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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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定期誌『MarkeZine』特集

「状況は変わる」を前提に関係を築く

 2020年は多くの企業にとって顧客との関係、社会との関係を深く考え直した1年だった。先が見えない状況が続く中、エンゲージメントを深めていくために、必要な視点とは。

※本記事は、2021年1月25日刊行の定期誌『MarkeZine』61号に掲載したものです。

変動実行力が求められる

 パンデミックに見舞われた2020年、刻々と変わる状況の中どう立ち振る舞うかを考え続けた1年になりました。日本企業は計画どおりに物事を遂行することに長けている反面、先が読めない中で動く力、状況が変わることを前提に設計し、実行する力(≒変動実行力)は弱いと言われています。

 2021年も引き続き、臨機応変な対応が求められることと思います。そのような中で顧客・社会と関係を深めていくために何ができるか。2020年を振り返りながらヒントを提示していきます。

本田事務所 代表取締役/PRストラテジスト 本田哲也(ほんだ・てつや)氏
「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」にPRWEEK誌によって選出された日本を代表するPR専門家。2006年、戦略PR会社ブルーカレント・ジャパンを設立し代表に就任。2019年より本田事務所として活動開始。『戦略PR』(アスキー新書)など著書多数。

エンゲージメント構築手段がより多様に

 パンデミックによって、リアルイベント、展示会、ライブといったエンゲージメントの手段は中止・規模の縮小を余儀なくされました。従来の方法に囚われていると、急に「何をやればいいのか?」と戸惑う状況になってしまったのです。これまでとは違う発想でエンゲージメントを構築することを考え、行動した企業と、身動きが取れなくなってしまった企業で差がついていたように見えます。

 いち早く動いていたのはサンリオピューロランドです。臨時休館の決定も早かったのですが、最大の顧客接点がなくなったときに、踊りの練習をしているキャラクターや新メニューの開発をするスタッフ、館内のメンテナンスの様子などを1本の動画にまとめて発信していました。その場に行かなくてもエンゲージメントを高めることができる良い事例です。

 GoProも、自社のブランドらしさを活かしたキャンペーンを展開していました。GoProはサーフィンやスキーなどアウトドアのシーンで使用されてきましたが、単に高機能のアウトドア用カメラということではなく、「一瞬一瞬をクリエイティブに切り取る」ところにブランドらしさがあります。外出自粛中は、自宅で撮影した作品を募集する#HomeProチャレンジを開催。ファンと深くエンゲージしていました。

 また、モノ・サービスの提供手段、集客手段のデジタル化も急速に進みました。ECの強化、オウンドメディアの強化といった動きがそれにあたります。しかし、モノを届ける、ファクトを伝えるといった機能的な側面だけを代替して、終わってしまってはいないでしょうか。DXというワードが席巻する中で、一連の顧客体験でこれまで何を伝えてきたのか、これから何を伝えていきたいのかという観点が欠落している気がしてなりません。これまで意識せずとも伝えることができていたブランドらしさや熱量を、物理的なエンゲージメントが制限された状況でどう伝えるか。メディアとのリレーション構築に留まらず、このシナリオ設計に積極的に関わっていくのが、ニューノーマルにおけるPRパーソンの姿かもしれません。

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:50 https://markezine.jp/article/detail/35304

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