米国やグローバルにおける広告・マーケティング業界の最新情報をまとめたデジタルインテリジェンス発行の『DI. MAD MAN Report』。そのカットアップ版をお届けする本連載。今回は米国のショッピングモールを占拠し始めたAmazonの真意を紐解く。
※本記事は、2020年10月25日刊行の定期誌『MarkeZine』58号に掲載したものです。
技法1:「フルフィルメント・センター」への投資増大
Amazonの見えざるマーケティング変革として、生まれつつある新概念とその技法を紹介したい。
なんとAmazonが、米国のショッピングモールを「占拠」し始めた。「Whole Foods Market」や「Amazon Go」といった来店を期待する出店ではない。Amazonは地元の顧客宅に出向く関係づくりが資産であり、配達のタイムラグを最短にする「集荷・配送車出発点」として、「フルフィルメント・センター(以下、FC)」をショッピングモール(以下、モール)に設置し、占拠を始めたのだ。
モールの客寄せの旗艦店だった大手百貨店は、「JC.Penney」「Sears」「Lord&Taylor」「Neiman Marcus」「Barneys New York」等の破綻が続く。虫の息で残る「Macy’s」「Nordstrom」や、他の小売店(例:Brooks Brothers,J.Crew等のブランド店)も、大量閉鎖を急ぐ。モールは一気に「空洞化」「ゴーストタウン化」が進んでいる。

Amazonはこの空室が加速する全米のモール経営の最大手に対して、FCとしての入居を数十の拠点単位で「一括契約」を交渉しており、「オセロ返し」が一気展開する様相だ。モールに残っていた小売店の最大の「破壊者・天敵」が、今度は「占領軍」として入居してくるイメージだろう。
AmazonのFCにとって米国のモール進出は好条件だらけである。たとえば数万m2級の広大な敷地であるのに電気などのインフラが常設され、全米の流通動脈である高速道路のインターチェンジ付近に立地する。当然ながら巨大駐車場を常設しており、この上ない配送拠点だ。Amazon効果の影響で、消費者人口が集中する一等地の入居者が決まらぬために「たたき売り」となった。それがAmazonにとってラストワンマイルを迅速化させる好立地として買い上げる好循環(皮肉)だ。
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榮枝 洋文(サカエダ ヒロフミ)
株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
英WPPグループ傘下にて日本の広告会社の中国・香港、そして米国法人CFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。海外経営マネジメントをベースにしたコンサルテーションを行う。日本広告業協会(JAAA)会報誌コラムニスト。著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)。ニューヨーク最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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