膨大なフォロワー数を活かし、若年層へのリーチを
MarkeZine編集部(以下、MZ):今回はセブン‐イレブン・ジャパン(以下、セブン‐イレブン)の販売促進部 統括マネジャーの福島さんに、2020年7月11日のセブン‐イレブンの日に行ったマーケティング事例について伺います。
2020年のセブン‐イレブンの日はTwitterを中心としたキャンペーンを行ったと聞いています。その背景について教えてください。
福島:我々はこれまで、最重要課題であるフランチャイズ加盟店の売上利益を伸ばすべく、店頭での値引きセールやクーポンを活用した割引施策などを行ってきました。
その中でTwitterをはじめとしたデジタル施策も進めていましたが、まだ店頭施策やマス広告の比率が高く、Twitterは店頭のセール告知や新規商品が出る際の告知といった、他の施策を補完する役割を担っている状況でした。
しかし、昨今セブン‐イレブンとして課題と感じているのが、若年層の来店回数の減少です。我々のデータを見ても、他客層よりも高い推移で来店数が減っているのが現状となっています。
そこで、ミレニアルやZ世代に対するアプローチを強化すべく、今回はTwitterを中心に据えたキャンペーンを行うことに決めました。
MZ:デジタルを中心にして若年層にアプローチするというのは理解できたのですが、なぜその中心がTwitterなのでしょうか。
福島:Twitterのフォロワー数が365万を超えており、企業アカウントで見れば上位に入ってくる数字です。しかし、まだそのポテンシャルが活かし切れていないためです。この膨大なフォロワーの皆さまの中にはターゲットとする若年層の方も多く、Twitterの利用者も若年層の方が多い印象があったので、効果的な施策が展開できると考えました。
2つのキャンペーンを同時展開
MZ:では、今回セブン‐イレブンの日に合わせて行ったキャンペーンについて教えてください。
福島:7月11日に2つのキャンペーンを同時に展開しました、1つは、「#フィッシャーズ診断」、もう1つは「#セブンの都市伝説」です。
「#フィッシャーズ診断」に関しては、若年層に人気のYouTuberであるフィッシャーズさんを起用した診断コンテンツを展開しました。フィッシャーズのどのメンバーと似ているかの結果とともにプレゼント抽選が行われるものです。診断コンテンツにすることで、企業目線でなく利用者の方に楽しんでもらえるTwitterならではのキャンペーンにし、会話を生み出せればと考えていました。
今回メインターゲットである若年層は共鳴・共感を求めていると感じており、そのためには若年層と親和性の高いフィッシャーズさんをキャスティングさせていただきました。
MZ:もう1つのキャンペーンはいかがでしょうか。
福島:「#セブンの都市伝説」は、元々Twitter上で起きていたモーメントを活かしたキャンペーンになります。よく「セブン‐イレブンで711円のレシートが出ると何かが起こる」という都市伝説に関する投稿が度々見受けられており、そのモーメントをもとに企画を作りました。
具体的には、TwitterのDMに711円~716円(税込)のレシートを送信していただき、チャットボットを使って自動で抽選を行うキャンペーンになります。711円のレシートが出るといいことがあるということを多くの方に実際に体験いただきたいと思い、当選した方には無料クーポンをプレゼントしていました。
キャンペーンを一過性にしないアカウント運用にシフト
MZ:2つのキャンペーンを成功に導くために、大事にしていたことはありますか。
福島:まず、このキャンぺーンが一過性のものにならないことを意識していました。我々が目指していたのは、キャンペーンを通じてセブン‐イレブンに興味を持っていただき、ファンになっていただくことです。
そのため、7月11日のキャンペーンの後も積極的に情報発信を行いながら、我々の商品やサービスに関してツイートいただいている方の投稿をリツイートしたり、Webサイトに掲載させていただいたりと、お客様と一緒により良いセブン‐イレブンを作っていくためのアカウント運用にシフトしていきました。
