5年10年先を見通し構造的な変化を捉えるニーズに応える
――そして2020年、コロナ禍により多くの企業がビジネスに影響を受けたと思います。一方でMarkeZineが行った調査では、2020年9月時点で「今後3年間のマーケティング予算を増やす」と回答した人が多かったんです。御社では2020年以降、どのような活動に注力し、現状のクライアント企業の動きをどう捉えていらっしゃいますか?
やはり2020年前半は、クライアント企業のマーケティング活動が一時的に減速しましたが、私たちは新型コロナウイルスに関する生活者調査を絶え間なく発表していきました。危機こそ基本に立ち返り、企業の「生活者の本質的な変化を知りたい」ニーズに応え、ビジネス回復に貢献したいと考えていました。社内では早くから在宅勤務化を進めており、インタビューのオンライン化も準備していたので、そのあたりはスムーズでしたね。
おっしゃる通り、2020年後半から徐々にリサーチの需要も戻ってきていると感じています。リサーチは価値創造の入り口に携われる、とお話ししましたが、それを根本的に見直さなければならない大きな変化に、企業が直面しているのだと思います。
――今、迫られている抜本的な戦略見直しの動きが、そのまま「生活者の本質的な変化を知りたい」という意向に表れているわけですね。
そう思います。一過性ではない変化に対して、リアクティブではなく、プロアクティブに動かなければ。インテージもそうあらねばと思って行動していますが、企業もその意識が強いほど、生活者の構造的で本質的な変化をつかみ、攻めの姿勢で挑もうとしていると感じています。
新しい顧客がどこに生まれているか、既存の顧客の変化に対応する新しい価値をどう生み出すか。あるいは、どのセグメントの方々をいちばん大事にすべきなのか。実際に「この先、5年10年を見通したいんだ」というご要望をいただいたりもしています。合わせて、事業全体や経営を考える立場の方々からのお声を聞く機会が多かったのも、2020年の特徴でした。
高まる「生活者理解」の重要性戦略策定と施策実行の両面から支援
――そうした上流工程の相談は、どの部門が受けられるのですか? クライアントの課題に応じてタスクチームが作られるのでしょうか。
より経営に近い声を受け止め、上流工程から関わりやすい体制にするために、昨年7月に組織再編をしました。顧客対応するカスタマー・ビジネス・ドライブ本部の中に、上流工程もサポートできる組織を置き、アカウント担当がアクセスしやすいようにしました。合わせて、生活者研究センターという社内研究機関で生活者理解を推進し、各案件を支える構造になっています。
経営に近い立場からのご相談が増えているのは、顧客理解や顧客価値創造といったマーケティングの概念が経営課題として捉えられている現れと捉えています。コロナによってもたらされた大きな変化もあり、2020年は「生活者理解」がより重要になった年と言えます。
――生活者理解は、冒頭のマーケティングリサーチの魅力にも合致するお話で、檜垣さんのお考えが腑に落ちました。最後に、2021年の展望をうかがえますか?
昨今のマーケティングリサーチに求められるのは「リサーチデータだけでなく、リサーチプロセスだけでない」状況です。リサーチデータだけでなく、クライアント企業の保有するデータとリサーチの統合活用が自然と求められ、リサーチプロセスを請け負って正しいアウトプットを提供するだけでなく、戦略策定と施策実行支援の両方のプロセスへの関与も自然と求められます。
インテージとしては当然、これらの要望に応えていきます。アウトプットのご提供にとどまらず、お客様ビジネスのアウトカムにこだわり、包括的なデータ活用を通してクライアント企業の事業成長に貢献します。データ活用のプロとしての磨き込みと合わせて、クライアント企業が向き合う顧客をともに見つめてその幸せを実現する、そのためにも「ヒトのチカラ」も磨いていきたい。
コロナ禍で加速する構造変化の一つは、デジタル化への対応、DXでしょう。「データのチカラ」と「ヒトのチカラ」を合わせて、リサーチの業容変革を仕掛けていきたいと思います。
