「デジタル接客」に深く取り組んできた2社が対談
MarkeZine編集部(以下、MZ):今日はD2Cブランドでありながら実店舗も展開されている「MEDULLA(メデュラ)」でマーケティングをご担当されている上原さんと、チャットコマースを通じて「おもてなし革命」に挑まれているZealsの遠藤さんに、「ECと実店舗の役割の変化&これからの購買体験の在り方」をテーマに話を伺っていきます。まずは自己紹介をお願いできますか?
上原:弊社は「パーソナライズ×D2C」を軸として主に美容領域で事業を展開しています。美容領域の場合、商品を選ぶ際に「どれが正解かわからない」「市場に商品があふれていて何が自分に合うのかわからない」などの課題を抱えたユーザーが多い傾向にあります。Spartyでは、こうした「選べない」ニーズに応えるため、一人ひとりの悩みや個性に寄り添うプロダクトを開発し、提供しています。現在はヘアケアブランドのMEDULLAに加え、スキンケアの「HOTARU PERSONALIZED(ホタル パーソナライズド)」、ボディメイクの「Waitless(ウェイトレス)」などを提供しており、私は3ブランドを横断したマーケティングを担当しています。
遠藤:私はもともと大学院でヒューマンインターフェース論(人間・社会と調和する技術システムの構築を研究するもの)を専攻し、コミュニケーションにおける人とテクノロジーの関わり方について勉強してきました。新卒でマーケティングテクノロジーの会社に入った後、2017年にZealsにジョインし、今に至ります。Zealsは、チャットボットを用いてデジタル上での「接客」を実現するチャットコマース「ジールス」を提供しています。「おもてなし革命」をビジョンに掲げ、日本だけでなくグローバルを視野に入れ、チャットコマースを普及させていくことを目指して事業を展開しています。
また、並行してLINE Frontlinerとしても活動しています。LINEが持つ「お客様と消費者の距離を近くする」というビジョンと、我々の「接客DX」というコンセプトには、非常に共通する部分を感じており、共により良い購買体験を創造していければと考えています。
LINEへの高い知識レベルと豊富な経験を備えたLINEの認定講師。「LINE Frontliner」という名前には、LINEと共に第一線「Frontline」でマーケットを作っていく方々という意味が込められている。
EC化率8%の日本 ECに欠けているものは?
MZ:MEDULLAのブランドについて、ご紹介いただけますか?
上原:先ほどお伝えした「選べない」というユーザーの課題に応えるため、「スマホの中の美容室」というコンセプトで始めたのが、パーソナライズヘアケアブランドのMEDULLAです。オンラインで髪質診断を行った後、約5万通りの組み合わせからお客様の髪質に合ったヘアケアアイテムをご提案しています。基本的にはオンライン上でサブスクリプションモデルとして展開していますが、東京と大阪で直営店舗も運営しています。
遠藤:上原さんがMEDULLAのコンセプトを「スマホの中の美容室」とおっしゃっていましたが、僕らが見ている世界観もそれに近いものがあります。チャットコマースとは、店舗での接客をデジタル上で再現することです。たとえば、実際の美容室では「お客様はこういう髪質なので、こういうシャンプーを使った方がいいですよ」などの会話が交わされています。その接客体験を、Spartyさんはプロダクトを作り込むことによって実現されている。
一方、我々はチャットコマースを通して「デジタル上で販売されている多様な商品の中から、自分にぴったりなものを選ぶ」という購買体験の創造を目指しています。現在、日本のEC化比率は約8%で、ほとんどの購買がオフラインで行われています。その理由の1つは、オフラインにあるような接客体験が、デジタルで再現できていないことにあると考えています。これが実現できれば、オンラインでももっと手軽に自分に合うものを選択できる人が増えていくはずです。