※本記事は、2020年11月25日刊行の定期誌『MarkeZine』59号に掲載したものです。
刺激的なメンバーに惹かれて創業期のマクロミルへ
株式会社マクロミル 取締役 兼 代表執行役社長 グローバルCEO
佐々木 徹(ささき・とおる)氏
中央大学商学部卒業。株式会社一広、株式会社エービーシー・マートを経て、2003年6月、株式会社マクロミル入社。リサーチディレクション、営業などの事業部門での経験、経営統合におけるPMI業務経験を経て、2010年に執行役員ネットリサーチ事業本部長に就任。2013年に上席執行役員、2015年10月より執行役、2018年9月より代表執行役副社長、2020年9月に代表執行役社長グローバルCEOに就任。
――御社は2000年の創業以来、ネットリサーチという新興領域をけん引し、現在では「グローバル・デジタル・リサーチ・カンパニー」になるというビジョンを掲げて世界で事業を展開されています。また、昨年の中期経営計画発表以来、大きなニュースが続いていますね。
そうですね。黎明期はネットリサーチの新規性が高く、顧客企業に受け入れられるまでに数年を要しましたが、今ではマーケティング活動に欠かせない手段になり、さらにより上流工程からの支援のニーズも高まっています。当社としてはその変化をしっかり捉え、顧客に一歩先んじた提案や価値提供ができるよう、今まで以上にスピード感をもって取り組んでいくつもりです。
――佐々木さんは2003年に入社され、2010年に執行役員になられて以降は経営に近いところで御社の成長に寄与されてきたと思います。おっしゃるように、まだネットリサーチの価値が知られていなかった時代のマクロミルになぜ飛び込んだのか、うかがってもいいでしょうか。
新卒で広告会社に入り、次にシューズ販売のABCマートに移りました。ここでは人事部門に勤めていましたが、週末には、店頭販売の応援もしましたね。さらに違うフィールドで挑戦したいと思っていた20代後半、マクロミルの採用を偶然知りました。ネットリサーチのことはあまり知りませんでしたが、創業者はもちろん、面接で会う人たちが皆とても刺激的で。会社を成長させたい、そしてそのために業界を変えようという確固たる意志が強く感じられ、人の魅力に惹かれて入社を決めました。今でこそ上場して2,500人近いスタッフがいますが、当時は100人足らずが渋谷の雑居ビルで働いていました。そのころから活気がありましたね。
急成長の背景にある顧客ファーストの姿勢
――入社されてから、会社も市場も拡大していく中で、「ネットリサーチやマーケティングリサーチの領域はもっと伸びる」と感じたのはどんなタイミングだったのでしょうか。
入社から数年、2000年代半ばまでは、まだまだネットリサーチについて懐疑的な声も多く、パネルの代表性やデータの信ぴょう性を問われることも多かったです。ただ、消費者の多様化にともなって、徐々に「こんな悩みのある人に聞きたい」といった従来の手法では集めることが難しい、ピンポイントなリサーチニーズが増えてきました。
当時、依頼主は広告会社が大半だったのですが、並行して2007〜2008年ごろから事業会社からの直接の依頼もすごく増えていきましたね。マーケティングリサーチの中でのネットリサーチの存在感が確実に大きくなり、信頼性の獲得とともに顧客の業務の中にどんどん取り込まれていることを、実感するようになりました。同時に「ネットリサーチによりマーケティングのサイクルが速くなり、大変」という声もいただき、不可逆的な変化が起こったと実感しました。
――以前は「ネットリサーチならマクロミル」と打ち出されてきましたが、近年ではネットに留まらず、オフライン調査を含めた総合調査会社へとシフトされています。黎明期は懐疑的な声も多かったという状態から、現在に至るまでに、御社としてどのように市場のマインドを変えていかれたのでしょうか。
前述の消費者の多様化、それからデジタルシフトによるタッチポイントの増加、またそれらにともなってプロダクトライフサイクルのスピード感がすごく速まったことなどは、ネットリサーチが市民権を得ていく上で、追い風だったと思います。
そうした背景も踏まえて、我々として特に注力したことを今振り返ると、「顧客ファースト」の姿勢を強く持ち続けたことではないかと考えています。入社してからずっと感じてきましたが、どんな業界でも、業界の慣習や競合他社ばかり見てしまうと革新的なことを起こすのは難しいものです。
我々に対しても、業界からリサーチはこうあるべきだ、といった忠告やお叱りの声をいただくこともありましたが、反省はすれど怯むことはなく、ひたすら顧客のニーズに向き合ってきたことが今につながっていると思います。