実際に公式アカウントからツイートが取り上げられた方の中には「公式デビューできた」など、ポジティブな反応が多く、セブン‐イレブンとの良好な関係が築けています。
MZ:Twitterアカウントを通じて、セブン‐イレブンの商品・サービスをより良いものにするための共創に取り組むようになったんですね。
福島:Twitterアカウントを持っていて良かったと思うのは、フォロワーの多くの方がセブン‐イレブンに対してポジティブな印象を持っているということです。そういった方と双方向でコミュニケーションができるのは非常にありがたいと考えています。
また、最近では、環境問題をはじめSDGsに関わる投稿なども行うようにしています。若い方の中にはこれからの未来を見据えている方も多いので、そこに対して我々がアクションしている姿勢を見せ、双方向でコミュニケーションをとることで一緒により良い社会の実現を目指しています。
クロスメディアでの展開にTwitterは欠かせない
MZ:7月11日は、PayPayとコラボレーションしたチャムスのエコバッグ配布キャンペーンも行っていたと思いますが、これも意図的に行っていたのでしょうか。
福島:意図的にコラボレーションの企画は行っていました。Twitterを中心にはしながらも、あくまで重要なのはクロスメディアでコミュニケーションを展開することです。
チャムスのエコバッグのキャンペーンは、密を避けるため大きな告知は避けていたのですが、Twitterでゲットした方のツイートなどが出てきたことで、予想以上に早く在庫がなくなってしまうくらい話題となりました。
また、当日テレビ番組でも特集が組まれたのですが、番組の内容をツイートする方が多数いらっしゃいました。このように、Twitterがハブとなってテレビや店頭などを行き来する行動が生まれた1日になったと思いますし、様々なチャネルをきっかけにセブン-イレブンに関する会話が生まれたことはとても良かったと考えています。
6月対比で20代の来店回数が10%増加
MZ:Twitterがセブン‐イレブン一色となった7月11日ですが、具体的にどのような成果が生まれたのか教えてください。
福島:Twitter上の数字に関しては、フォロワー数が約7万人増え、施策後のフォロワー解除率も低く、現在もオーガニックで増え続けています。また、7月11日はプロモトレンドを含めると4つのワードが1日でトレンド入りし、過去最高レベルで会話を生み出すことに成功しました。
福島:また、大きな課題として挙げていた若年層の来店に関しても、6月対比で20代の来店回数が10%増加しました。これも、Twitterを通じてセブン‐イレブンに関する本音ベースの声が多くの方に届いたからこそ生まれた結果だと考えています。
MZ:今回の施策を通じて得られた知見・学びはありますか。
福島:まだまだ、様々な使い方がTwitterであればできると感じられたことですね。これまで、360万を超えるフォロワーの方とつながっていながら、そのつながりを活かし切れていませんでした。商品・セールの告知外でも共鳴・共感をキーワードに施策を展開すれば成果も得られることがわかったので、今後もお客様目線のコミュニケーションがTwitter上で展開できればと思います。
お客様の声をもっとTwitterで拾いたい
MZ:最後に今後の展望を教えてください。
福島:今後はお客様の声を拾う場としてTwitterをもっと活用していきたいと考えています。企業は独善的になりがちで、自社が出している商品やサービスがお客様のためになっているのかわからぬまま進んでしまうこともあります。そうならぬよう、我々は加盟店やお客様の声に意識的に耳を傾けるようにしています。そのためのプラットフォームとしてTwitterを活用できればと考えています。
また、環境や健康にまつわる問題解決も、フォロワーの皆さまと一緒に取り組めたらと考えています。たとえば、エコバッグを配ることで、買い物の際にエコバッグを持っていくという啓発となり、それが廃プラスチックにつながります。そのような活動についてもTwitterアカウントを通じて紹介しながら、よりよい社会作りのツールとして機能させたいです。