まず1グループで成功事例を作り、繰り返し勉強会を実施
しかし導入のプロセスには困難がともなった。浅尾氏は各グループに「データを統合して可視化しましょう」と説得したというが、イメージがつかみにくいと言われたという。
「他グループも見るプラットフォームにデータを置くことへの不安や、実際にどれだけ使い勝手がよくなるのかわからないという声が上がり、導入に後ろ向きな声もありました」(浅尾氏)
こうした声を踏まえて浅尾氏は方針転換。当初は広告会社から送られてくるデジタルキャンペーンのデータを統合し、各グループに自力でPDCAを回してもらおうと考えていたが、ハードルが高いと断念。まずは浅尾氏らの所属するウェブサイト統括センターが管理するマーケティングツールやGoogle Analyticsのデータを統合して可視化し、わかりやすいアウトプットを作ることを優先した。
こうした浅尾氏の取り組みに興味を持ち、部署内で真っ先にDatoramaを業務に取り入れたのが西上氏だった。
「日々の業務プロセスの中で、エクセルでデータ分析することへの限界を感じていました。どんな分析もピボットテーブル頼みになっていたんです。そんなとき、Datoramaの導入プロジェクトが進行していると聞き、すぐ浅尾さんに相談しました」(西上氏)
浅尾氏も、「西上さんが興味を持ってくださったことが、部署内へ浸透する上でのトリガーとなりました」と話す。その頃、浅尾氏は部署内にどんなニーズがあるのかヒアリングしようとしたものの、うまくできないというジレンマに陥っていた。
「いざヒアリングしようとすると、ヒアリングの前にツールの説明を求められ、いざツールの説明をはじめると『難しそうだからいいよ』と拒否されてしまう……そんな悪循環になっていたんです」(浅尾氏)
西上氏のチームが、デジタル広告のエクセルデータをDatoramaに取り込んで可視化し、ダッシュボードとして活用するようになったことで、同様の使い方をしてくれる他のグループが少しずつ増えていったという。
それに加えて、浅尾氏は部内で勉強会を実施。通りいっぺんのツール説明ではなく、西上氏にも話をしてもらい、実際にどのようにエクセルデータをDatoramaに取り込んでいるのか、どのようにデータ統合していったのかをユーザー目線で語ってもらうことで、自分ごと化していったのだという。その後も根気よく大小様々な勉強会を実施。地道な活動で、宣伝部内のDatoramaユーザーを増やしていった。
定点観測とPDCAにDatoramaを活用
現在、同社の宣伝部内では主に2つの目的でDatoramaが活用されている。1つは定点観測だ。同社では、これまで様々なツールがバラバラに提供されていたため、見るべき指標が多くて追いきれず、結局広告会社からのレポート待ちになっていたという。
そこをGoogle AnalyticsのデータをDatoramaに取り込み、冷蔵庫、炊飯器、エアコンなど各担当者が確認するデータを1つのダッシュボードに統合。競合サイトとの比較やSNSでポジティブ・ネガティブな反応を示すキーワードについてもひと目でわかる仕様としている。
また同社が東急プラザ銀座で運営しているカフェ「METoA Ginza」の来店客数や、スマートフォンアプリのダウンロード数なども連動させ、数値の相関関係について、店舗スタッフや関係者と分析し始めるようにもなったという。
2つ目はPDCAサイクルへの活用だ。こちらは西上氏のグループでエアコン製品を中心に、出稿中のデジタル広告について評価し、より出稿効率の良い媒体に予算を再配分することに活用しているという。
今では浅尾氏と石川氏のチームに、アイプラネットのエンジニアに加わってもらい、修正対応や簡単な開発についてはクイックに対応してもらえる体制を整えた。セールスフォース・ドットコムとは週1回定例会を実施。新しいダッシュボードや機能を開発したいときは、構想段階から相談したり他社の事例を聞いたりするようにし、部署内の課題をより本質的に、より早く解決できるようになっている。