとなっていますが、金融機関などの大企業が業務システムを開発したいと思っても、柔軟に対応できる開発会社は意外と少ないのです。昨今、DX支援事業を行う会社が多く立ち上がっていますが、私たちの強みは、大企業の組織やレガシーなオペレーションを理解した支援ができること。そもそもDXとは泥臭いもので、華やかさはありません。現場を知らずに、上っ面のマーケティングツールを提供するだけのDXは、本当のDXと言えないでしょう。ここに、現場に身を置き大企業でDXを実現してきた私が、オプトデジタルに参画する意義があります。
現在33歳で社長職は初めてですが、社長でもプロジェクト責任者でも、リーダーの仕事は「決断すること」だと考えています。新規事業を動かしていた頃と仕事の内容が大きく変わったとは思いません。ただ、一つ違うのは自分の決断は自社の社員の雇用、その家族、ステークホルダーにダイレクトに影響しますから、その責任の重さは強く感じています。
大企業が起こすイノベーションは、社会を一気に変える
――ターニングポイントだと感じた出来事を、教えてください。
やはり、損保ジャパンで実績をあげたことです。通信業界だけでなく、保険業界でも戦えるのだと実感して、自信を持てました。大企業で働いている方には「他の業界も経験をしてみては?」と伝えたいですね。そもそもビジネスにおける基礎的なフレームワークの考え方や企画の進め方が身についていて、好奇心が強い人は、どの業界でもやっていけると思います。一方で、IT系の業界にいる方には、レガシー企業を一度経験してみてほしいです。私も、ITとレガシーが共存するドコモと、さらにレガシーな保険業界で、1回の手続きで30枚もの書類が必要なオペレーションや、FAXが業務の中核となっている状況を見てきたことで、視野が広がりましたし、DXは一筋縄ではいかないという今の自身の考え方の軸が形成されました。現場経験も、すべてが今の自分に活きています。
また、世の中にイノベーションを起こすには「スタートアップで新しいサービスを立ち上げる」のも1つの方法ですが、相対的なユーザーの規模や影響力は小さくなりがちです。大企業でのプロジェクトの立ち上げは、スタートアップで新しいサービスを立ち上げるのとは異なる、何重もの稟議や社内調整などの独特のしんどさがありますが、成功したときの影響力や横展開の規模はスピードが違います。自身が作ったサービスが数十万人のユーザーに使われることなんてそうそうないですからね。私にとってはそれがやりがいでしたし、ぜひ若い方には大企業の中で新しいことに挑戦し、一気に世の中を変える方法も検討してほしいです。最近の大企業は、デジタル系人材の中途採用や、DX関係の新しい部署の設立などが盛んですから、今はチャンスではないでしょうか。逆に私は、大企業のフィールドやアセットをうまく活用させてもらって流れを起こし、やりたいことをやり切ることが、一番の近道だと思っています。
