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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

人を育てる。組織を育てる。

キャリアの入り口に「データ分析」がある。成松氏が語る、アスクルの人材育成・組織強化

LOHACOのマーケターを育てる上で、最も重視してるスキルは?

 プロモーションやインセンティブの設計、CPAの最適化といった観点で顧客体験を考えるのは、あまりにも断片的です。LOHACOのマーケターには、自分のやっていることが、顧客体験のどこに関与しているのか、何を促進しているのかを理解することが必須の条件として求められます。

 そして、これを理解するためには、自分の担当する領域をデータで可視化してPDCAを回すだけでは足りません。たとえば、マーケティングキャンペーンを実施した時、売り上げが見込みよりも大幅に上回ったとします。マーケティングの数字しか見ていないと、「目標よりもたくさん売れてよかった」となりますが、さらに先の数字まで見られるようになると、「計画よりも受注が多くなり、物流センターからのお届けが遅くなる可能性がある」ことがわかります。商品を注文して翌日に届くという嬉しい体験をしたご新規のお客様と、注文から1週間後に届くというがっかり体験をしたご新規のお客様とでは、2回目ご利用の転換率に倍くらい差が出てしまう。結果的に、自分たちのKPIに跳ね返ってくるのです。

 ですので、マーケティングプランを立てるときは、物流としっかり連携し、精度の高い販売計画を立てる必要があります。マーケティング部門だけでキャンペーンの仕込みが完結することはほぼありません。どういった目的で、どのくらいの規模で、どんなことをやりたいのか。そのためには、各部門にどんな準備をしてほしいのか。マーケターは、これらを共通言語であるデータで伝えられなければいけません。

データを共通言語に全員で同じ方向を見られる。アスクルのような強いデジタル組織を作るには?

 データを共通言語にする、データ活用を組織に浸透させるには、共通のデータを見ること、最終的なKGIに各チームのKPIを紐づけること。この2つが必須の条件であると考えています。

 その上で、自分の担当するKPIだけでなく、KGIからツリー状に分解された各KPIのつながりを全員が理解しておく必要があります。理由は、あるKPIが上がりすぎると、こちらのKPIが悪くなってしまうというように、KPIは時に反作用することがあるからです。KPIのつながりをしっかり理解できていると、別の部門の視点も踏まえて物事を考えられるようになる。データを共通言語に会話できるようになるので、部門の壁を越えても齟齬なくコミュニケーションでき、連携もスムーズになります。

 そして、リーダーが自分のチームの数字しか見ていないとなると、必ず組織が分断してしまいます。自分のチームのKPIを達成することはもちろん必要ですが、そのKPIを達成することで全体にどのようなインパクトを与えるのかを考えて説明する。ここまでがリーダーの仕事であると思います。これを言語化できないのであれば、リーダーとしては力が不足していると認識しています。

 実は、マーケティング部門だけでなく、事業全体でデータを共通言語にしていかなければいけないと強く意識し始めたのは、2017年の物流倉庫の火災がきっかけでした。私は当時もマーケティング全体を見ていましたが、恥ずかしながら、あまり物流のことを意識せずに仕事をしていたんですね。

 火災により物流能力がショートし、お客様にお届けできる量が半分ほどになると、当然今まで通り販売するわけにはいかなくなります。今の物流能力だと、どんなお客様にどんな商品をお届けするのがベストなのか。これを深く考える機会があり、この時から「お客様に商品をお届けして、無事に受け取っていただく。そこまでで顧客体験である」と強く意識するようになりました。あれから約4年、トータルで顧客体験を高めるために、データを共通言語にして会話の精度を上げる、部門がまたがることによるミスコミュニケーションを減らすということに日々取り組んでいます。

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リモートワーク環境下での若手の育成で意識していることは?

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この記事の著者

松崎 美紗子(編集部)(マツザキ ミサコ)

1995年生まれ。早稲田大学商学部を卒業後、新卒で翔泳社に入社。新入社員として、日々奮闘中です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/10/26 08:30 https://markezine.jp/article/detail/37580

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