“定性調査”から見えてくる、生活者の行動変化
コロナ禍における生活者の行動変容については、定量調査であるアンケートによる調査結果などが多く流通しているが、生活者一人ひとりに着目した定性調査による調査結果はほとんど見られない。
uniiリサーチは、そうした背景から2020年7月に開始した、オンラインインタビューサービスだ。消費者のインサイトを基に新たなサービスの開発や既存事業の変革を行いたい企業と、おうち時間や自分の知識を有効活用して副業収入を得たい消費者をつないでいる。
本寄稿ではuniiリサーチを活用し、定性調査の強みによって「より深いインサイト」を浮き彫りにし、読者に向けてコロナ禍におけるビジネス成功のヒントを提示することを目指す。第1回は「一般生活者の変化」をテーマに、日本国内において主婦、単身の社会人、高齢者といった幅広い層を対象に、計10名へのインタビューを行った。
コロナ禍で大きく変化した人々の「購買行動」
人々の購買行動は年代を問わず大きく変化していた。変化が見られたのは「リアル店舗利用の減少・通販利用の増加」「自炊負担の増大」「テイクアウト利用の増加」「食材へのこだわりの増加」だ。
リアル店舗利用の減少/通販利用の増加
通販で購入する場合、特有のネックがある生鮮食品や衣服などの商品も、コロナ禍ではリアル店舗における感染リスクを避けるために、年齢を問わず通販で買うようになっていた。また店舗滞在時間を減らし感染のリスクを低減するために、事前にネットで購入した商品を店頭で受け取るといった新たな購買体験のニーズが見い出せた。
人込みに敏感な方は「ユニクロで服を購入する際もWebで商品を購入し、店頭では商品を受け取るだけで、一切店舗で商品は見ない」とのことだった。特にサイズ感などについても支障はないという。オンラインで購入し、店頭では受け取るだけといった購買体験は様々な業界で進んでいく可能性がある。
自炊負担の増大
食事面も大きな変化が見られた。年齢を問わず外食はほとんどせず、自炊の機会が増えていた。また主婦については、夫の職場での飲み会や接待の機会が減少したことで、従来よりも自炊の負担は増していた。
コロナ禍以前は夫が外食へ行っている時に夕食で手を抜くことができたが、今は「献立をどうするか考えることが負担になっている」という。そうした方はミールキットや献立アプリを利用することで負担の軽減を図っていた。
テイクアウト利用の増加
主婦と単身の社会人の方は、デリバリーサービスやテイクアウトを利用していた。デリバリー/テイクアウトにおいても、Uberのようなシェアリング型のサービスの利用もあれば、大手チェーン店のサイトやアプリで直接注文を行っているケースもあった。企業によってはアプリの利便性が低く、結局電話で注文しているといったこともあるようだ。
今回ヒアリングを行った高齢者の方については、デリバリーを活用しているケースはなかった。「そもそも利用方法がわからない」などリテラシーによる理由のほか、人に届けてもらうという体験自体に馴染みがないことにより、利用が進んでいないようだった。
食材へのこだわりの増加
外食が減り、食費については減ったという意見があったものの、半数ぐらいの方は食費がむしろ増えたと感じていた。理由としては、コロナ禍により高まった健康意識と娯楽の欠如だ。高まった健康意識の結果、今まで以上に食材の品質にこだわったり、ナッツ類やサプリメントなど健康食品を摂っていたりするケースがあった。
また、外出が減り日常における娯楽の機会が減った結果、食材のランクを一段上げるなどして、食事を1日の楽しみとしているケースも見られた。外食や娯楽にかかる支出が減ったことで、家での自炊によりお金をかけるという流れは今後も続く可能性がある。