会社全体でSDGsアクションを事業へ落とし込む、Zoffの取り組み
MZ:「持続可能な開発目標」の言葉通り、継続して取り組める体制を整えることが必要なのですね。バズワードにのっかるような一時的なキャンペーンは本質的ではないとわかります。これまでにGood Tideでは、どのような支援をしてきたのでしょうか。
太田:SDGsアクションへの第一歩の事例として、眼鏡ブランド「Zoff」のインターメスティックさんのプロジェクトをご紹介します。
インターメスティックさんは、以前より眼鏡のリサイクルや目の健康にまつわる取り組みなど、多様な社会活動を進めていらっしゃいました。その上で、創業20周年を迎える2021年を節目に「会社としてもっとできることはないか」と考え、SDGsの重点目標の策定を行い、実践されています(Zoff サステナビリティ特設サイト)。
MZ:SDGsアクションでは部署を横断して取り組むことが大切だとお話されていました。インターメスティックでは、どのようなチームで取り組んでいるのでしょうか?
太田:マーケティング戦略本部を中心に、様々な部署の方が参加するプロジェクトチームが立ち上がっています。重点目標の策定にあたっては、仕入れや製造などのサプライチェーンから、お客様の手元に眼鏡が届いた後までの各フェーズでできることを洗い出していきました。
自社の活動をすべて言語化し、今取り組むことと少し先の未来に向けて活動し始めることに分け、経済・社会・環境・体制の重点テーマを策定しています。
MZ:マーケティング戦略本部が一丸となって取り組んでいる様子がうかがえます。プロジェクトで印象的だった出来事はありますか。
太田:SDGsアクションを実際の事業へ落とし込んでいくプロセスの部分では特に議論が深まりました。たとえば、インターメスティックさんに限らず、小売業ではシーズンごとに新しいプロダクトが登場し、その製造予定もかなり先まで設定されています。「どのタイミングで原材料を切り替えるか?」など、事業サイクルとSDGsアクション実行のバランスについては、ていねいな話し合いが必要だと実感しましたね。
「ムダ毛」への固定概念から自由に 世の中にポジティブな価値観を提案するシック
MZ:次に、コミュニケーションの切り口としてSDGsを用いる際のポイントを教えて下さい。
太田:当たり前ではありますが、まずは生活者目線に立つことです。生活者はその商品がソーシャルグッドなプロセスを経て作られてるのかということだけでなく、自分の課題を一緒に解決してくれる存在なのかを知りたいはず。ですから、コミュニケーションを考える際には、自分たちがその問題とどう向き合うのかという姿勢を発信するとよいと思います。
たとえば、シック・ジャパンさんの「#BodyHairPositive」プロジェクトがとても参考になりますね。

MZ:「毛について、話そう。」のメッセージはインパクトがありますね。これまでのカミソリのプロモーションと真逆のようにも感じられますが……。
太田:そうなんです。これまでカミソリは「体毛を剃るもの」を前提としたコミュニケーションが中心でした。しかし今回のプロジェクトでは、「剃るも剃らないもあなたの自由」とメッセージングしています。「剃らなきゃいけない」という固定概念や「こうあるべき」の押し付けから自由になろうと、ポジティブに発信している点が特徴です。
MZ:なるほど。しかし生活者としては、これまでのアプローチと矛盾を感じてしまうのではないでしょうか。
太田:これまで発信してきたメッセージとこれからのメッセージをつなぐ、トランジションを作ることが重要です。「#BodyHairPositive」プロジェクトでは、剃ることを否定しているわけではありません。キャスティングされた著名人も、「剃る」「残す」ということに自分自身の考えを発信することにフォーカスしています。
「今までこうだったけど、こんな考え方もいいよね」と自然にシフトしているところが、支持されているのではないかと考えています。
