KDDIのデータドリブン経営を支援するARISE analytics
はじめのスピーカーは、KDDIの山本氏。同社の事業戦略と、ARISE analyticsとのパートナーシップについて紹介した。
KDDIでは、2020年にスタートした5Gを前提に、イノベーションの創出や従来の通信事業とライフデザインの融合、そしてグローバル事業のさらなる拡大に加え、auペイなどの金融事業に注力。それらを支えるビッグデータの活用に関しても、事業戦略の一つとして位置付けている。
そして、KDDIがビッグデータ活用で目指す先は、顧客体験価値の最大化とデータ駆動型社会の実現。それを支援するために、2017年に設立されたのがARISE analyticsだ。同社は、KDDIとアクセンチュアのジョイントベンチャーで、300名を超えるデータサイエンティストが所属し、マーケティングやIoT領域でのデータ分析に強みを持ち、企業のDX支援を行っている。
また、携帯電話のGPS位置情報データを用いた分析ツール、KDDI Location Analyzerの開発にも関わった。最近では、携帯電話のGPS位置情報データを用いて、コロナ禍における人流解析などの分析レポートなども手掛けている。
ARISE analyticsの特徴は、AIによるデータ分析とコンサルティングに留まらず、現場と一体となって企業課題を解決に導くこと。KDDIとともに培ってきた知見やアセットを、同社のグループ会社やパートナー企業へ展開するフェーズまで成長している。その成功事例の一つが、UQコミュニケーションズだ。
顧客満足度につながる因子をAIで可視化する
続いて、UQコミュニケーションズの水谷氏が、ARISE analyticsとともに推進してきた同社のAIマーケティングを紹介した。
2018年、UQコミュニケーションズはデータ活用組織の立ち上げに際し、ARISE analyticsとパートナーシップを結んだ。ARISE analyticsは、施策高度化、顧客理解促進、データ活用環境の整備、AI活用人材の育成という4つの領域から、UQコミュニケーションズを支援。
マーケティングのAI活用となると、データ分析環境の整理と予測モデルの構築がイメージされがちだが、水谷氏は「まず施策を実行し、そのフィードバックデータをAIに学習させる、フィードバックループの構築に価値があった」と話す。そして、それを支えるAI人材育成が、非常に有効だったと振り返った。
とはいえ、部署の立ち上げ当時、社内からは「何をするチームなのだろう」との反応が多かった。そこで水谷氏たちは、既存の営業施策の効率化にフォーカスし、いち早く成果を出す「クイックウィン」を心がけたという。
「AI活用にあたっては、まずその利便性を社内に浸透させることが大事です。また、当社の社長をプロジェクトオーナーと位置付け、経営層からのコミットをもらいながら、定期的に成果を発信していきました」(水谷氏)
UQのマーケティングゴールは、顧客の満足度を高め、継続利用を実現すること。「お客様が私たちのサービスのどこに満足され、新規契約や継続を選ばれるのか。その主要な因子を、AIで可視化したいと考えたのです」と水谷氏は語った。