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僕たちのPMFの話をしようか

「みんなにとって50点」の状況から抜け出すために。2つの決断でPMFを手繰り寄せたコミューン

 BtoBスタートアップのPMF(Product Market Fit)ストーリーを紹介する本連載。今回取り上げるのは、先日総額19.3億円の資金調達を発表したコミューンだ。同社が提供するカスタマーサクセスプラットフォーム「commmune(コミューン)」は、PMFの前段階であるPSF(Problem Solution Fit)の手応えを早期に掴んだものの、その後は1年間にわたって苦戦を強いられた。思い切ってターゲットを限定すると同時に料金設定を約3倍に引き上げたことで、光が射したという。

小さなPMFを繰り返し、戦う市場を拡張する

 コミューンは2018年9月よりカスタマーサクセスプラットフォーム「commmune」を展開している。同サービスの軸となるのは、企業と顧客のコミュニケーションの場となるオンライン上の“コミュニティ”だ。

 従来企業と顧客のコミュニケーションは一方通行になりがちで、なおかつその手段も顧客によってバラバラになってしまっていた。commmuneではコミュニティを用いることで一方通行だったコミュニケーションを双方向に変え、バラバラだった顧客接点を一箇所に集約することでカスタマーサクセスを実現する。

 コミュニティを活用する目的は企業によってさまざまだが、commmuneが現在注力しているのはカスタマーサクセスを達成するためのコミュニティだ。つまり最小の工数で、顧客のLTV(Life Time Value)を最大化するための手段としてコミュティが有用であることを訴求している。

 主なターゲットは(1)自社のビジネスにおいてLTVの向上が重要であると認識していて、(2)その上で顧客コミュニケーションに注力したいと考えている反面、(3)すべてを人力で賄うのは難しいと感じている企業だ。3つの条件を満たす場合は、commmuneの価値を高確率で感じてもらいやすいという。まさにこの「ターゲットと提供価値」を明確に定義できるようになったことが、同社がPMFを達成する大きな要因になった。

 コミューン代表取締役CEOの高田優哉氏は、PMFにもいくつかの段階があると考えている。最初の小さなPMFは「ある程度のサイズがある市場で、課題とビジネスモデルと解決策のセットがピタッとハマること」。その後は別の領域でも小さなPMFを繰り返し、戦う市場を少しずつ拡張していくことで、より大きなPMFが達成される――。実際にコミューンも、「BtoBのソフトウェア」や「ライフスタイルブランド」といった領域でPMFを達成し、今は新たな市場にチャレンジしている段階にあるという。

コミューン 代表取締役CEO 高田優哉氏東京大学農学部卒業後、2014年BCG東京オフィス入社。在職中にロサンゼルス、上海オフィスへの出向を経験。2018年にコミューンを創業。
コミューン 代表取締役CEO 高田優哉氏
東京大学農学部卒業後、2014年BCG東京オフィス入社。在職中にロサンゼルス、上海オフィスへの出向を経験。2018年にコミューンを創業。
コミューンのPMFアクション
コミューンのPMFアクション

一定数の顧客が有償化へ移行。ニーズがあると確信

 スタートアップがPMFを達成する前提として、まずはその手前にあるPSF(Problem Solution Fit)をクリアする必要があると言われている。PSFとは解決されていない課題と、その課題を解決する有効な手法が見つかっている状態のこと。commmuneの立ち上がりは順調で、「かなり早い段階でPSFの手応えを感じていた」と高田氏は当時を振り返る。

  同社では2018年9月、一部の企業に対して無償でプロダクトを提供することから始めた。初期の顧客は現在もcommmuneを使い続けているベースフードなど、フード領域のD2Cスタートアップなど約10社。顧客の声を聞きながら一緒に開発を進めていった。

 そもそもcommmuneは高田氏たちの原体験から生まれた。commmuneを立ち上げる前、高田氏と共同創業者の橋本氏はサプリメントのD2Cブランドを展開していた。その際に“当事者”として企業とユーザー間のコミュニケーションの大変さを肌で実感したことが、後にcommmuneのアイデアを着想するきっかけにもなっている。

 commmuneの無償提供を始めてから4ヵ月後、次のステップとして高田氏はプロダクトの有償化を決断する。有償移行にあたっては「10社のうち、3社に使い続けてもらうこと」を目指したが、その目標は見事に達成された。

 「少なくとも一定数の顧客は明確な課題を抱えていて、それに対するソリューションとしてcommmuneに期待してくれている。サービスに対するニーズが存在していることに確信が持てました」(高田氏)

 順調なスタートを切ったかのように思えたコミューンだったが、ここから別の顧客にアプローチを始め、PMFの手ごたえを得るまでの1年間は、苦戦を強いられることになる。

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大崎 真澄(オオサキ マスミ)

ライター。大学在学中&休学中に複数のIT系スタートアップでインターンを経験後、フリーランスとして独立。DIAMOND SIGNALに関わる以前には「TechCrunch Japan」などでスタートアップ企業のプロダクトや資金調達を中心としたインタビュー・執筆活動を行っていた。4年前から長野県在住でフ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/10/04 09:00 https://markezine.jp/article/detail/37271

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