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NPS®ベースのPDCAサイクルで成功した楽天トラベル、カギは体制づくりとシステムにあり

施策実行を実現していく仕組み

 施策実行は担当者の推進力や熱量に依存しがちだが、「楽天トラベル全体のNPS活動を推進する立場として、各担当者の状況を把握し、サポートできることがないか考えている」という。その一環として「品質向上委員会」を設けて毎月運営している。これはNPS担当者と経営層が参加する定例会議で、各担当者から調査で判明した課題や改善進捗に関して報告することで、社内横断的に課題が認識され、部署を超えて改善施策を話し合う場となっている。

 担当者制と同様に楽天トラベルのユニークな点といえるが、山本氏は「調査を導入して、担当者をつけて、”あとはやってね”というのは突き放しになってしまいます。各担当者が孤軍奮闘にならないよう、経営層を含めて社内に顧客意見を認知させ、NPS活動の支援を得る機会を設けることは重要と考えています」と明かす。

 また、顧客意見に基づきサービス改善したものをユーザーに紹介する「お客さまの声をかたちに」ページも設けている。この狙いについて山本氏は、「新しい機能をリリースしても、利用してもらわないことには、効果検証やその先の改善ができず非常にもったいない。施策を実行した後は、お客さまに改善した内容をしっかり伝えていく重要性を実感している」と説明する。

国内宿泊のホテル検索機能はNPS調査をきっかけに実現

 NPS調査をきっかけに実現した事例の1つが、国内宿泊のホテル検索機能だ。調査から「宿泊施設の種類別検索がしたい」「喫煙部屋でも検索したい」などの要望が顕在化した。前者の要望に対しては、多様化する宿泊施設の種類を定義し直した上で、全国の施設を分類し、絞り込み条件に追加した。後者の喫煙の検索は以前から提供していたが、画面が分かりにくいことが原因と判断し、検索画面のUIを改修した。これらの結果、絞り込み検索の利用率がPCとモバイル共に向上し、ユーザーからは「待ってました」などの声が寄せられたという。

 このような活動を通じて得られたことはいくつかあるという。まず、顧客ロイヤルティが着実にアップした。また、社内でも”事業のポジティブな変化を実感している”という社員の比率が増えているという。「全社員が、顧客志向でありたいという理想を掲げる中で、NPS活動がその具体的な道筋となってきているようです」と山本氏はまとめた。

パートナーを巻き込んだNPS活動を展開

 楽天トラベルは旅行者であるエンドユーザーだけではなく、宿泊施設やレンタカーなどの事業者(パートナー)を巻き込んだNPS活動も実践している。「予約前から旅行後まで、トータルの体験価値を高めていきたい。そのため、現地でサービスを提供してくださる全国のパートナー様との連携は必須です」と山本氏はいう。

 パートナーを対象にNPSの勉強会やワークショップを開催しているほか、宿泊施設などに関する顧客意見があれば共有し、連携を進めている。

 実際にパートナーと共同で新しいことに取り組んだ例も出てきている。その1つが、あるレンタカー事業者と企画した「クイックチェックインサービス」だ。NPS調査で車を借りて出発するまでにかかる時間が長いという不満が上がってきたことをふまえ、受付で説明していた重要事項を紙にまとめ、事前に確認して承諾した旨サインを入れて持参することを推奨し、店舗での待ち時間を短縮できるようにした。

 「楽天トラベルとパートナーの事業者がお客さまにより快適な体験を提供したいという想いで議論を重ねた結果、業界で当たり前に続いていたオペレーションを抜本的に見直す施策が実現しました」と山本氏。パートナーとの連携が新しいサービスを生んだ例といえそうだ。

パートナーも大切な顧客

 もちろん、楽天トラベルにとってはパートナーも大切な顧客であることから、彼らに楽天トラベルを評価してもらうNPS調査も実施しているという。楽天トラベル上の販売促進企画、精算管理、営業サポートなどに関して調査し、こちらも担当者を設置して日々改善活動をしているとのことだ。

 旅行業界はコロナ禍の打撃を受けた業界の1つだが、その影響下でもNPS調査の活用は進んでいる。「調査を通じて、今ユーザーが何を感じているのかを理解し、社内はもちろん、パートナーの方々にも情報を届けていきたいと考えています」と山本氏は続けた。

 実際に「どのような感染対策があれば安心ですか?」「感染状況が落ち着いたらどのような旅行がしたいですか?」「宿泊施設に応援メッセージをください」などをユーザーに調査し、回答を冊子にして全国のパートナーに届けたところ、「旅行を楽しみに待っている人がたくさんいると知って本当に元気が出ました」「声を参考に受け入れの準備を頑張ろうと思います」などの反響があり、喜ばれたという。

 「NPS調査はサービス改善を目的としていますが、調査を通じて集まったお客さまの声はときに激励にもなることを実感しました」(山本氏)

 今後の展開については、長期的にNPSの活動を続けていきたいと山本氏は語る。「NPSにはネット・プロモーター・“スコア”という意味だけでなく、”システム”というニュアンスも含まれています。”一定のスコアに到達すれば終わり”ではなく、改善サイクルが持続可能となる企業文化を育てあげることが最終的なゴールになります。文化醸成は一朝一夕では実現しません。数年先を見据えた長期的な視点を持ち、社内の成熟度に合わせて段階的にNPS活動を根付かせる仕掛けを行っていけるようこれからも取り組んでいきたいと思います」と締めくくった。

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーライター

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/11/16 10:00 https://markezine.jp/article/detail/34516

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