リソース不足も深刻:月当たりの予算は1~5万円が最多
このように構造的に難易度の高いInstagramですが、そこに投下されるリソースが限られていることも、成功確率を引き下げている要因の一つかもしれません。以下のデータは、月あたりの運用リソースです。

「事業会社」「代理店、コンサルタント」いずれの業態も、Instagramの運用予算は1〜5万円がボリュームゾーンでした。2020年5月ごろに同様のアンケートを実施した際には、事業会社は「1万円未満」という回答が全体の53%を占めていました。それに比べると予算はやや増えたと言えますが、それでも非常に少額です。
予算が少ない構造的な理由
なぜ、Instagramに予算を割く企業は少ないのでしょうか。理由の一つには、Instagramの費用対効果を正確に算出する難しさが挙げられます。Instagramの運用者と話していると、よく耳にするのが「会社の理解が得られなくて予算が下りません」「上司が明確な運用成果を求めてくるんです」というお声です。
企業のマーケティング活動においては、どんな施策であれ費用対効果が重要になります。「どれだけの投資をすると、どれだけの利益が得られるのか」という指標をROI(Return On Investment)と言いますが、これはマーケティングの最も基本的な評価指標の一つです。しかし、InstagramにおいてはこのROIが非常に算出しづらいのです。
次の図は、Instagramの各機能が購買行動に与える影響をまとめたものです。Instagramを含むSNSは、認知、興味・関心、検索、購買、そしてリピートまで、幅広い購買行動に影響を及ぼします。また、SNSで商品を知り欲しくなっても、SNS経由で購入するかどうかは場合によります。

さらに、Instagramでは自社の投稿や広告以外に、ユーザーの投稿(UGC)が消費者の購買行動に影響を与えるケースも多く、こうした要因が、より一層効果計測を困難にしています。
解決の糸口は?
問題なのは、Instagramの構造やそれを取り巻く消費者の購買行動について、経営者や上司が正確に理解しないまま、現場の担当者に「費用対効果を算出してほしい」と詰め寄っているケースです。ここまで見てきたように、Instagramマーケティングは正確な費用対効果の算出が簡単ではありません。だからこそ「なぜInstagramに取り組むべきか」について、経営者や上司と現場の担当者がよく話し合っておくことが必要です。
後編では、現場の担当者が運用においてどのような課題を感じているのか、より深く探っていきたいと思います。本記事が、Instagram運用を行っている企業の一助となれば幸いです。