SMS認証で会員化のハードルを下げ、見込み顧客層とも接点を作る
――OMOプロジェクトによって変化したCXを、教えてください。
まず、メンバーズ会員のオンライン化を進めるにあたり、入会方法をSMS認証式へ変更しました。専用のフリーダイヤルに電話をかけると、お客様のスマホに入会サイトのURLがSMSで届く仕組みです。そこからパスワードとお名前のご記入のみで、会員登録が完了します。これまでは、商品のご購入時にメンバーズカードをお渡しし、ご記入いただいた住所などをバックエンドで入力していましたが、データ化までに最長で2週間くらいかかっていました。また、そもそも詳細な個人情報を求めていたのは、私たちの都合でしかない。お客様としては「ポイントは欲しいけれど、なるべく個人情報を教えたくない」が本音でしょう。そこで、入会時はお名前と電話番号のみに留め、ECや店舗利用を通してお客様と関係を作った上で、情報をご提供いただく方法に変えたのです。人と人が仲良くなるプロセスと、なんら変わりません。コンバージョンが高かった紙のダイレクトメールの新規発送が難しくなりますが、「情報提供ありき」では、お客様が離れてしまいかねない。長いお付き合いを続けるために、関係作りを優先しました。

――顧客のインサイトを重視した会員システムだと思いますが、CRMが後手になりませんか。
実は、CRMに良い影響が出ているんです。新しいKOMEHYOメンバーズでは、商品購入前のお客様ともつながれるようになりました。店頭のQRコードやインセンティブキャンペーンを通して、ちょっと立ち寄ってみた方や、接客後にもう一度考えたい方、あとからECで購入したい方など、見込み顧客層にもアプローチができます。また、現代を生きる私たちにとって、ある意味では住所よりもスマートフォンの電話番号のほうが大切な情報です。まだスタートして1ヵ月ほどですが、想定以上の登録があり、手応えを感じています。
BtoBマーケティングの手法を、接客に活かす
――コメ兵では、コロナ禍を受けて店舗の営業時間を縮小しています(2020年9月現在)。OMOプロジェクトでは、店舗接客をどのように進化させたのでしょうか。
接客スタッフに、スマートフォンを支給し、お客様と直接LINEでつながるように促しています。これが、One to One接客です。お客様と仲良くなることが目的ですから、購入にまつわる相談だけではなく、シフトのご連絡や、ときには趣味の話をするなど、コミュニケーション内容はスタッフに任せています。購入は結果であって、やはりプロセスが大切。お客様とのLINEコミュニケーションの知見を共有しあう、社内コミュニティもあるんです。一方で、「ECサイトを見たいが、PCが苦手」とLINEで相談されたお客様に、好みにあった商品をプリントアウトし、丁寧な商品説明を記入して郵送することでご購入までつなげたスタッフもいます。これが、まさにOMOですよね。リアルとかデジタルは関係なく、お客様と私たちがやりやすい手段で連絡を取り合うことがベスト。来店もされるし、急ぎの時はLINEでビデオ通話もする。そのような親密な関係が築けると、お客様も信頼している人から買いたいと思うでしょう。「コメ兵で買う」ではなく、「藤原さんから買いたい」がゴールです。その道筋を、デジタルで舗装しています。
少し先の展望ですが、いずれはお客様データを接客に活かせるような環境の整備も進めています。もちろん、個々人のデータを見るのではなく、傾向を知り、お客様に良いアシストをするデータドリブンな接客ですね。デジタル集客からお客様との接点が生まれ、CRMを回しながらナーチャリングし、信頼関係を作り、購入へつなげる。接客は、BtoBマーケティングをイメージしています。これを可能にするのは、昨年導入した営業活動を可視化するマネジメントシステムの影響も大きいです。属人的な評価や判断を避け、マネージャーは定量的にスタッフのサポートができる体制を作りました。「最近お客様に電話していないね」ではなく、「先月より3件電話が少ないね」のように、お客様とのコミュニケーションをデータ化しています。