「商品」の力でZENBブランドのコンセプトを届けたい
新井:海外ではどのように販売しているのでしょう?
長岡:同じくECです。ブランド力ということでいえば、日本はそれこそ「ミツカン」というブランド力がありますが、海外ではそれがないので、本当にゼロからの立ち上げです。
MZ:日本市場だと、ZENBプロダクトのマーケティングに関して、やはりミツカンというブランドの信頼性、安定感は大きいのでしょうか。
長岡:はい、ミツカンのブランド力は、ZENBのマーケティングでも少なからず生きていると思います。ただ、ミツカンブランドが効く人にはZENBも受け入れられやすいのですが、一方で効かない人にはあまり縁がない状態なんです。そういう人たちに向けては、やはりミツカンブランドで売っていくよりも、ZENBというブランドのコンセプトや、実現したいことをきちんと伝えないといけません。そこがまだやりきれていない点が目下の課題ですね。
MZ:『マーケター理子の成長期』第5回では、「パーパスを体現したコンセプトだけでは商品は売れない?」というテーマを扱ったのですが、事業を継続するうえでは、コンセプトだけではなく、やはりユーザーが欲しい商品を出すという点が大前提になると思います。この点をZENBではどのようにクリアしていったのでしょうか。
長岡:難しいのですが、ZENBのある食生活の価値を商品を通じてきちんと伝える必要があると思っています。実際、今発売している「ZENBヌードル」という商品は好評で、かなり売れているんですが、それに製造が追いついていないので、大々的にPRできていないんですよ。こうして高評価をいただいている商品を通じ、ZENBが何をやっていきたいのかを、自分たちの言葉で伝えていきたい、そう考えています。
企業「らしさ」とブランドイメージ、バランスをどう取るべき?
MZ:自社ECだと、購買者の属性も把握できると思います。ZENBの事業開始時にターゲットとしていた層と、実際に購入している層に、ギャップはあるのでしょうか?
長岡:当初はターゲットを「30代の若い既婚者」もしくは「40〜50代、日々の健康を気にし始めた方」としていました。実際の購買層を見てみると、前述したZENBヌードルの場合、40〜50代かもしくはそれより上の年代の方々です。これは、まだイメージ通りに売れていないということなんです。本来想定していたターゲット層に受け入れられるコミュニケーションが取れていないと考えられます。
その人たちに共感してもらえるようなコミュニケーションも必要ですし、ZENBというブランドも、やはりどこかでミツカンっぽさが残っているので、繰り返しになりますが、ZENBというブランドをしっかり伝えることが課題ですね。企業らしさとブランドのイメージを合わせていくことはすごく難しい。そこが普通のスタートアップと違い、既存の企業が新規事業を始める難しさだと思います。
ひろもり:ミツカンさんのようなコンシューマー向けのプロダクトブランドだと、ブランドとしての顔も複数ありますし、なかなかおいそれと動かせないものがありますよね。ただ、ミツカンというブランドが持っているコアが企業ビジョンに反映されているのは事実ですし、それを結果的にZENBブランドでうまく伝えていくと、すごくいいサイクルになると思います。
これは一般論になりますが、企業がビジョンを考え始めると、結局は創業時のルーツに戻ってくることが多いんです。というのは、どの会社も、究極的には「世の中を良くしよう」と考えてスタートしているからなんです。ただ、何年も経つうちにそのビジョンが薄れてしまって、ビジョンを知らない社員も増えてきてしまうんですよね。それをもう一度、象徴するような事業を通じ、企業とビジョンを一致させることができたら、本当に理想だと思います。