ウェルネス、サステナビリティを体現するユニリーバ
次にユニリーバ・ジャパン/ラフラ・ジャパンの木村氏が、コロナ禍におけるビューティー消費者購買の変化について解説した。木村氏は入社後、10年以上にわたってブランドマーケティングに携わり、その後ロンドン本社でグローバルマーケティングに従事してきた。そして日本に戻り、2020年1月にスキンケアクレンジングカテゴリーならびにダヴブランドの統括、4月よりユニリーバグローバルのグループ会社で、複数のスキンケアブランドを展開するラフラ・ジャパンのCOOに就任するなど、活躍の場を広げているマーケターだ。
木村氏が提示したのは、次の5つの観点から見たコロナ禍における変化だ。
- 1. 衛生ケアの急激な成長
- 2. ECシフト
- 3. 購買行動の二極化
- 4. ストレス対応としてのウェルネスビューティー
- 5. サステナビリティの再定義

ユニリーバ・ジャパン ホーム&パーソナルケア シニアブランドマネージャー
スキンクレンジングリード&ダヴマスターブランド ラフラ・ジャパン COO 木村 元氏営業内勤・外勤担当を合わせて約2年半、その後9年間、ブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360°のプロモーションからグローバル担当としてのブランディングや製品開発まで、幅広く従事。2019年はロンドン本社にて、グローバルマーケティング ダヴヘア シニアブランドマネージャーを担当し、2020年1月より現職として、スキンクレンジングカテゴリーならびにダヴブランドを統括。
「1.衛生ケア」については、2020年、前年比で約4倍の市場規模になったが、この数字は感染拡大が落ち着いたタイミングでも変わっていない。これに関し木村氏は、一度習慣化したモノやコトを続ける消費者が多いのだろうと分析する。「2.ECシフト」についても同様で、利用するきっかけはやむを得ない外出自粛であったとしても、一度ハードルが取り除かれたことで、その利便性から継続して利用する意向を持っている人は多く、ユニリーバとしても最優先に対応していくと話す。
「3.購買行動の二極化」は、たとえばハンドソープなど市場規模は大きいものの顧客単価が下がっているジャンルがある一方、ボディウォッシュやシャンプーなどの単価は上がっている動きを指す。多少高い金額を払ってもバスタイムの時間にストレスを解消したり、リラックスすることを求める消費者の意識が反映されているようだと木村氏は述べる。
また、コロナ禍で人とコミュニケーションをとったり、物理的に外に出て運動する機会が減少している。そうした生活が人々にストレスや不安を与えているからこそ、「4.ストレス対応としてのウェルネスビューティー」のニーズが高まり、それらを内面から実現していけるブランドが支持されている。
「“ウェルネス”の定義は非常に広く、いくつもの文脈があります。ビューティーの文脈で近年上手く言葉として表現されたのが“クリーンビューティー”。その中には“オーガニック”や“エシカル”といった概念も含まれるでしょうが、根本には、『肉体的・精神的に健康、元気でいたい』という気持ちがあるはず。これがこれからの美しさの定義になっていくのは間違いないと思っています」(木村氏)
5つ目の「サステナビリティの再定義」。サステナビリティは昨今の企業活動においてキーワードになっているが、ユニリーバではいち早くそれを意識し、「サステナビリティを暮らしの“当たりまえ”に」をビジョンに掲げてきた。そのサステナビリティの捉え方が、コロナ禍を経て変化してきていると木村氏は話す。
「以前はサステナビリティに取り組んでいる企業というと、環境に良い取り組みをしていると想像されがちでしたが、その定義がもっと広く、深くなっていると考えています。言葉に込められた“持続可能性”な社会に向けて、たとえばジェンダー平等を解消していくための行動や、公正なビジネスを継続的に行っていくことも含まれるようになるでしょう」(木村氏)