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音声メディア「Voicy」 マーケティングプラットフォームとしての可能性

目指すは音声版のLINE 使いやすいプラットフォームへ

——緒方さんがVoicyを通して目指す中長期的なビジョンと、その手前の直近の目標などを教えてください。

 創業時からイメージしていたのは、いずれ「皆が当たり前のように声を使う世界」が来るだろう、ということです。スマートスピーカーを声で操るように、たとえばモビリティサービスの利用も声でできるようになる。そうした状況を見越して直近で掲げているのは、Voicyがボイスメディアのプラットフォームになることです。

 個人のパーソナリティが番組を配信するだけでなく、BtoC、BtoBを問わず、企業利用もできる。平たく言うと、LINEのようなサービスを作ろうとしています。LINEも企業によって情報配信やチャットボットのような使い方もできたりと、企業のニーズに合わせて多様な活用法があります。僕らも企業と柔軟な組み方ができるよう、サービスを拡充しているところです。

——具体的に今、Voicyには何種類のコンテンツがあるのですか?

 大きく、5つあります。1つ目が、著名人からインフルエンサーまで幅広い方が「パーソナリティ」になって配信する、個人のボイスメディアです。

 2つ目は、日経新聞や毎日新聞、各ラジオ局など、いわゆるジャーナリズムのメディアによる音声放送です。今、徳島新聞や沖縄タイムスなど地方紙にも次々と活用いただいています。いわゆる紙の新聞に接していない層や、活字を読むのがつらくなってくる高齢者層に、新しい手段として広げたい意向があります。意外に感じるかもしれませんが、スマートフォンやスマートスピーカーでVoicyを聞かれているご高齢の方が増えています。

——なるほど、今はネット上でニュースに触れても「どの媒体が発信しているのか」が意識されにくくなっているので、番組として意識的に接触されるのはメディアにとって意義がありますね。

 そう思いますね。先日も日経新聞の『ボイステック』記事で紹介されたのですが、取材した記者さんがVoicyの番組『ながら日経』で後日談を話されていました。こうした発信は、メディアのカラーを印象付け、親近感を増すと思います。

 3つ目は、企業のオウンドメディアとしての音声コンテンツ利用です。たとえばPRTIMESさんやアルファロメオさん、野村證券さんなどが番組を配信中です。以上の3つが、一部有料のプレミアム放送もありますが、基本的には一般ユーザーに開かれたボイスメディアですね。

 一方、4つ目はクローズドの放送です。社内報やコミュニティ限定の音声コンテンツの利用が、今進んでいます。経営陣同士のトークを共有して社内の一体感を高めるとか、Voicy社内でも今は顔を合わせないことが多いので、雑談の場として意識的に使っています。また、ファン限定の配信で特別感を醸成したりすることもできます。

 そして5つ目はこれからなのですが、「音声のDXソリューション」と位置付けています。

音声にすることで便利さや楽しさが広がる

——「音声のDXソリューション」とは、どういったことですか?

 今、様々な領域でDXが進められていますが、実はデジタル上の音声を使って既存の仕組みを便利にしたり、もっと楽しくしたりする余地がかなり残っていると思います。たとえば電報なら、そのままネットを介して贈り主の声で聴けるといいですよね。美術館の展示案内も、複数の声優さんのアナウンスをQRコードでそれぞれ読み込めたら、何度来ても違った楽しみ方ができる。プラモデルや家具の説明書も、音声のほうがわかりやすいと思うんです。このように、音声以外のコンテンツをデジタル上で音声配信にしていくことも、Voicyのプラットフォーム上で可能になっています。

——プラットフォームとして運営していく上では、コンテンツを発信する個人あるいは企業の方と、リスナーの方をつなぐ場として成立させる発想が必要になるかと思います。Voicyのマーケティング戦略としては、何を最も重視されているのですか?

 その点は、とにかく「発信者ファースト」を第一に据えています。発信者が「この場所に自分の声のブログを残したい」「この場所で発信したい/発信しやすい」と思っていただけることをいちばんに考えています。ユーザビリティや仕組みの部分も含めて、Voicyを選ぶメリットがあると思ってもらえたら、コンテンツの質もおのずと磨きがかかり、ひいてはリスナーもついてくる……という発想ですね。

——ただ、一方で発信者や内容の審査は厳しいという話も耳にしました。発信者の拡大と、審査を通してコンテンツの質を保つという部分は、どのようなバランスで考えられていますか?

 前述のように企業の音声メディアとしても積極的に誘致しているので、やはり「信頼できるプラットフォーム」であることは大前提です。でも、音声コンテンツは中身をチェックできない。テキストのようにクローリングできないんです。

 そこで考案した仕組みが、各パーソナリティに社員一人を担当者としてつけることです。コンテンツ作りのノウハウを蓄積して、パーソナリティ単位で我々との信頼を積み重ねています。したがって、ある程度の審査を経てパーソナリティを絞らないと回らない、という事情があります。同時に、「飽きたからやめよう」というライトな風潮をなるべく作りたくない思いもあります。我々の目指す未来に共感して、中長期的に取り組んでいただける方とご一緒したいというのが、ベースの考えです。

音声広告ならではのエンゲージメント構築

——そうしてメディアの信頼性を担保した上に、音声広告の可能性も広がってくるかと思います。2021年2月に発表された「日本の広告費2020」におけるラジオ広告は約1,066億円で、毎年減少が続いている状況です。一方、デジタルの音声コンテンツが出てくると、そこに付随する広告はラジオ広告とデジタル広告のどちらになるのでしょうか?

 どちらにも分類されるかと思います。というのは、音声の広告はデジタルであっても、音声ならではの“じわじわ好きになる”といった効果があると思うからです。それはデジタルというより、従来のラジオ広告の特徴が色濃く出ているように思いますね。

——なるほど。他方、デジタル広告の予算は年々拡大しており、その中でコンテンツマーケティングへの投下は特に増しています。となると、そこからデジタルの音声コンテンツに企業が予算を割り振る……という可能性も十分あるのではと思うのですが、いかがでしょうか?

 はい、大いにあり得ると思いますし、そうしていきたいところです。先ほど“じわじわ好きになる”効果があると言いましたが、つまり中長期的なブランドリフトとファン醸成が見込めることが、音声でのコンテンツマーケティングの大きな可能性だと捉えています。

 テキストはもちろん脚色できますし、動画もいくらでも編集できますよね。一方で、声はどうしてもごまかせないところがある。本心がともなわないしゃべりは、聴く人にすぐにわかってしまいます。なので、企業も腹を括って正直であることが求められますが、本心ならばエンゲージメントの高いマーケティングが可能だと思います。

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気づいたら好きになる長期的なコミュニケーション

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/04/26 06:30 https://markezine.jp/article/detail/36098

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