隠れたニーズを見つけるためのマーケティングリサーチ
ニーズを言語化していくためには、元となるファクトが重要だ。松本氏は「自社商品を売りたいがために、そのようなファクトがないのにネーミングセンスで勝負してもヒットはしない」と言い切る。
そのファクト探しに欠かせないのが、マーケティングリサーチである。一般的な手法は「Asking(質問)」で、定性調査(グループインタビュー、デプスなど)と定量調査(アンケートなど)に大別できる。定性調査により把握できるのは「WHY」で、インサイトの発見と仮説の構築に役立つ。一方、定量調査では「WHAT」として、事実の把握と仮説の検証ができる。
Askingに加えて、比較的新しい手法として松本氏が取り上げたのが「Listening(傾聴)」だ。Askingとの違いはコミュニケーションの有無。Listeningは「ユーザーの自然な会話にこっそりと耳を傾ける」ようなイメージだ。
松本氏はListeningの有効性について、「消費者の発言と実際の行動に矛盾が生じるときもある」と「消費者の“本当”の行動や態度を知るためにも重要な手段になる」と2つ挙げる。
このようなことから、Listeningの本質は「傾聴というより、消費者の本当を理解するための『観察』」にあるといえる。中でもソーシャルリスニングは、観察手段として有効性が高いそうだ。
ソーシャルリスニングとは、Twitterなどのソーシャルサービスからの情報を自然言語処理などのAI技術を使って分析する手法で、マーケターの期待や関心は高い。しかしTwitter APIを使って大量の情報を収集できたとしても、そのすべてに目を通すことは現実的ではない。また、その中にアフィリエイトなどの無関係な情報が含まれていたり、ツイートの理解ができずインサイトを簡単に得られないなどの課題があり、なかなか使いこなせないという障壁もある。これらの課題を解決すべく、同社が開発したのがFASTALERT for Marketingだ。
ツイートから隠れた感情を探索
FASTALERT for Marketingは、ソーシャルリスニングを簡単に始めることができるマーケティングリサーチサービスだ。法人・行政向けに提供しているFASTALERTを土台に、ソーシャルリスニング向けの機能を加えたもので、2021年4月にローンチした。
特長は、SNS上に溢れる様々な情報から自社には関係のないノイズを除去できる点だ。顧客の声、炎上の火種などの重要な情報をきちんと拾うだけでなく、ロゴ検知、画像検知機能により、キーワードを含まない画像だけの投稿も、画像解析と文章解析により正しく分類できるという。
また、優先度をつけて見るべき対象を絞ることも可能という。たとえば、認知・未購買の顧客が初めて使う瞬間、一回使った顧客が再び使う瞬間などの声を収集し、態度変容のきっかけを探るなどのことができるという。競合サービスのユーザーが何をきっかけにロイヤル顧客になったのか、どのような投稿をしているのかを見るために使う例もあるそうだ。
続いて松本氏は、ソーシャルリスニングを使うとどのような洞察が可能になるのかを、FASTALERT for Marketingの活用方法にも触れながら紹介した。