「商品」ではなく「信用」を取引する
Netflixは「自社のお宝」であるコンテンツの管理と配信を「AmazonのAWS」サーバーに深く依存している。いわば、Netflixは顧客への「ラストワンマイル」を、Amazonに委託しているような構造だ。
この状態から想像すると、Netflixが物理的な物販を取り扱うECサイトを立ち上げたところで、「実働のラストワンマイル」を外部依存するECサイトになる可能性がある。
2.1億人の信用を預かるNetflixがEC領域に入ってくるのは、相当な覚悟の上で、新しいエコシステムを作り始めるための慎重な参入と期待したい。Netflixの狙いとは、番組の人気に依存した物販やライセンスの開発に留まらないはずだ。むしろ「Netflix社だからこそ」という信用の上での「取引サービス」が生める規模と体力に成長している。
たとえば、長年Netflixのアカウントを保持しているユーザーは、Netflixへのロイヤルティ蓄積されている。この関係から派生する「便利」や「不便の解消」をNetflixが企業として提示(担保)する双方向サービスがあり得る。医療分野などはその筆頭だろう。
現に「Amazonプライム会員」は、EC配送や返品の利便性や、個人情報を預けるロイヤルティが構築され、オマケとしてAmazon Primeビデオを楽しんでいる状況だ。顧客との強固な信頼関係を赤字覚悟で拡張させて、後にLTVの高い「毎日の(双方向)サービス」へシフトして飴玉とする。
企業価値と顧客価値を巨大にしたNetflixの真の狙いとは。その先に何を「飴玉」としようとしているのか。事業戦略や売上、利益など目に見える事項以外から気づける予兆は、非常に興味深い。
・Netflixの10-K年次報告書(2020年)
・Netflixの10-K年次報告書(2018年)
・Netflixの10-K年次報告書(2016年)