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紙とデジタルの違いが購買行動に与える影響は?集英社ECサイトでの実証実験で得た、4つの知見

紙とデジタルの差は、どの段階で現れたのか?

――それでは、実験の結果について教えてください。

外川:今回、特に次の4点に関して興味深い結果が出てきました。順に説明します。

【1】「LPから購買に至る割合の高さ」に差が現れる
【2】アイテム数が多すぎるのは逆効果
【3】紙のカタログの行動喚起効果は大きいものの、工夫が必要な点もある
【4】会員の属性による違いもある

【1】「LPから購買に至る割合の高さ」に差が現れる

外川:まず、紙のカタログを送付した場合とEメールでデジタルのカタログを送付した場合では、(2)LPへのアクセス率にはそれほど大きな差はありませんでした。

 ところが(2)LPへのアクセスから(3)購買に至る割合に、顕著な違いが現れたのです。紙のカタログを送付した会員の場合、LPにアクセスした約26%の方が購買に至りました。このことから、紙のカタログを受け取った会員は、購買意欲が比較的高い状態でLPにアクセスしていたと推測できます。

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中谷:これまでの経験則から、紙のカタログのほうが購買につながりやすいような気がしていたのですが、これほど大きな違いが数値で実証されて驚きました。また当社では、紙とデジタルによるアクセス率の違いについて、精緻なデータを取ったことがなかったので、その点も非常に参考になりました。

 【2】アイテム数が多すぎるのは逆効果

外川:次に説明するのは、掲載アイテム数によって「ついで買い」の程度に差が出ていたということです。8色バージョンのカタログのほうが、16色バージョンのカタログより掲載商品以外の「ついで買い」をするユーザーが多いことがわかりました。

平木:要因として考えられるのは「膨満感」です。カタログにあまりに多くのアイテムが掲載されていると、それを見ただけで満足してしまい、購買まで至らない可能性があります。

 そのためカタログではユーザーの興味関心を「腹八分目」に留めておき、LPへ誘導して購買意欲をさらに高める工夫も必要なのではないかと感じました。

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紙のカタログを有効に使うためのポイント

【3】紙の行動喚起効果は大きいものの、工夫が必要な点もある

外川:本実験では、会員への事後アンケートを通じて、「行動喚起効果」についても調査することができました。その結果わかったのは、紙のカタログのほうがより後半のステージ、つまり検討、購入の段階まで進んだユーザーが多かったということでした。

中谷:これまで培ってきたコンテンツ制作力が活きた結果かもしれませんね。

外川:そうですね。一方で、紙のカタログを送付したグループに「買わなかった理由」を尋ねたところ、特徴的だったのは、「『あとで買おう』と思っていたら忘れた」という回答が多かったこと。これは、紙を活用するときの強い示唆になると思います。

 一般的に、紙は「一覧性がいい、保存性がいい」ことが魅力だと言われてきましたが、ともすると「あとでじっくり読もう」とそのまま置いておかれてしまう可能性もあるということが明らかになりました。

石塚:リマインドは重要なポイントになりそうですね。思い出してもらうことができれば、購買につながる可能性はもっと高まるのかもしれません。

【4】会員の属性による違いもある

外川:それから、今回紙のカタログの施策が最も響いたのは「入会して間もない層」でした。これは入会したてのユーザーにとって、紙のカタログの送付が驚きや新鮮さにつながり「サプライズ効果」となったことを示唆しています。

平木:私たちは過去に、デジタルネイティブに対して紙媒体のDMとEメールによるクーポンを送付した研究をしたことがあります(参考記事)。すると、意外にもデジタルネイティブにとっては紙媒体のDMをもらうと「嬉しさ感情」が高まるという結果が出たのです。紙媒体から伝わる人としての温かさ、特別感のようなものがあるのかもしれません。

外川:カスタマー・ジャーニーの視点から考えても興味深いですね。今回の実験では、LPに至る前に接したメディアが異なるだけで、その後の購買行動が大きく変化していました。ユーザーは昨今様々なメディアに接しますが、最初に接したメディアの影響が一番強くなる可能性が見えてきたのは、重要だと思います。

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この記事の著者

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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2021/02/18 15:51 https://markezine.jp/article/detail/35372

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