※本記事は、2021年9月25日刊行の定期誌『MarkeZine』69号に掲載したものです。
テレビ受像機の役割の変化
近年、テレビ受像機をインターネットに接続し、YouTube、Netflixといった動画配信サービスを視聴する行為が普及していることが注目されています。IXT(現インテージ)が2021年4月に日本全国約6,000人に対して行ったアンケート調査(※1)によれば、全国でおおよそ3人に1人がスマートテレビ(インターネットに接続可能なテレビ受像機)をインターネットに接続して利用しています。スマートテレビでは、放送(地上波、BS、CSを総称して本稿では“放送”と呼びます)だけではなくインターネット経由で様々な動画配信サービスなどのアプリ(配信動画や音楽などのインターネット経由のコンテンツを総称して本稿では“アプリ”と呼びます)を視聴することが可能です。スマートテレビを利用する視聴者にとって、テレビ受像機は既に放送のみを視聴するデバイスではなく、“様々な動画を大画面で視聴するためのデバイス”になっていると言えるでしょう。
では、今後ますます多くのテレビ受像機がインターネットに接続され、スマートテレビでのアプリ視聴が普及した場合、従来型の放送の視聴はどのような影響を受け、生活者のテレビの使い方はどう変わっていくでしょうか。今回はマーケティング利用の許可を得て収集されたインテージのスマートテレビ視聴データMediaGauge®TV(※2)の中でアプリも含めて分析可能な約100万台(2021年3月時点)の視聴ログデータを分析し、複雑化するテレビ受像機の利用実態の“今”と“これから”を考えていきたいと思います。
急速に普及するスマートテレビでのアプリ視聴
まず、スマートテレビでのアプリ視聴が現在までどのように普及してきたかを見てみましょう。図表1にスマートテレビの利用時間全体に対する放送、アプリ、その他(録画視聴、ゲーム機やChromecastをはじめとしたストリーミングデバイスの利用など)の1日あたりの平均視聴時間の推移を示しました(各年は4月区切りで、たとえば2016年4月〜2017年3月を2016年として扱っています)。
データから、放送の視聴時間に置き換わる形でアプリの視聴が急速に普及していることがわかります。テレビの利用時間全体は2019年までおおよそ8時間弱で推移しており大きな変化がないものの、放送の視聴時間は年々減少してアプリの視聴時間がそれに置き換わる形で増加し続けています。コロナ禍に入った2020年は放送の視聴時間が微増だったのに対し、アプリの視聴時間はそれ以上に増加し、スマートテレビの利用時間の約20%にまで達しています。その他にはChromecastなどのストリーミングデバイス経由でのアプリ視聴も含まれるため、それも含めればアプリの視聴時間はさらに大きいと考えられます。