コロナ禍で高まる「自分ケア」のニーズ
続くパネルディスカッションと視聴者からの質問コーナーでは、講演の内容を基にさらなる議論が展開された。
アスクルの成松氏は、ユニリーバの木村氏が話した「ストレス対応としてのウェルネスビューティー」に対し、LOHACOでもボディケア商材の売れ行きが上がっていると明かし、自分の生活の質を向上させたいという消費者心理の高まりを感じると話した。また、木村氏は成松氏に、「アスクルがECリテーラーの枠を超えて、メーカーと共同で商品開発に取り組む上での切り口を、データからどのように読み解いているのか」と質問。これに対し成松氏は、カスタマーレビューと購買データを結合する手法を紹介した。
「レビューでいただいた言葉と、その後の購買行動を突き合わせることができるのがECの強みです。ポジティブなレビューを書いていただいていても、購買は一度きりで終わってしまう場合もあります。組み合わせてみることで、『長持ちするニーズ』とはどんなものなのかを定量的に把握することができます」(成松氏)
カスタマーレビューについては、視聴者から(1)レビューを増やす施策や仕組みについて、(2)購入頻度で評価するのが難しい商品のカスタマーレビュー活用例について、それぞれ質問が寄せられた。(1)に関して、ユニリーバではメディアとのタイアップを通じて商品販売前にサンプリングで使ってもらい、カスタマーレビューの投稿を促すような取り組みが主になっているという。一方LOHACOでは、PayPayボーナスの付与やキャンペーンの実施をしている。(2)については、成松氏より「確かに耐用年数が高い商材はLTVが測りづらい部分があるが、その場合はカスタマーレビューで一度傾向の分析をしてから、特定のクラスターに対して調査したり、直接話を聞くといった方法をとっている」と回答が示された。
セッションの終盤には、顧客のセグメントや状態を評価するためのフレームワークについて視聴者から質問があり、木村氏から、商品のコンセプトや切り口を考えていくときに活用している方法が紹介された(図表2)。

その方法ではまず、ターゲットのユーザーが現状とっている行動を書き出す。たとえば、「自社製品ではなく競合のA社の製品を購入している」など。その下に、ユーザーがその行動をしている理由や思考を書き出していく。ここがインサイトと呼ばれる部分だが、ここを深く探る、あるいは世の中のマーケターが見えていない要素を見つけることが大切だ。そして次に、書き出した現状の思考や行動をどのように変えてもらいたいかを書く。たとえば思考では「自社の製品が自分にとって魅力的であり、買いたい」、行動では「街角のドラッグストアで買う」「検索する」など。
ここまでのステップが完了したら、現状の思考と行動を理想のものに変えていくための、トリガーとバリアーを考えていく。トリガーは理想の行動をとるきっかけであり、バリアーは理想通りにならない要因を指す。木村氏は「ベーシックな方法ですが、トリガーを押してバリアーを取り外せば、消費者は現状の行動から理想の行動に移っていきます。そのため、まずは消費者の行動と思考を正しく把握することが大切です」と述べ、実践を勧めた。